古川雄大は、ミュージカル俳優として舞台に立ちながら、自分の音楽も発表してきました。
その歩みを本人の取材からたどると、舞台で求められる発声を学び、歌うための準備を重ねてきたことがわかります。
とくに「モーツァルト!」の初出演と再演については、練習にかけた時間だけでなく、自分の声に感じた具体的な変化も語っています。
2019年の「Love songs」に収録された「love song」のように、古川は自分名義の曲も歌ってきました。
一方、舞台での歌唱には、ソロ活動とは異なる難しさがありました。
その発声をどのように学び、同じ役を再び歌うときに何が変わったのかを見ていきます。
2013年の出会いから、身体を使って声の響きを学ぶ
ダンスを先に学び、ミュージカルの世界へ入った古川は、後から歌を強化していったといいます。
2020年の取材で、自分にとって大切な歌の先生を聞かれた際に挙げたのが、2013年の「ロミオ&ジュリエット」で歌唱指導をしてくれた人でした。
その後も何度か舞台で一緒になり、本格的に歌を教わるようになったそうです。
その指導は、身体を使って発声を学ぶものでした。
手の動かし方を指示され、そのとおりに動かしながら歌うと、声の響きが大きく変わったと振り返っています。
また、あえて英語で歌い、その発声を日本語の歌にも取り入れることを教わりました。
古川はこうした指導によって、自分の歌の技術が変わったと話しています。
ここでの変化は、頭で説明を理解することと、実際に身体を動かして声を出すことが結びついた点にあります。
先生と一緒に試し、実際に出た声の響きの違いを感じながら、技術を学んでいたのです。

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ミュージカルで歌うことには、当初から苦労がありました。
2022年にも古川は、ポップスと発声の方法が大きく違うことや、舞台で音程を外すことへの重みを語っています。
周りには高い実力を持つ歌い手がいて、音楽活動をしているというだけで入った当初は大変だったそうです。
歌う経験があっても、新しい舞台で必要な歌唱を学ぶ。
古川にとって歌唱指導者との出会いは、そのための技術を身につけ、声の響きを考える大切な経験になっていました。
2020年の時点でも、空いた時間を使い、その先生からレッスンを受け続けていると話しています。
2017年のロミオでは、高い音を出す先の表現を探す
歌への取り組みを強める中で、悔しさが残った経験もありました。
2016年の「1789‐バスティーユの恋人たち‐」では、任されると思っていたことを任されなかったと、後年振り返っています。
その内容や理由は詳しく明かしていませんが、本人は、もっと努力しようと気持ちが切り替わった時期として挙げました。
2017年に再びロミオを演じる際には、前回の2013年に思い描きながら実現できなかった歌い方へ挑戦しています。
高めのキーでもジュリエットへ優しく歌うことと、以前は裏声で歌った箇所を地声で歌うことです。
声を強くする一方向の変化ではなく、同じ役の中で使える表現を増やそうとしていました。
「世界の王」「僕は怖い」など――2017年公演の製作発表(2016年9月)から
「天使の歌が聞こえる」では、繰り返しの多い曲をどう展開させるかが課題でした。
古川は、最初のサビをとても優しく歌うなど、表現を試していると説明しています。
同じ旋律が戻ってくる曲でも、初めから同じ強さで歌い続けるのでなく、歌の表情を変えて広げていく。
高い音が出るかどうかに加え、その音を相手へどう届けるかを考える段階へ進んでいたのです。
2018年の「モーツァルト!」に向け、一年前から声を準備する
2018年、古川は「モーツァルト!」でヴォルフガング・モーツァルトを演じました。
この役への初挑戦について、2021年の取材では、それまでで最も大きな挑戦だったと振り返っています。
優れた歌唱力を持つ先輩たちが演じてきた役だったことも、準備に力を注ぐ理由になりました。
この役に向けて、一年前からボイストレーニングを重ね、スタジオにこもって作品の歌を繰り返し歌い込みました。
舞台に立つ直前だけの練習ではなく、長い時間をかけて、その役の歌を自分が扱えるようにしていったのです。
当時について本人は、がむしゃらだったと語っています。
「僕こそ音楽」――2018年2月の製作発表での歌唱
初めて出演した2018年の歌唱について、古川は後に、頭で考え、組み立てながら歌っていたと説明しています。
そうした歌い方が、当時は自分の中にしっかり身についていました。
これは、2021年に同じ役を準備する際、以前との違いを振り返って語ったことです。
2018年末には、この作品を経て、以前歌ったロミオの曲の感じ方も変わったと語っています。
ライブのリハーサルで「世界の王」を歌うと、キーの高さは感じても、以前のように高い部分を何とか出そうと試行錯誤せずに歌えたというのです。
「僕は怖い」の最後の伸ばす音も、以前は身体に力を入れて絞り出す感覚だったのが、低く感じられるようになったと説明しました。
古川自身が、過去に苦労した曲を歌い直したときの体感です。
大きな役への挑戦が、すでに歌っていた曲へ戻ったときにも、自分の成長を確かめる機会になりました。
さらに2020年の取材でも、歌う前の準備の大切さに触れています。
その場で急に歌うように言われても、自分の感覚では六割ほどしか出せず、それなりの準備が必要だといいます。
喉や身体のわずかな状態の違いでも、歌うことの難しさを感じていました。
一方、何かのスイッチが入るように、歌唱を楽しめるときもあるそうです。
そうした状態でいつでも歌える人がいることを知り、自分もその領域を目指したいと話しています。
役に向けて歌い込んだ後も、毎回どのように自分の力を出すかが、彼にとって課題になっていたのです。
2021年の再演で、出せる音と、工夫が必要な音が変わる
2021年、古川は三年ぶりに「モーツァルト!」へ出演します。
同じ役を再び歌う準備をする中で、彼は以前との声の違いを感じていました。
前回は出なかった音が出るようになり、音域の変化を感じたといいます。
一方で、以前は意識しなくても出ていたところが、工夫をしないと出なくなったこともありました。
同じ役の歌を準備することで、いまの自分が歌えるところと、補う必要のあるところを確かめていました。
2018年末にロミオの曲で感じた歌いやすさと、今回の新たな難しさは、どちらも本人が経験した変化です。

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彼はこの三年間の違いとして、ミュージカルへの出演が続いていなかったことを挙げました。
2018年は作品に続けて出演する中で「モーツァルト!」を歌っていましたが、今回は舞台との間隔が空いています。
ただし、成長や課題の原因を、その間隔だけで説明してはいません。
以前は、頭で考えて組み立てながら歌うことが身についていた。
それが、期間を空けたことで自然となくなったのかもしれないと、本人は考えていました。
出せる音だけでなく、慣れた歌の組み立て方についても、あらためて見直す時期になっていたのです。
長く歌ってきた曲でも、以前と同じ感覚で歌えるとは限らない。
古川の再演時の言葉からは、変わった声に合わせて、足りない部分をどう補うかを考える姿が見えてきます。
成長した実感があるからこそ、新しく生まれた課題も確認していました。
2022年にも古川は、歌の技術は以前より向上したと思う一方、歌い方はまだ模索していると話しています。
指導を受けて声の響きを学び、大きな役に向けて歌い込み、再演では自分の声が変わったことを知る。
古川雄大の歌唱は、こうして具体的な課題をひとつずつ確かめる中で、磨かれてきたといえます。
作品ごとの発声や、声の太さを選ぶ考え方については、古川雄大の歌い方で詳しく見ていきます。







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