Aimerの歌声はどう変わった?「夜」の原点から「残響散歌」・現在まで

Aimerの歌声の変遷 Aimer

Aimerさんの歌唱の歴史は、か弱い声が年々パワフルになった物語ではありません。
デビュー当初から、静けさの中にも強い芯はありました。

変わってきたのは、その声を置ける世界の広さです。
夜、星、孤独と結びついた歌手像を確立すると、本人はそこへ安住せず、自分で扉を壊して昼へ出ました。

そして再び雨と光を分け、静かな歌と激しい歌を並べ、ついには「残響散歌」で多くの人が持っていたAimer像を更新します。

変遷を追うと見えてくるのは、同じ声を守った歴史ではなく、守るために何度も置き場所を変えた歴史です。

原点の「六等星の夜」から、その流れをたどります。

2011年は、「夜の中で近くにいる声」から始まった

デビュー曲「六等星の夜」には、後年のAimerさんにつながる要素がすでにあります。
息の混じる低い声、細く伸びる高音、遠くを見ているようで、聴き手のすぐ隣にいる距離感です。

15歳で声を失った経験を経て戻ってきた独特の声は、強く押し出すより、暗がりの中で輪郭を浮かばせる曲と深く結びつきました。
「Re:pray」「雪の降る街」など、初期作品には夜や静寂のイメージが重なります。

これは単に暗い曲を集めた結果ではありません。
顔や人物像を前へ出しすぎず、声と物語を先に届ける活動の仕方も含めて、「Aimer」という存在が作られていきました。

2013年の『After Dark』では、それまでの歩みをたどると同時に、ライブで歌う現在の声も作品へ入りました。
夜は閉じた世界ではなく、聴き手と会える場所へ少しずつ変わっていきます。

デビュー初期のAimer

2014年は、夜の外へ手を伸ばし始めた

「StarRingChild」の頃、Aimerさんは2014年を次のステージへ進む年として捉えていました。
硬質なロックサウンドの中でも、声のざらつきや息の余韻は消えていません。

変化したのは、声が受け止める演奏の大きさです。
静かなピアノやストリングスだけでなく、強いリズムや厚い音の中へ入っても、Aimerの声として成立することが見えてきます。

同年には澤野弘之さんとの『UnChild』も制作されました。
自分一人で世界観を閉じるのではなく、異なる作家の音へ声を預けることで、夜の歌手という枠は少しずつ広がります。

この時点では、Aimer像を壊したというより、暗がりの外側に別の景色があると確かめた段階でした。

2016年の『daydream』は、自分でAimer像を壊した

大きな転機は、4枚目のアルバム『daydream』です。
Aimerさんは、それまでに出来上がった自分の世界を一度壊すことを、この作品の目的に据えました。

Takaさん、TKさん、野田洋次郎さん、澤野弘之さんら、強い個性を持つ作家との制作が並びます。
ここで重要なのは、豪華な参加者を集めたことだけではありません。

異なる音楽へ飛び込むたびに、声の使い方を変えざるを得なかったことです。
ロックの強さ、言葉の親密さ、リズムの揺れ、空間の広がりが、一枚の中でAimerさんへ別々の要求をします。

「蝶々結び」では、ハスキーさを見せつけるより、言葉のすぐそばに息を置く歌唱が前へ出ます。
Aimerらしさを守るために同じ歌い方を続けるのではなく、違う曲へ入っても残るものを確かめました。

『daydream』以降、Aimerさんは「夜の歌手」だけでは説明できなくなります。
それは原点を捨てたからではなく、原点が別の光の中でも消えないと分かったからです。

2017~2020年は、雨と光を分けて両方を歌った

『daydream』で世界を広げた後、Aimerさんは一つの方向へ進み続けませんでした。
2019年には『Sun Dance』と『Penny Rain』という対照的な2枚を発表します。

『Sun Dance』には明るさ、躍動、外へ向かう力があります。
『Penny Rain』には雨、陰影、内側へ沈む感情があります。

どちらかが新しいAimerで、もう片方が古いAimerなのではありません。
昼へ出た経験があるから夜の深さを選び直せるようになり、夜を知っているから明るい曲にも薄い影が残ります。

「Ref:rain」や「春はゆく」では、声の輪郭をあえて遠ざける場所があります。
感情を大声で説明せず、息と間に残すことで、聴き手が自分の記憶を入れられる余白を作ります。

一方、「SPARK-AGAIN」では前へ進む力が強くなります。
デビューから約9年を経て、静かな歌とロック曲は別々の活動ではなく、一人の歌手が持つ二つの方向として並ぶようになりました。

Aimerが広げた歌声の世界

2021年の『Walpurgis』で、広げた声が一度まとまった

『Walpurgis』は、それまで広げてきたAimerさんの世界が、一つの均衡を見つけた作品でした。
静けさと強さ、夜と光、息と芯が、別々の看板ではなく同居します。

この時期の歌唱は、初期の神秘性を残しながら、ロック曲にも自然に入れる柔軟さを持っています。
何かを捨てて新しくなったのではなく、矛盾していた要素を同じアルバムの中に置けるようになりました。

普通なら、ここで完成形を守りたくなります。
しかしAimerさんは、見つけた均衡を次の作品で再び動かします。

2022年の「残響散歌」は、Aimer像を世間の側からも変えた

「残響散歌」は、Aimerさんを初めて知る人を大きく増やしました。
速いテンポ、華やかな編曲、はっきりした言葉のアタックが、従来の静かなイメージを鮮やかに裏切ります。

ただし、この曲だけを「Aimerが力強い歌手へ変身した瞬間」と見ると、2014年から続くロックへの接近や、『daydream』での実験が消えてしまいます。

突然別人になったのではありません。
長く広げてきた声の中から、最も外向きで、最も輪郭の強い側面が、大きな作品と出会って社会へ届いたのです。

それまでAimerを知っていた人には意外であり、初めて知った人には代表的な声になりました。
一曲が、過去のAimer像と新しいAimer像を同時に存在させることになったのです。

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2023年の『Open α Door』は、成功した扉を閉じなかった

「残響散歌」の成功後、似た強い曲を繰り返す道もありました。
『Open α Door』では、10周年を越えたAimerさんが、新しい声色と歌い方を探し、もう一度扉を開きます。

タイトルの「α」は、決まった一つの答えではなく、まだ名前のない可能性を示します。
「Resonantia」の硬質な勢いから、静かな曲の親密さまで、アルバムは現在のAimerを一つのヒット曲へ縮めません。

『Walpurgis』で見つけた均衡を守るのではなく、バランスを崩して新しい色を入れる。
これは2016年に自分の世界を壊した時と似ていますが、今度は多くの人が知るAimer像を背負ったうえでの挑戦でした。

2025~2026年は、整えた声より感情が動いた瞬間を残す

近年のAimerさんは、歌声を一つの楽器として音の中へ混ぜる意識を深めています。
同時に、録音を完璧に整えることより、感情が実際に動いた瞬間を残す場面も増えています。

「太陽が昇らない世界」では、ライブのような熱を持つテイクが作品の中心になりました。
ただ感情的に歌うのではなく、しゃくりを減らし、音の当て方を引き算した場所もあります。

熱を足す部分と、Aimerらしい癖をあえて抑える部分が同居します。
デビュー時には変化した声そのものが個性でしたが、現在は、その個性を使わない選択まで表現になっています。

2026年の「Live to Survive」でも、Aimerさんは一つの静かな像へ戻っていません。
長い活動で得た声色を、作品の速度や物語に合わせて組み替え続けています。

Aimerの変遷は、同じ声で別の世界へ入った歴史

Aimerさんの声には、デビュー時から現在まで消えていないものがあります。
息の余韻、かすかなざらつき、音の向こうに物語を感じさせる距離感です。

一方、その声が置かれる場所は大きく変わりました。
夜の静けさから始まり、ロックへ手を伸ばし、『daydream』で自分の世界を壊し、雨と太陽を分け、「残響散歌」で新しい入口を作りました。

だからAimerさんの変化は、声質が別物になったかどうかだけでは測れません。
同じ声を、どこまで違う音楽へ連れていけるかという挑戦の連続です。

次の作品でも、Aimerらしい声は残るでしょう。
しかし、それがどんな場所から聞こえてくるかは、まだ決まっていません。

その予測できなさこそ、長い変遷を追う面白さです。

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