中島健人の歌い方はなぜ一曲ごとに違う?ファルセットと「声の演技」を分析

中島健人の歌い方をファルセットと声の演技から分析する記事のアイキャッチ シンガー

中島健人さんの歌声は、きれいなファルセットや甘い声だけでは説明しきれません。
ある曲では王子様のように軽やかで、別の曲では低く濁り、ラップでは言葉を鋭く刻む。
同じ歌手なのに、曲が変わると声の人物像まで入れ替わります。

その理由は、声を一つの美しい音色に磨くだけでなく、歌の主人公を演じる道具として使っているからです。
本人も曲ごとに主人公になりきることを大切にしていると語っており、年齢に合わせて同じ曲の色気まで変えています。

一方で、得意なファルセットを使う現在の歌い方について、喉が疲れるという課題も明かしています。
中島健人さんの面白さは、完成された王子様の声を守ることではなく、その声を自分で壊して作り直そうとしている点にあります。

中島健人の歌い方は「きれいな声」より役作りが先にある

中島健人さんを「ファルセットがきれいなアイドル」と捉えると、近年の低音やラップが急な路線変更に見えます。
しかし、曲の主人公を演じるという考え方から見ると、すべてが一本につながります。

明るい恋の歌なら、言葉の輪郭を軽くして笑顔が浮かぶ声にする。
暗い物語なら、低い音に重さを残し、言葉を少し濁らせる。
声質を固定しないこと自体が、この人の歌い方です。

これは俳優が役によって話し方を変える感覚に近いでしょう。
高音が出るかどうかだけでなく、「この声は誰の言葉として聞こえるか」を先に決めるため、一曲ごとに別人のような印象が生まれます。

30歳の「CANDY」は同じ曲でも別の人物になった

グループ時代のソロ曲「CANDY ~Can U be my BABY~」は、若い頃の中島健人さんを象徴する曲です。
2024年のソロアルバムで再録した際、本人は30歳の自分が歌う色気を加えたと説明しています。

ここで重要なのは、昔の歌唱を上手に再現しなかったことです。
メロディーとキャラクターを残しながら、声の年齢だけを進めた。
歌い方を技術の完成度ではなく、物語の時間として扱っています。

「Scene29」では甘さを、「黄昏てゆく夜に」では渋さを選ぶように、大人っぽさも一種類ではありません。
同じ低い声でも、恋愛の余裕を出すのか、夜の苦さを出すのかで響かせ方を変えるところに、声の演技者としての強みがあります。

曲の主人公に合わせて表情と声色を変える中島健人

得意なファルセットが喉を疲れさせるという矛盾

中島健人さんはファルセットを自分の強みとして認識しています。
「碧暦」のように、ほぼ全編を柔らかな高音で進めても音程を保ち、細い声のままリズムを失わない曲もあります。

ファルセットとは、地声より軽く、息を多く含ませやすい高い声です。
一般には力を抜いた声のように聞こえますが、軽く聞こえることと、本人にとって負担が少ないことは同じではありません。

本人は、現在のファルセットを多用する歌い方では喉が疲れると話し、もっと喉を落ち着かせた歌い方へ更新したいと考えています。
つまり、聴き手には自然に聞こえる声も、長いステージで繰り返すには改善の余地があるということです。

ここは表面だけを真似しない方がよい部分です。
息を増やして弱く歌えば同じ雰囲気になるわけではなく、音程、言葉、リズムを保ったまま細い声を続ける制御が必要になります。

低音を脇役から主役へ移した「モノクロ」

高音が得意な人は、高音を見せ場にし続けることもできます。
ところが近年の中島健人さんは、まだ主役にしていなかった低い声へ意識的に光を当てています。

「モノクロ」の終盤では、通常なら中央の高さを主旋律にしそうな重なりの中で、オクターブ下の低音を中心に置きました。
本人がアレンジャーと相談しながら、低音の倍音を曲の顔にする構成を選んだものです。

「Celeste」でも、低音を大きく鳴らすのではなく、息を含んだ柔らかさで余白を作っています。
高い声の反対として低音を出すのではなく、低音にも人物の温度を与えているのです。

ファルセットだけでなく低音やラップも作品ごとに選ぶ中島健人

ラップが別人に聞こえてもリズムの芯は変わらない

「N / o'clock」や「ピカレスク」では、甘い声の印象を裏切るような低音とラップが前に出ます。
言葉をきれいに伸ばすのではなく、短く区切り、ビートの一部として押し出す歌い方です。

ただし、声色が変わっても曲から浮かないのは、リズムの位置が安定しているからです。
ファルセットでは軽く流れ、ラップでは硬く刻んでも、拍のどこへ言葉を置くかが曖昧になりません。

声を演じ分けるだけなら、曲ごとに別人の物まねをするだけにもなります。
中島健人さんの場合は、身体で覚えたアイドルのリズム感が共通の芯になり、多彩な声を一人の歌手へ戻しています。

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GEMNでは「王子様ではない声」が正面に出た

キタニタツヤさんとのユニットGEMNによる「ファタール」は、歌手としての見え方を大きく変えた曲です。
華やかな高音だけでなく、暗い低音、鋭い子音、ダンスと結びついた強いリズムが必要になりました。

ここでも相手に寄せて個性を消したのではありません。
曲の危うい主人公へ入り込みながら、歌と演出の両方へ長い意見を出し、自分の役を作り込んでいます。

同じ曲の中で声がどう対照を作るかは、キタニタツヤさんの歌い方を分析した記事と比べると分かりやすくなります。
キタニさんの陰影と、中島さんの人物を立ち上げる声がぶつかることで、一人では出せない緊張感が生まれました。

参考にするなら声色より「誰として歌うか」を聴く

中島健人さんの歌い方から最も参考にしやすいのは、ファルセットの形をまねることではありません。
同じ人が「CANDY」「ファタール」「IDOLIC」で、誰の言葉として歌っているかを比べることです。

軽い高音、低いささやき、ラップという技術だけを切り離すと、特徴はばらばらに見えます。
しかし、曲の主人公に必要な声を選ぶという順番で聴くと、なぜその声になったのかが理解できます。

山田涼介さんの一人でも立体的に聞こえる歌い方が、声を重ねて空間を作る方向だとすれば、中島健人さんは声色を変えて人物を作る方向です。
同じアイドル歌唱でも、魅力の組み立て方はかなり違います。

まとめ:中島健人の歌声は完成品ではなく更新される役柄

中島健人さんの歌い方は、きれいなファルセットを中心にした一種類の発声ではありません。
曲の主人公になり、年齢や物語に合う低音、高音、ラップを選び直す「声の演技」が中心にあります。

しかも、得意なファルセットで喉が疲れるという課題を隠さず、低音を主役にしながら歌い方そのものを更新しようとしています。
王子様の声を守るのではなく、王子様を演じてきた経験まで材料にして次の人物を作る。
そこが、中島健人さんの歌が一曲ごとに違って聞こえ、それでも本人だと分かる理由です。

初期の歌声から「アイドルver2.0」へ至る時間の流れは、中島健人さんの歌唱変遷をたどる記事で詳しく整理しています。

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