竹中雄大の歌声はどう変わった?路上ライブ時代から現在までの歌唱の変遷

竹中雄大 シンガー

竹中雄大さんの歌声は、活動を重ねるほど単純に高くなったわけではありません。
高校時代にはすでにONE OK ROCKを原曲に近いキーで歌い、現在に通じる高音も出せていました。

それでも本人は、数年前まで録音された自分の声を好きになれなかったと振り返っています。
もともと高さはあったのに、その声をどう聞かせ、どう毎回再現し、どう曲に合わせて変えるかは、まだ育っている途中だったのです。

大きな転機になったのは、路上ライブ、メジャーデビュー前後のボイストレーニング、そしてジャンルの幅を広げた近年の作品です。
竹中さんの変化を追うと、歌唱力とは最高音を更新することではなく、持っている声を自分のものにしていくことだと分かります。

高校時代から高さはあったが、録音された声には納得できなかった

竹中さんは音楽好きの家族に囲まれ、中学生のころにはゆずに憧れてギターを持ち、路上でカバーを歌っていました。
高校ではONE OK ROCKのコピーバンドを組み、高いキーにも大きな苦労はなかったそうです。

この時点で、後に注目される広い音域の土台はできていました。
現在の高音を「プロになってから出せるようになった声」と考えると、竹中さんの歩みを見誤ります。

一方で、歌っている最中に感じる自分の声と、録音で外から聞く声には隔たりがありました。
後年になって本人が変化として挙げたのは、声の高さではなく、技術、声の色気、言葉のノリでした。

2013年にNovelbrightを結成し、2017年に現在へつながるメンバーが加わった後も、その広い音域をバンドの歌として磨く時間が続きます。
2018年の「Walking with you」には、後の飛躍を支える高音の強さと、聴き手へまっすぐ届くメロディーの両方が表れています。

2019年の路上ライブで、一度出せる高音が毎日届けられる歌へ変わった

Novelbrightが広く知られるきっかけになったのは、2019年の路上ライブでした。
SNSで拡散された一本の動画は、竹中さんの声を遠くの人まで運びましたが、その裏側には華やかな一発とは反対の反復があります。

路上ライブ期には、1日に20曲から30曲ほど歌うこともありました。
整った会場ではない場所で、足を止めるか分からない人へ何曲も届ける日々は、最高音よりも持久力と再現性を鍛えます。

一度だけ出せる高音と、ツアーやライブで毎回届けられる高音は同じではありません。
声が出にくい日も含めて人前に立ち、最初の一曲から聴き手をつかむ経験が、竹中さんの歌を「能力」から「仕事で使える表現」へ変えていきました。

この時期に育ったのは喉の強さだけではありません。
知らない人が振り向く声の出し方、短い時間で曲の感情を伝える集中力、歌い続けても崩れにくい配分まで含めた実戦感覚です。

2020年のメジャーデビュー前後に、声の立ち上げ方と色を整理した

路上で鍛えたあと、竹中さんは1年に満たない期間ながらボイストレーニングを受けています。
そこで得たものとして、短いウォームアップで声を整える方法、声を遠くへ飛ばす感覚、響きや声色の使い分けを挙げています。

これは、別人の声を作るための訓練ではありません。
日によってばらつく声を早く立ち上げ、すでに持っている高音を必要な形で出すための整理です。

2020年のメジャーデビュー曲「Sunny drop」は、路上ライブで知られた声を、明るく開けたバンドサウンドの中心へ置いた作品でした。
活動の場所が路上から大きなステージへ移っても、聴き手へ一直線に届く歌は残っています。

2022年には、高さよりも地声とファルセットの切り替えが歌を支えた

アルバム『Assort』の時期になると、竹中さん自身の曲解説からも、歌声の扱いが細かくなったことが分かります。
「ファンファーレ」では地声とファルセットの切り替えが多く、「The Warrior」は当時の自分にとって最も高く難しい曲だったと説明しています。

注目したいのは、難しい高音曲だけではありません。
「愛とか恋とか」は軽やかに聞こえる一方、息を吸える場所が少なく、歌う側には緻密な配分が求められる曲です。

高音を目立たせる歌から、難しさを聴き手に感じさせない歌へ進んだことが、この時期の面白さです。
力強さと柔らかさを曲ごとに選び、裏声へ移っても物語が途切れない歌い方が増えました。

現在の高音を、地声、裏声、息の配分という視点から知りたい方は、竹中雄大の歌い方・発声分析で詳しく解説しています。

2023年から2024年は、ハイトーン歌手という枠からはみ出した

結成10周年の横浜アリーナ公演を経て、Novelbrightは過去をまとめるだけでなく、次に何を歌えるかを広げる段階へ入りました。
2024年のアルバム『CIRCUS』では、ロックやバラードの外側にある音色やリズムにも踏み込みます。

竹中さんは以前から、女性歌手のように一人で多彩なジャンルを歌える存在を目標として語っていました。
高い男性ボーカルとして一つの型を完成させるより、曲に合わせて声の表情を変えられる歌手を目指していたのです。

「Sensation」は、その広がりを分かりやすく示す一曲です。
さらに「Empire」ではラップに近い表現にも挑み、高音を主役にしない場面でも声の個性を残す方向へ進みました。

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2025年以降は、驚かせる高音より曲の物語を背負う声へ

アリーナでの活動を重ねた現在は、竹中さんの歌を「何オクターブ出るか」だけで語るには狭すぎます。
Novelbrightの楽曲自体が広がり、声には派手なサビを突き抜ける役割だけでなく、曲の人物や風景を背負う役割が増えました。

2026年の「Caravan」でも、広い音域は見せ場として孤立していません。
バンドが進む物語の中で、強く押す声と軽くほどく声を使い分けるために生かされています。

ここまでの変化は、高音を捨てたという意味ではありません。
高校時代からあった高さ、路上で鍛えた再現力、トレーニングで整理した響き、作品ごとに増やした声色が、ようやく同じ歌の中で働くようになったのです。

変わったのは声の高さではなく、自分の声との距離だった

竹中雄大さんの歌唱の変遷は、「昔は高音が出なかったが、努力して出るようになった」という物語ではありません。
高さは早くからあり、むしろ時間がかかったのは、その声を録音で聞き、受け入れ、毎日再現し、曲ごとに違う姿へ変えることでした。

高校時代には高い曲を歌えました。
バンド活動の初期には自分の録音に違和感があり、路上ライブでは声を繰り返し届ける力を得て、メジャーデビュー後は響きや息の使い方を整理しました。

近年は、強烈なハイトーンだけに頼らず、軽いラブソング、ラップに近い表現、物語を運ぶ声まで扱っています。
変わらず残っているのは、高い音へためらわず向かう明るさと、目の前の人へ直接届けようとする歌です。

竹中さんの歩みが教えてくれるのは、才能を持っていることと、その才能を好きになり、使いこなせることは別だということです。
歌声の進化は、できない音を増やすだけでなく、すでにある声との距離を縮めることでもあります。

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