Fukaseの歌い方・発声|ラップで作り直した「セカオワの声」

Fukaseの歌い方と発声を分析する記事のアイキャッチ Fukase

Fukaseさんの歌声は、息が混じる柔らかさと、少し高い位置から語りかけるような音色が特徴です。
ただし、その声は本人にとって何も考えずに出る「素の声」ではありません。

それがはっきりしたのは、2025年にソロでラップを始めた時でした。
本人は、SEKAI NO OWARIの歌い方のままではラップにならず、発声も声を当てる場所も変える必要があったと振り返っています。

裏返せば、捨てなければ次の表現へ進めないほど、セカオワの声には完成された型があったということです。
Fukaseさんの発声を理解する近道は、高音を地声かミックスボイスかで分類することより、この「作品に合わせて声を作る」感覚をたどることにあります。

ラップを始めて初めて、「セカオワの声」が一つの型だと分かった

ソロ曲「Bad Entertainment」を作り始めたFukaseさんは、最初にラップの書き方ではなく、声そのものにつまずきました。
フローを先に決めて声を合わせるのか、声を作ってからフローを考えるのかも分からず、何度も挫折したといいます。

本人が自己分析したSEKAI NO OWARIでの歌い方は、息が多く、ウィスパーに近い声でした。
音の輪郭を強く打ち出すより、言葉と息が同時に流れていく歌い方です。

ラップでは、その長所がそのまま弱点になりました。
語尾まで滑らかにつながる声は、細かな言葉をリズムへ鋭く置く場面では、輪郭がぼやけることがあります。

そこで発声の仕方と声を当てる位置を変え、セカオワで15年かけて定着した歌声から離れました。
この経験は、Fukaseさんの柔らかな声が単なる生まれつきの薄い声ではなく、ポップスを届けるために選び続けた声だったことを示しています。

ソロ活動で従来とは違う声作りに挑んだFukase

低い話し声から、一段高い「歌う人格」へ移っている

普段の話し声について、Fukaseさん自身は低いと語っています。
一方、歌や演技では声を一段高くし、言葉の角を丸めるように調整してきました。

本人は冗談めかして、歌う時は「猫をかぶっている」と表現したことがあります。
言葉は軽く聞こえますが、歌声の成り立ちを考えるうえでは重要な告白です。

会話の低い声をそのまま音程だけ上げているのではありません。
声の高さだけでなく、息の混ぜ方、言葉の丸さ、聴き手との距離まで変え、SEKAI NO OWARIの世界に合う話者を作っています。

だからFukaseさんの歌は、強く訴える内容でも耳元で物語を聞くように届きます。
声を前へ投げつけるより、聴き手を物語の内側へ招く役割を優先しているのです。

一つの声から「Normal」と「Soft」が作られたのは偶然ではない

Fukaseさんの声をもとにしたVOCALOID4の音源には、日本語の「Normal」と「Soft」、さらに英語の音源が用意されました。
製品では、力と明瞭さを持つ声として紹介される一方、Softはささやきに近い声として収録されています。

この二面性は、Fukaseさんの声を「息っぽくて弱い」と片づけられない理由をよく表しています。
柔らかさの奥に言葉の芯があるため、小さく聞こえても歌詞が消えません。

息漏れ声と芯のある声の違いで整理しているように、息が混じることと、声が支えを失うことは別です。
Fukaseさんの歌声を説明する時に大切なのは、息の量だけでなく、その中にどれだけ言葉の輪郭を残しているかです。

発声を扱う複数の解説では、軽いミックスボイス、鼻腔寄りの響き、地声と裏声の滑らかな移行など、異なる言葉が使われています。
説明が割れるのは、曲や音域によって声の密度が変わるうえ、「ミックスボイス」という言葉自体の範囲が統一されていないからです。

すべての高音を一つの発声名へ押し込むより、息の多い声でも芯が残ること、低い話し声とは別の高さへ声を置くこと、この二点を押さえた方が素人にも実像が伝わります。
ミックスボイスの出し方と見分け方を考える際も、声質だけで地声か裏声かを決めないことが重要です。

「RPG」の案内役と「Habit」の語り手では、声の仕事が違う

Fukaseさんは、同じ歌声をどの曲にも当てはめているわけではありません。
代表曲ごとに声が担う役割を見ると、技術の名前より歌い方の設計が分かります。

「RPG」では、大勢が同じ景色を見られるように、言葉を丸く開きながら物語を進める役割が前へ出ます。
一人の内面を告白する声というより、聴き手を冒険へ連れていく案内役です。

「蜜の月」のような曲では、広いステージを動かす声より、近い距離で言葉を残す歌い方が似合います。
2019年に本人がボーカリストとして自分を見つめ直したと語った時期とも重なり、柔らかい声の中で表情を変える方向が意識されました。

「Habit」では、歌と会話の境目を行き来するような言葉の置き方が作品の中心になります。
一音を美しく伸ばすことより、短い言葉の連続で人物像を作る声です。

そして「Bad Entertainment」では、従来の息の多い歌い方を一度外し、ラップに合う輪郭を探しました。
この並びから見えるのは、Fukaseさんの本当の武器が一種類の美声ではなく、曲の語り手に合わせて声の人格を変えられることです。

ポップスとは異なる表現のために声の位置を探したFukase
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宅録で採用したのは、整った声より二度と出ない瞬間だった

Fukaseさんは、ソロ作品の多くを自宅で録音しました。
スタジオの方が音響上は整っていても、自宅では肩の力が抜け、その瞬間の気分を声へ残しやすかったからです。

SEKAI NO OWARIでは、宅録の声をそのまま使うことはほとんどありませんでした。
例外として挙げたのが「tears」です。

ツアーで体を酷使していた時にしか出なかった声を自宅で録り、日常へ戻ると再現できなくなったため、その一度の声を作品に残しました。
いつでも同じ音色を出せることだけを正解にせず、曲に必要なら偶然の声も選ぶ判断です。

ここには、Fukaseさんの歌い方を真似する時の大きなヒントがあります。
ウィスパーの量や鼻にかかった音だけをコピーするより、その曲では誰が誰に話しているのかを先に決める方が、本質へ近づきます。

鼻腔共鳴と鼻声の違いも同様で、響きを鼻へ押し込む操作だけでは表現になりません。
声の位置は、言葉の距離と人物像を作るための手段です。

参考にしたいのは、柔らかい声より「声を手放せること」

Fukaseさんらしい歌声を表面だけ真似すると、息を流しすぎて音程が不安定になったり、鼻声になって言葉がこもったりしやすくなります。
本人の声質や長年の録音経験を、短い手順で再現することはできません。

むしろ参考になるのは、15年使った歌声でも、新しい表現に合わなければ作り直した姿勢です。
自分の得意な声へ曲を寄せるのではなく、曲の話者に必要な声を探しています。

SEKAI NO OWARIの歌声がどの時期に形づくられ、どこで役割を変えたのかは、Fukaseさんの歌唱変遷で年代順に整理しています。
現在の発声と歴史を分けて読むと、ソロの声が突然の別人ではなく、長く続けたポップスを外側から見直す試みだと分かります。

まとめ

Fukaseさんの歌い方は、低い話し声をそのまま高くしたものではありません。
息を混ぜ、言葉を丸くし、少し高い位置へ声を置くことで、SEKAI NO OWARIの物語を語る声を作っています。

その型は、ソロでラップを始めた時には使えませんでした。
発声も声を当てる場所も変え、何度も挫折したという本人の経験が、セカオワの声がどれほど意識的に育てられたものかを逆に証明しています。

VOCALOIDの音源が力のあるNormalと、ささやきに近いSoftへ分かれたように、柔らかさと芯は同じ声の中に共存します。
Fukaseさんの魅力は、息っぽい高音だけではなく、曲が変われば完成した声さえ手放せることです。

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