あいみょんの歌声はどう変わった?生きていたんだよなからマリーゴールド・裸の心・現在まで

歌声の変化をたどるあいみょん あいみょん

あいみょんさんの歌声は、デビューから10年で別人のような声質へ変わったわけではありません。
低めの地声と、話すような距離感は初期から現在まで残っています。

大きく変わったのは、自分の感情をそのまま投げる歌から、曲の中の人物を「声で演じる」歌へ広がったことです。
さらに、裏声と地声を行き来する技術、静かな声で感情を残す方法、録音で声の質感を選ぶ力が加わりました。

2025年の「いちについて」では、デビュー曲と同じく生きることを扱いながら、30歳になった現在の視点から歌っています。
初期へ戻ったようで、同じ場所には戻っていないことが分かる一曲です。

2015~2016年、言葉が先に走る歌手として始まった

インディーズ期の「あいみょん」は、整ったラブソングより、強い言葉で聴き手を振り向かせる存在でした。
2015年の「貴方解剖純愛歌~死ね~」には、現在の親しみやすい代表曲だけでは想像しにくい攻撃性があります。

メジャーデビュー曲「生きていたんだよな」でも、最初に耳へ飛び込むのは美しい高音ではなく、話すように置かれた言葉です。
ニュースで見た出来事を題材にし、歌と語りの境をあえて曖昧にしました。

この時期の声は、物語を上手に演じ分けるというより、書かずにいられなかった言葉が本人の体を通って出てくる印象に近いでしょう。
迫力の源は声量だけではなく、言葉と声の距離がほとんどないことでした。

2016年のメジャーデビュー前後のあいみょん

2017~2018年、「君はロックを聴かない」と「マリーゴールド」が余白を作った

初期の強い言葉だけを続けていれば、あいみょんさんは刺激的な歌詞を書く新人として記憶されたかもしれません。
流れを変えたのが、2017年の「君はロックを聴かない」です。

本人がシンガーソングライターとして続けていけると感じた曲であり、ライブでは観客との合唱が育ちました。
自分の内側から言葉を投げるだけでなく、聴き手が歌の中へ入れる空間が生まれます。

2018年の「マリーゴールド」では、その余白がさらに広い層へ届きました。
歌声は力を失ったのではなく、聴き手が自分の夏や恋愛を重ねられる距離まで少し後ろへ下がっています。

強い一人称から、誰かの記憶を受け止める歌へ。
ここで親しみやすさが加わりましたが、低い地声と乾いた言葉の輪郭は消えませんでした。

2019年、武道館を経て「声で演じる」ことを自覚した

2019年の弾き語り武道館公演を見直した本人は、まだ歌で人を感動させる余地があると感じます。
ただ上手に歌うのではなく、声にも役者のような表情をつけることを意識し始めました。

この気づきは、歌い方の変化を考えるうえで重要です。
初期にも曲ごとの表情はありましたが、ここからは自然に出た感情だけに任せず、自分も演者なのだと認めて声を選ぶようになります。

「空の青さを知る人よ」は、低い音域から力強く開く歌唱と、切迫感を同居させた曲です。
広がりだけで終わらず、場面に合わせて声の表情を変える意識が前へ出ています。

2020年、「裸の心」できれいな歌を一度壊した

「マリーゴールド」のような得意な曲調を続けるのではなく、初のバラードシングルとして選んだのが「裸の心」でした。
曲自体は2017年に書かれていましたが、2020年の本人が歌い直すことで新しい意味を持ちます。

最初の録音では、きれいに歌おうとするほどデモにあった荒々しさや素朴さが消えました。
そこで録り直しを行い、ハンドマイクを持ち、ひざまずきながら、一発録りに近い気持ちで歌っています。

これは技術を捨てた出来事ではありません。
整った声を作れるようになったからこそ、曲に必要なざらつきを意識して取り戻したのです。

裸の心の時期に歌の質感を選び直したあいみょん

2021~2022年、一曲の中で複数の声を使う段階へ進んだ

2021年の「ハート」では、歌入れの当日まで歌詞を書き直し、曲の人物像に合う声を探しました。
強く歌うか、優しく歌うか、低くするか、高くするかを場面ごとに考え、珍しく部分ごとに録音しています。

初期のように一つの勢いで通す歌から、一曲の中で人物の感情を組み立てる歌へ。
2019年に自覚した「声で演じる」方法が、録音の具体的な作業へ落とし込まれました。

2022年の「スーパーガール」では、表現だけでなく声区の移動も難しくなります。
Bメロのファルセットからサビの地声へ、境目を目立たせず戻る必要があり、本人が歌の技術を総動員する曲と話しています。

ここまで来ると、あいみょんさんの歌を「低い声で自然に歌うだけ」とは言えません。
自然に聞かせるために、見えない場所で声の重さを細かく移しています。

現在の発声の仕組みを詳しく知りたい方は、あいみょんの歌い方・発声分析を参考にしてください。

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2023~2024年、強く歌わない曲にも主人公の体温を残した

2023年の「愛の花」や「あのね」では、大きな声で感情を説明するより、日常の言葉へ体温を残す方向が目立ちます。
歌唱の変化は、出せる最高音や声量だけでは測れません。

2024年の『猫にジェラシー』には、新しく書いた曲だけでなく、2020年前後やさらに古い時期に生まれた曲も収録されました。
過去の自分が書いた言葉を、現在の声と制作経験でどう成立させるかが作品の面白さになっています。

初期の衝動を否定して大人の歌へ置き換えたのではありません。
昔の直接性、ヒット期の開放感、バラードで得たざらつき、声で演じる意識を、必要な曲へ選んで戻せるようになりました。

2025~2026年、原点へ戻りながら同じ言葉を違う場所から歌った

30歳で発表した「いちについて」は、10代の頃から扱ってきた生と死の問いへ再び向き合った曲です。
ただし、デビュー曲のように目の前の出来事へ反射するだけではなく、自分の生き方を振り返る時間が含まれています。

2025年の「ビーナスベルト」では、より小さな日常の情景から恋愛の高揚と不安を描きました。
大きな命題と公園の一場面を行き来できることは、歌の人物と距離を選べる現在の強さです。

2026年にはメジャーデビュー10周年を迎え、地元の阪神甲子園球場で記念公演を行いました。
同時に、2017年の「RING DING」がファン投票をきっかけに新しい映像作品となり、過去の曲が現在の活動の中へ戻ってきています。

昔の自分を封印するのではなく、現在の自分がもう一度受け取る。
この循環が、10年目のあいみょんさんらしい変化です。

変わったのは声質より、歌の中に置ける人物の数だった

初期のあいみょんさんには、自分の体温と強い言葉が直結する迫力がありました。
「君はロックを聴かない」と「マリーゴールド」で聴き手の入る余白が生まれ、2019年には自分を演者として捉えます。

「裸の心」では整いすぎた声を壊し、「ハート」では人物に合わせて録音を分け、「スーパーガール」では声区の境目まで表現へ組み込みました。
その後は、過去に書いた曲と現在の声を同じ作品へ置けるほど、歌唱の選択肢が増えています。

低い地声と話すような近さは変わっていません。
変わったのは、その声で一人の自分だけを歌うのではなく、曲ごとに異なる人物を生かせるようになったことです。

あいみょんさんの10年は、高音が伸びたという一本の線ではありません。
同じ声の中へ、近さ、遠さ、荒さ、静けさを少しずつ増やしてきた歴史です。

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