SUZUKAさんの歌声は、最初から低音だけを押し出していたわけではありません。
初期には、ジャズ、ロック、昭和歌謡が次々と切り替わるバンド曲の中で、細かな展開を歌い切ることが大きな仕事でした。
「オトナブルー」で強い低音が一人の人物として立ち上がり、「NAINAINAI」では音の隙間とグルーヴを覚えました。
その後は椎名林檎さんが書いたバンド曲で別の顔を与えられ、2026年の声優挑戦では子どもの頃の高い声まで掘り起こしています。
歌声が単純に低くなったのではありません。
一つだった強さが、曲と役に合わせて選べる複数の声へ変わったことが、SUZUKAさんの歌唱変遷です。
2015年から2017年は、複雑なバンド曲に声を食らいつかせた
新しい学校のリーダーズは2015年に結成され、2017年に「毒花」でメジャーデビューしました。
当時の楽曲は、H ZETT Mさんによるピアノとバンドの演奏が中心です。
ジャズ、ロック、昭和歌謡の要素が一曲の中で目まぐるしく動き、歌にも細かなリズムと急な表情の変化が求められました。
SUZUKAさんはメインボーカルとして、演奏の情報量に負けない力強い声を前へ置いています。

この時期の意味は、昭和歌謡風の声を完成させたことだけではありません。
曲が次々と形を変えても、歌の人物とリズムを見失わない基礎を、難しいバンド曲の中で身につけました。
後年、海外向けの簡潔なビートへ移った時にも、声が単調にならなかったのは、初期に多くの要素を同時に扱った経験があったからです。
2020年の「オトナブルー」で、低い声が一人の主人公になった
2020年に発表された「オトナブルー」は、SUZUKAさんの声の見え方を変えました。
制作では昭和歌謡らしさを残しながら、ディスコと打ち込みの音へ移す試みが行われています。
録音時、SUZUKAさんは和田アキ子さんの写真を譜面台に置き、大人の女性が持つ堂々とした存在感を想像しました。
AメロとBメロの主旋律をSUZUKAさんが担い、ほかの三人が柔らかなコーラスで内側の気持ちを支えています。
初期の声は、複雑な演奏を突破する力として働いていました。
この曲では、低く強い声そのものが主人公の表向きの顔になっています。
声質が目立つだけでなく、四人の声の違いを一人の人物の内面へ割り振ったことが転機でした。
後に世界で知られるSUZUKA像は、この配役から輪郭を得ています。
2021年の「NAINAINAI」で、歌声に余白が生まれた
88risingから世界デビューした「NAINAINAI」は、それまでの情報量が多いバンド曲とは性格が異なります。
ヒップホップとブレイクビーツを軸にし、音を詰め込むより、ビートの隙間を生かす曲です。

初期には、演奏が変わるたびに声も反応し続ける必要がありました。
新しい制作環境では、音を置かない時間も歌の一部になり、言葉の後ろへ身体の動きが見えるような余白が増えます。
これは、強い声を弱くした変化ではありません。
いつ声を前へ出し、いつビートへ預けるかという選択が加わったことで、SUZUKAさんの低音は世界向けの簡潔なサウンドでも機能するようになりました。
2023年は「声変わり」とブレイクが同時に表面化した
結成から約8年を振り返った時、メンバーはSUZUKAさんの歌声が大きく変わったと話し、本人も「声変わりした」と認めています。
同じ期間に身長も大きく伸び、十代から二十代へ進む身体と活動の変化が重なりました。
この発言は、声の変化を特定の発声法へ結びつけたものではありません。
年齢、曲調、経験、役割が同時に動いた結果として、初期より現在の声が低く強く感じられるようになったと捉える方が自然です。
同じ年、「オトナブルー」が短い首振りダンスとともに大きく広がりました。
2020年に作られた曲が三年後に届いたため、世間が最初に出会ったSUZUKA像と、グループが積み重ねた時間にはずれがあります。
一発撮りの歌唱では、流行した動きの面白さだけではなく、四人の声の配役が前へ出ます。
ブレイクによって突然歌えるようになったのではなく、長く作ってきた低音の人物像が、ようやく多くの人に見つかりました。
低い女性声を年代で比較する場合は、中森明菜さんの歌唱変遷も参考になります。
2024年の「ドラ1独走」で、バンドボーカルの顔が戻った
2024年、椎名林檎さんとの「ドラ1独走」では、SUZUKAさんをバンドのボーカリストとして立たせる曲が用意されました。
新しい学校のリーダーズの中心にいながら、椎名林檎さんの世界へ招かれたことで、声に別の配役が与えられています。
「オトナブルー」の大人びた人物を繰り返すのではなく、切迫した言葉とバンドの勢いを背負う歌へ移りました。
初期にH ZETT Mさんの複雑な演奏へ食らいついた経験が、海外向けのビートを経て、別の形で戻ってきた作品です。
人気が出た声を固定せず、作り手が変わるたびに別の人物へ入れることが、SUZUKAさんの強みになりました。
2026年の声優挑戦で、低音の反対側を探し直した
2026年のアニメ映画では、性格の異なる二つの役を演じました。
低い声の役は現在のSUZUKA像とつながりましたが、純粋で高い声の役は、最初なかなか見つからなかったといいます。
監督から示されたのは、今の低い声だけを基準にせず、子どもの頃まで戻って高い声を探す考え方でした。
SUZUKAさんは、成長の中で前へ出なくなっていた別の声を、自分の中から見つけています。
この経験を経た「Sailor, Sail On」では、強い自分と弱い自分が共存する現在の表現が作品の中心になりました。
低音の歌手が高音を習得したという単純な話ではなく、強い声に隠れていた過去の自分まで、表現の材料へ戻した転機です。
現在の声の使い分けを仕組みから知りたい場合は、SUZUKAさんの歌い方・発声で詳しく整理しています。
変わらないのは、声を身体と人物から切り離さないこと
初期から現在まで、SUZUKAさんの歌はダンスや表情と離れていません。
声だけをきれいに仕上げるのではなく、身体全体で人物を大きく見せる姿勢が続いています。
本人は、舞台上で強い自分と弱い自分が話しているように感じると表現しました。
「番犬」のように一撃を担う自分も、純粋な高い声を探した自分も、どちらかが本物で、どちらかが演技なのではありません。
時代ごとに声を取り替えたのではなく、自分の中にいる人物を一人ずつ増やしてきました。
そのため、歌声が変わっても、SUZUKAさんが歌っているという輪郭は失われません。
弱さまで声の色に変えてきた別の歩みは、アイナ・ジ・エンドさんの歌唱変遷でもたどれます。
まとめ
SUZUKAさんの歌声は、2017年の「毒花」では複雑なバンド曲を突破する力として使われました。
2020年の「オトナブルー」では低音が一人の主人公になり、2021年の「NAINAINAI」ではビートの余白を覚えています。
2023年には本人が声変わりを認める一方、過去曲が大きく広がり、現在の声と長い蓄積が同時に見つかりました。
2024年は「ドラ1独走」でバンドボーカルの顔を取り戻し、2026年には声優挑戦を通して子どもの頃の高い声まで表現へ加えています。
低音へ一直線に進んだのではありません。
強い声、余白を作る声、バンドを背負う声、純粋な高い声を、曲と役に合わせて呼び出せるようになった。
SUZUKAさんの歌唱変遷は、声を一つに磨いた歴史ではなく、自分の中にいる歌い手を増やした歴史です。
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