田代万里生の歌い方・発声|クラシックの基礎と、舞台に合わせる声の使い方

2025年更新の所属事務所公式プロフィール別写真 シンガー
2025年更新の所属事務所公式プロフィール別写真

田代万里生は、クラシックで学んだ発声を土台に、ミュージカルでは意識して声の使い方を変えると話しています。
基礎を大切にしながら、どの作品でも同じように歌うわけではありません。
響きを劇場へ届ける声と、マイクのある芝居で使う声を区別しています。

『スリル・ミー』では、ピアノ1台と二人の俳優が音楽を作ります。
田代がこの作品について語ったのは、伴奏に乗るだけでなく、歌のほうがピアノを動かしていく難しさでした。
発声の使い分けと、歌をどのように進めるかという考えから、舞台での歌い方を見ていきます。

クラシックを基礎に、発声を切り替える

2012年『スリル・ミー』公演。撮影:田中亜紀/掲載:All About
2012年『スリル・ミー』公演。
撮影:田中亜紀/掲載:All About。
画像出典:写真掲載元

田代が2013年に説明したのは、ESCOLTA、ソロのテノール、ミュージカルでは、それぞれ発声が違うということでした。
ミュージカルでは意識して変えつつ、クラシックの発声をさらに深めたいと考えています。
複数の活動を続ける本人にとって、使い分けと基礎の学習は両立するものです。

オペラについては、自分の生の声を、劇場の空間の響きによって客席へ届ける美学があると話しています。
一方、ミュージカルにはマイクがあり、とくに芝居の発声法が違うと説明しました。
同じ声の持ち主でも、声を届ける条件が変われば、選ぶ使い方も変わるのです。

その違いを実感したのが、初めてミュージカルに出演した『マルグリット』でした。
それまで学んだ舞台語発音では、小さな声で話す場面でも、大きな客席へ言葉を届ける必要がありました。
会話ほどの声をマイクで拾える舞台へ移っても、その習慣が残り、台詞の声量が大きくなりすぎたといいます。
歌っている人物と話している人物を自然につなぐには、歌の技術に加え、台詞の声を調整することも必要だったのです。

ミュージカルでは、役として話す声と、音楽の中で歌う声の両方を扱います。
その課題に向き合った初期の経緯は、田代万里生の歌唱変遷でたどっています。

ESCOLTAでは、三人の声を放ちながらバランスを取る

ESCOLTAの歌では、田代は二人のメンバーを視界に入れ、声のバランスを取るようにしていると話しています。
ポップス出身の結城安浩は、クラシックの発声をする田代と吉武大地に対して、静かに寄り添うだけでは合わない場合があったと説明しました。
自分も声を放つようにすると、三人の響きがクリアに聞こえたそうです。

田代は、こうした歌い方が合う理由として、カンツォーネを思わせるアレンジが多いことを挙げています。
声をそろえる際にも、作品が求める力の出し方があります。
音量を小さくまとめることより、それぞれの声を生かして釣り合いを取るグループだったのです。

また、ソロ活動を経て再び集まると、互いが別の場所で得た感覚を持ち帰ってくることも楽しみにしていました。
結城は、田代の声にポップスの要素が出てきたとも話しています。
発声を使い分ける活動の中で、別の場所で得た表現が、三人で歌うときにも生きていました。

「グラナダ」では、クラシックの発声も表現の一つになる

2014年のアルバム『I am here ~Musical selection~』には、ミュージカルの歌に加えて「グラナダ」も収められています。
ぶらあぼの取材では、この曲のクラシカルな発声が聴きどころとして紹介されました。

ピアノを担当したのは、田代のピアノの先生である御邊典一です。
本人は、幼い頃から好きだった先生のアレンジで、いつか歌いたいと考えていたそうです。
原曲よりも華やかなアレンジを、自分のよく知る演奏家と形にしました。

ソロアルバムでも、クラシックの発声は、曲に応じて選び取る表現として残っています。
この歌の選び方にも、複数の発声を大切にする田代の考えが表れています。

『スリル・ミー』では、歌がピアノを導く

2021年3月掲載の田代万里生(左)と新納慎也。写真出典:ローチケ演劇宣言!
2021年3月掲載の田代万里生(左)と新納慎也。
写真出典:ローチケ演劇宣言!。
画像出典:写真掲載元

2021年の『スリル・ミー』取材で、田代は、この作品の歌を雰囲気だけでは歌えないと説明しています。
オーケストラやバンドの拍に乗る歌とは違い、ピアノ1台の音楽は常に揺れているそうです。
その中で、歌が引っ張っていかなければならず、歌によってピアノも変化します。

旋律だけなら単調に見える部分でも、人物の感情は動いています。
リズムが淡々としているところで、台詞の中の思いは揺れていく。
その関係を捉えなければ、歌も単調になると考えていました。

ここで必要になるのは、伴奏の上に声を載せることに加え、声で音楽の流れを作ることです。
田代は、技術的な構造を捉えたうえで、役として感情を発散できて初めて作品が完成すると話しています。
声の出し方と、芝居の中で歌をどう動かすかを、切り離してはいないのです。

その一方で、技術を観客に見せようとしすぎることにも慎重でした。
田代は、自分が演じる「私」の行動を、本人にとっての究極の愛として捉えています。
観客を驚かせようと作為的に演じると、作品が別のものになってしまうと考えていました。
音楽の構造を理解して歌を導きながら、舞台上では人物の思いとして聞こえるようにする。
音を扱う技術を、役の感情に溶け込ませようとしているのです。

「Volare」では、先に歌を渡して伴奏を作る

歌と伴奏の関係が具体的に表れたのが、2020年放送の「Sound Inn S」で歌った「Volare」です。
編曲の斎藤ネコは、今の田代が一曲をどう歌うか知りたいと、アカペラの音源を求めました。
田代は新たに全曲を歌って送り、その歌声を手がかりにアレンジが作られています。

本人は、収録で出来上がった演奏を、一緒に呼吸しているような自然さがあったと振り返りました。
決まった伴奏へ歌を当てはめる前に、歌い手の呼吸やフレーズの運びを伝える。
『スリル・ミー』で語った、歌が周囲の音を動かす感覚を、別の制作方法で形にした例としても読めます。

同じ番組の「シェルブールの雨傘」では、冨田恵一が原曲の音楽的な揺れを抑え、ビートを感じる編曲を施しました。
田代には、クラシカルな曲がポップな表情へ変わることが新鮮だったそうです。
「Volare」の呼吸に寄り添う伴奏と、「シェルブールの雨傘」のはっきりした拍の感覚。
異なる音楽の流れを受け止めて歌うことも、田代の表現の幅を作っています。

田代万里生の歌い方には、クラシックの基礎を深めながら、場や作品に合わせて声を選ぶ姿勢があります。
さらに『スリル・ミー』では、その声でピアノとの関係を動かし、人物の思いを音楽へ移そうとしています。
身につけた発声を、いま歌っている作品のためにどう使うかが、本人の説明を通して見えてきます。

シンガー人気投票。投票ページはこちら

こちらの記事もおすすめ

コメント

タイトルとURLをコピーしました