高音になると、「え」の母音だけ声がつぶれることがあります。 「ねえ」「せかい」「めぐる」のような言葉で、声が横に広がって薄くなる。 同じ高さでも「あ」や「お」なら出るのに、「え」になると喉が詰まる人もいます。
これは、エ段の発音を話し言葉のまま高音に持ち込んでいることが原因かもしれません。 エ段は口が横に広がりやすく、舌や顎も固まりやすい母音です。 この記事では、エ段の高音がつぶれる理由と、歌の中で「え」を楽に扱うための直し方を整理します。
エ段は高音で平たくなりやすい
エ段の母音は、口を横に開いて発音しやすい音です。 普段の会話では自然でも、歌の高音ではその横広がりが負担になることがあります。 口が横に広がると、声の響きが薄くなり、喉や顎にも力が入りやすくなります。
たとえば高音で「ねえ」と伸ばす時、口角を強く横に引くと声が平たくなります。 明るく出そうとしているのに、実際には喉が狭くなり、音が前に飛びにくくなることがあります。 この状態が「エ段の高音がつぶれる」感覚につながります。
エ段が苦しい時は、音程だけを疑わないでください。 同じ高さを「お」や「う」で出すと楽になるなら、音域より母音の形が問題です。 まずは「え」の口の形を少し変えてよいと考えることが大切です。
口を横に引くほど喉が締まりやすい
エ段の高音でよく起きるのが、口を横に引きすぎることです。 笑顔のように横へ広げると、声は明るくなったように感じます。 しかし高音では、横に広げすぎると顎や舌の奥が固まり、喉が締まりやすくなります。
鏡を見ながら高い「え」を出すと、口角が左右へ伸びている人がいます。 その時に首の筋が出る、顎の下が硬い、声が鋭くなるなら、横引きが強すぎるかもしれません。 高音の「え」は、少し縦の空間を残した方が安定しやすいです。
直す時は、口を大きく開けるというより、奥歯の間に少し余裕を作ります。 「え」を横へ広げるのではなく、軽く縦に保ったまま出します。 聞こえ方は自然な「え」のままでも、歌っている本人の感覚は少し丸くなることがあります。
「え」をはっきり言おうとするとつぶれやすい
歌詞を聞かせたい人ほど、エ段をはっきり発音しようとします。 しかし高音では、はっきり言う意識が強すぎると、母音が硬くなります。 特に「せ」「て」「れ」などは、子音と母音の入り口で力が入りやすいです。
たとえば「せかい」の「せ」を高音で強く出すと、舌が前で固まり、母音の「え」が狭くなります。 「て」を強く当てると、最初の子音で息が止まり、その後の「え」がつぶれやすくなります。 言葉を明瞭にすることと、強く発音することは同じではありません。
高音では、子音を短く置いて、母音を押しすぎないことが大切です。 歌詞をはっきりさせたい時ほど、喉で言葉を作らず、口先で軽く処理する感覚を持ちます。 発音を頑張るほど苦しくなる人は、言葉の力を少し抜いてみてください。
高音では母音を少し丸めてもよい
海外のボイストレーニングでは、高音で母音を少し変える考え方がよく扱われます。 これは、歌詞をごまかすためではありません。 高い音では、話し言葉の母音をそのまま保つと、喉や響きに無理が出ることがあるためです。
エ段の場合、平たい「え」をそのまま高音へ持っていくより、少し「お」や「あ」に近い丸さを混ぜると楽になることがあります。 実際には大きく別の母音に変える必要はありません。 本人の感覚で少し丸めるだけでも、聞き手には自然な「え」に聞こえる場合があります。
練習では、「えー」をいきなり高音で伸ばさず、「お」から「え」へ近づけてみてください。 または「え」と「あ」の間くらいの感覚で出し、喉が締まらない位置を探します。 録音して、発音が崩れていないかも確認しましょう。
舌の奥が上がると声が詰まる
エ段で声がつぶれる時、舌の奥が硬くなっていることがあります。 口の前側だけで「え」を作ろうとすると、舌が前に集まり、奥が持ち上がりやすくなります。 すると喉の空間が狭くなり、高音が詰まります。
顎の下を触りながら「えー」と出してみてください。 高音で顎の下が硬くなるなら、舌に力が入っている可能性があります。 舌が固まると、声を前に出しているつもりでも、喉の奥で止まりやすくなります。
舌を下げようと強く意識する必要はありません。 むしろ、舌で母音を押し出さないことが大切です。 「え」を作る時は、舌先を軽く保ち、奥歯を少し離して、喉の奥を固めないようにします。
曲の中ではエ段だけ抜き出して確認する
エ段の高音が苦手な曲では、まず問題の言葉だけを抜き出します。 一曲通して練習していると、どの母音で崩れているのか分かりにくくなります。 「ねえ」「せかい」「めぐる」など、高音でつぶれる言葉だけを短く取り出しましょう。
次に、その言葉を母音だけにします。 「せかい」なら「えあい」、「ねえ」なら「えー」のように確認します。 母音だけで苦しいなら、エ段の形を少し丸める練習が必要です。
母音で楽になったら、子音を戻します。 子音を戻した瞬間に詰まるなら、子音を強く当てすぎている可能性があります。 この順番で分けると、母音が原因なのか、子音との組み合わせが原因なのかが見えます。
まとめ
エ段の高音がつぶれるのは、音域だけの問題ではありません。 「え」を横に広げすぎる、はっきり言おうとして力む、舌の奥が固まることで、声が平たく詰まりやすくなります。 高音では、話し言葉の「え」をそのまま保つより、少し縦の余裕や丸さを足す方が楽になることがあります。
まずは、口を横に引きすぎていないか確認してください。 次に、「え」を少し丸めて、喉が締まらない形を探します。 録音で自然に聞こえていれば、本人の感覚が少し変わっていても問題ありません。


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