八神純子の高音はなぜ年齢を重ねてもクリア?歌い方・発声を分析

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八神純子さんの高音が今もクリアに聞こえる理由を、昔から変わらない声質だけで説明することはできません。
若い頃の八神さんは、どこまでも滑らかに伸びる自分の声を、むしろ表情が少ないと感じていました。

憧れたのは、桑田佳祐さんのように一声で色が分かる歌声です。
それから長い年月をかけ、英語で歌い、海外で暮らし、ロックからオーケストラまで経験したことで、透明な声を守るだけでなく、曲に合わせて声の色を選べる歌手へ変わりました。

八神さんの現在の強さは、昔と同じ高音が出ることではありません。
澄んだ声、強い声、柔らかな声を一つの喉で使い分け、必要な瞬間だけ高音を前へ出せることにあります。

「クリスタルボイス」は本人にとって完成形ではなかった

八神さんの声は、デビュー当時から透明で、音の輪郭が崩れにくいことで知られてきました。
高い音へ上がっても急に細くならず、長いフレーズを一息で運ぶ印象が「クリスタルボイス」という言葉に結びつきます。

ところが本人は、若い頃の声を手放しで長所とは考えていませんでした。
滑らかすぎて、どこにも引っ掛からず、そのまま伸びていくだけに感じていたからです。

普通なら、濁りのない高音は完成された武器に見えます。
八神さんはそこへ満足せず、もっと色があり、聴いた瞬間に人間の体温が伝わる声を求めました。

この不満があったからこそ、現在の歌声は単なる保存になりませんでした。
若い声を守ろうとするのではなく、若い頃にはなかったざらつき、強弱、語りかける温度を加えられる余地が生まれたのです。

桑田佳祐の声への憧れが「きれいに歌う」以外の道を開いた

ステージで歌う八神純子

八神さんがうらやましいと感じたのは、桑田佳祐さんの声でした。
一声で誰か分かり、整いすぎていない部分まで個性になる歌声です。

ここが八神さんの発声を考えるうえで面白い点です。
本人は透明さを捨てたかったわけではなく、透明さしか選べない状態から抜けたかったのでしょう。

現在は、張りのあるポップス、感情を前へ出すロック、音量を抑えた語り、オーケストラを背負う大きなフレーズまで扱います。
本人も、昔より多くの声を使えるようになり、強く叫ぶ表現もできるようになったと振り返っています。

きれいな声に粗さを足すことは、喉をわざと傷めることではありません。
一音の中で息をどれだけ残すか、言葉の頭をどれだけ立てるか、語尾を伸ばすか止めるかという選択が、声の色になります。

桑田佳祐さんの歌い方と比べると、二人が同じ声を目指していないことも分かります。
桑田さんは言葉の形そのものを崩して個性へ変え、八神さんは明瞭な旋律を保ったまま、声色の選択肢を増やしました。

「みずいろの雨」は最高音より止まれない旋律が難しい

「みずいろの雨」を歌う時、多くの人はサビの高音だけを難所だと考えます。
実際には、高い音へ着くまでに息と声を使い切りやすい曲です。

旋律は大きく跳び、短い言葉が次々に現れます。
一つの音を力でつかむと、その次の音へ移る余裕がなくなり、サビ全体が重くなります。

歌唱解説でも、息継ぎの位置、言葉ごとのアクセント、声を前へ押し続けないことが重要だと説明されています。
高さだけを測れば届く人でも、同じ声量のまま駆け抜けようとすると苦しくなるのです。

八神さんの高音を支えているのは、音を大きくする力だけではありません。
長く保つ音と、すぐ次へ渡す音を分け、旋律の流れを止めない判断です。

ロングトーンが続かない時の考え方と合わせると、息を大量に使うことと、必要な量を長く配ることの違いが見えやすくなります。

英語の「あ」が喉の奥に別の通り道を作った

八神さんは1980年代に英語作品を制作し、その後ロサンゼルスへ生活の拠点を移しました。
本人は、日本語と英語では同じ「あ」でも口や喉の奥の使い方が違うと語っています。

これは英語で歌えば高音が出る、という意味ではありません。
同じ母音だと思っていた音にも複数の形があると知り、声を一つの置き場所へ固定しなくなったことが重要です。

日本語だけで歌っていると、高音でも普段の「あ」を大きく開けばよいと考えがちです。
しかし口を縦横に広げるだけでは、低い音の形を保ったまま音量を上げることがあります。

八神さんは別の言語で歌う経験から、言葉を保ちながら喉の奥の空間や息の方向を変える選択肢を増やしました。
その積み重ねが、クリアな声を細くせず、曲に応じて明るさや厚みを変える土台になったと考えられます。

高音で喉を開くとは何かを読む時も、口を大きく開ける動作ではなく、母音に合わせて声の通り道を調整する感覚として捉えると理解しやすくなります。

3オクターブより重要なのは曲ごとに声を選べること

現在の声について語る八神純子

八神さんには、長い活動歴を経ても原曲のキーで歌い、広い音域を保っているという評価があります。
数字だけを見れば、驚異的な音域や衰えない最高音が話題になります。

けれども本人の言葉をたどると、より大きな変化は「出る音の数」ではありません。
曲によって声を選び、必要なら強くし、別の曲では柔らかく引けるようになったことです。

高音を毎回同じ強さで出す歌手は、調子のよい一曲では迫力が出ても、長い公演で表情が単調になります。
八神さんは、代表曲の鋭い高音と、オーケストラで長く広がる声を同じ出力で扱いません。

声域は地図の広さです。
表現力は、その地図のどこを通り、どこで速度を落とすかを選べることです。
現在の八神さんは、地図を保っただけでなく、使える道を増やしてきました。

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高音を「地声かミックスか」だけでは説明できない

八神さんの高音について、地声、ミックスボイス、ヘッドボイスのどれか一つへ決めるのは適切ではありません。
外から声帯の状態を断定できず、曲、音高、音量、母音によって声の使い方が変わるためです。

聴き手が地声らしい強さを感じる場面はあります。
同時に、低音と同じ重さをそのまま上へ押し上げていると考えると、滑らかな跳躍や長いフレーズを説明できません。

複数の歌唱解説に共通するのは、強く聞こえる高音でも息を無駄に流さず、母音の形を固めず、次の音へ移れる状態が必要だという見方です。
声の名前を当てるより、高音の前後で音量と言葉が自由に戻るかを見る方が実用的です。

八神さん自身が、昔より声を扱いやすくなったと感じている点も、この理解と重なります。
高い音を力で勝ち取るのではなく、曲に合わせて最適な声を選ぶほど、結果として高音の透明さが残ります。

真似するなら透明さより「一つの声に閉じない姿勢」を見る

八神さんに近づこうとして、最初から細く澄んだ高音を作る必要はありません。
生まれ持った声質や長年の経験に関わる部分を表面だけ再現すると、息の多い弱い声になることがあります。

参考にしやすいのは、同じ曲の中でも声を一種類に固定しない考え方です。
言葉をはっきり届ける場面、音を長く広げる場面、強く切る場面を分けて聴くと、八神さんの歌が単なる高音勝負ではないと分かります。

もう一つは、きれいに歌えることを終点にしない姿勢です。
本人は若い頃の長所に不足を感じ、別の言語、別の国、別の編成へ進んだことで、もとの透明さをより自由に使えるようになりました。

八神純子さんの歌声の変遷では、デビュー期から渡米、復帰、オーケストラ公演まで、使える声が増えた流れを年代順にたどります。

まとめ

八神純子さんの高音が年齢を重ねてもクリアに聞こえるのは、若い頃の声質をそのまま保存したからではありません。
透明な声に満足せず、もっと色のある声を求め続けたことで、曲ごとに声を選べるようになりました。

「みずいろの雨」の難しさも、最高音だけではなく、旋律を止めずに息と声を配るところにあります。
英語で歌う経験は母音の選択肢を広げ、ロックからオーケストラまでの活動は、一つの声へ閉じない表現を育てました。

八神さんのすごさは、広い音域を持つこと以上に、その音域を同じ色で塗らないことです。
澄んだ高音の奥には、きれいな声を完成形にしなかった長い試行錯誤があります。

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