古川雄大の歌い方・発声|作品に合わせる声の太さと、音量を調整する感覚

2022年、ソロと舞台の活動について語る古川雄大 シンガー
2022年、ソロと舞台の活動について語る古川雄大

古川雄大は、作品によって歌い方や声の出し方を変えることについて、具体的に語っています。
ミュージカルでは太めの声を意識する一方、ドラマ「エール」で歌った「船頭可愛いや」には、その出し方がそのまま合うわけではありませんでした。
また、舞台と自分のライブでは、歌う際の音量の調整も違うといいます。

ソロ曲「love song」は、2019年の作品「Love songs」に収録されています。
このような本人名義の音楽と、役として歌う舞台曲を行き来するとき、どのような声を出すか、どう扱うかを考える必要がありました。
声の太さ、作品ごとの発声、マイクに合わせた調整という、本人が挙げた違いから、その歌い方を見ていきます。

「船頭可愛いや」で考えた、声の太さとこぶし

古川は2020年の取材で、舞台では比較的太めの声を出せるように意識していると話しています。
その一方、連続テレビ小説「エール」の御手洗清太郎として歌うときには、別の難しさがありました。
劇中のオーディション場面で歌った、昭和の歌謡曲「船頭可愛いや」です。

本人によれば、この曲を舞台と同じような太めの声で歌っても、求めるものとは違いました。
役としての歌に合わせて、どのような声を出すかを考える必要があったのです。
古川は、いろいろな声を自在に出せるわけではないので、御手洗として歌うことには苦労したと振り返っています。

もうひとつ、難しかったと挙げたのが、こぶしの利かせ方でした。
この歌唱ではボイストレーナーと約一時間半練習し、さらに自主練習も行ったといいます。
歌う部分は長くなくても、慣れた舞台曲とは違う歌へ声を合わせるために、準備を重ねていました。

舞台で意識する声の太さと、昭和の歌謡曲で必要だったこぶし。
「船頭可愛いや」では、いつもの歌唱とは違う出し方を考え、役に必要な声を探していました。

「エール」では、山崎育三郎が演じる久志と、ミュージカル風に歌いながらセリフを交わす場面もありました。
監督を交えて方向を相談した後、二人が自信をぶつけ合うようなやり取りを、いくつかの形で撮ったそうです。
何度も舞台で共演した山崎への安心感もあり、動きにはアドリブが生まれました。

決まった曲のこぶしを練習する場面もあれば、相手の言葉に応じて歌と芝居をつなぐ場面もある。
同じ御手洗という役でも、歌う場面に応じて準備や表現の組み立て方が変わることが分かります。

2020年「エール」についてのインタビュー時の古川雄大
2020年「エール」についてのインタビュー時の古川雄大。
画像出典:写真掲載元

「エリザベート」と「ロミオ&ジュリエット」でも、発声を変える

ミュージカルの曲を歌うときにも、古川は作品ごとの違いを意識しています。
2018年の取材で挙げたのが、「エリザベート」と「ロミオ&ジュリエット」でした。
本人は前者をクラシックの発声、後者をポップスに近い歌い方として説明しています。

古川には、ミュージカルでもポップスのように歌いたい気持ちがあるそうです。
それでも、実際にどう歌うかは作品によって変わると話しました。
自分が好む方向を持ちながら、その作品で求められる発声も選んでいるのです。

2017年のロミオ役に向けた取材では、歌う技術と人物の気持ちのつながりを、さらに具体的に説明しています。
ロミオの曲はキーが高めですが、その高音をジュリエットへ、より優しく歌うことを課題にしていました。
また、2013年版では裏声を使った箇所を、地声で歌えるように取り組んでいたそうです。

このとき古川が描こうとしていたのは、純粋で繊細なだけではないロミオでした。
仲間に守られていた人物が、ジュリエットとの出会いによって、情熱的に恋へ踏み出していく。
相手へ優しく歌うことと、声の表現の幅を広げることは、その人物像を表すための課題だったのです。

古川は、物語が悲しい方向へ進んでも、ジュリエットと出会った瞬間の喜びを、ロミオの中に保つことが大切だと説明しています。
一場面だけの強い感情で歌うのではなく、それまでに抱いた思いも残したまま言葉を発する。
歌と芝居をつなぐうえでは、こうした人物の心情のつながりも手がかりになります。

2017年公演に向けた「ロミオ&ジュリエット」の製作発表では、古川も「世界の王」や「僕は怖い」を披露しています。
ポップスに近いと本人が説明した作品で、役として歌う姿を知る手がかりになります。

作品に合わせた発声とともに、古川が大切にしているのが、歌をセリフとして言う意識です。
本人によれば、自分のライブでミュージカル曲を歌うときにも、この意識が残っています。
そのため、発声が違うと言われるのかもしれないと考えていました。

同じライブの中で歌っていても、役の言葉として歌う曲と、古川雄大として届ける曲では、本人が歌う際の意識が変わります。
クラシック寄りか、ポップス寄りかという発声の選択に加え、その歌を誰の言葉として口にするのかも、彼にとって大切な違いなのです。

2018年、舞台とライブの歌い方について語る古川雄大
2018年、舞台とライブの歌い方について語る古川雄大。
画像出典:写真掲載元

マイクが変わると、声を出す前の調整も変わる

舞台とライブの歌い方を考えるとき、古川が具体的に挙げたのは、マイクの違いでした。
ライブで使うハンドマイクでは、口との距離を変えて音量を調整できます。
一方、舞台で使うワイヤレスマイクでは、その感覚が変わり、声として出す前に調整しなければならないと、本人は説明しています。

これは、舞台とライブを並行していた2018年の取材で語ったことです。
舞台のマイクに慣れていても、その間にハンドマイクを一度使うと、感覚が戻ってしまうといいます。
同じ歌を歌う仕事でも、声を出すときに意識する調整は違っていました。

ハンドマイクでも、舞台と同じように調整すればよいのではないか。
古川自身、その方法を考えていました。
ただ、そうすると自分の好きな声が出ないとも話しています。
音量を合わせることと、出したい声の質感を保つことの両方を考えるため、切り替えには難しさがあったのです。

ここでの調整は、声を出した後にマイクを離すか、それとも出す声そのものを先に調整するかという、本人の感覚の違いです。
舞台とライブで、自分が出す声をどのように扱うかを、古川は具体的に考えていました。

舞台では太めの声を意識し、別の歌ではその太さが合うかを考える。
作品によって発声を選び、使うマイクに合わせて音量も調整する。
古川雄大の歌い方には、こうした具体的な選択と、切り替えに向き合う姿があります。
本人が語る声の使い方を知ると、舞台曲とソロ曲を歌うときの違いにも、より関心を持って聴けるようになるはずです。

歌唱指導を受け、「モーツァルト!」の再演で自分の声の変化を感じるまでの歩みは、古川雄大の歌唱変遷でたどっています。

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