吉田仁人(M!LK)の歌い方|「Kiss Plan」の息と、「Message」で変えた声色

吉田仁人(2026年の「rockin’on.com」掲載写真) シンガー
吉田仁人(2026年の「rockin’on.com」掲載写真)

吉田仁人は、「Kiss Plan」では息を多めに交え、「Message」では表情を意識して声色を作っています。
曲に合わせて、声の質感をどう選んでいるのか。
本人が説明したレコーディングの工夫から、その歌い方を考えます。

「Kiss Plan」(2024年)のMV。

「Kiss Plan」で、息を多めに交えて丸く歌う

2024年の「Vocal Magazine Web」の取材で、吉田は「Kiss Plan」を、吐息を多めにして丸く歌う感覚だったと話しています。
ここで大切なのは、息の成分と声の輪郭を一緒に考えているところです。
音程や声量に加え、どんな質感で言葉を届けるかを選んでいます。

同じ取材では、この曲のハモリも難しかったと振り返っています。
M!LKではハモリを任されることが多く、「Kiss Plan」にも、言葉にならない声を重ねるハモリがありました。
主旋律とハモリの両方を受け持ち、録音の中で複数の声を作っているのです。

本人はこの取材で、曲の中の相手として好きな人を細かく思い浮かべることも勧めています。
また、この曲は英語が多く、自分は得意ではなかったため、かなり練習したと話しました。
柔らかな印象を作るにも、感情の想像と、言葉を口に慣らす準備の両方があります。

主旋律の上に重ねる声にも、歌い手の仕事がある

ハモリを担当する意味は、「HIKARI」の録音の話からも分かります。
2022年の「音楽ナタリー」の取材で吉田は、高い主旋律に対して、さらに上へ重ねるパートを地声で歌ったと説明しました。
この時も、最も大変だったものとしてハモリの録音を挙げています。

曲の中で一人ずつ受け渡すメロディと、その後ろに重なって響きを作る声。
吉田の役割は、目立つソロパートだけでなく、ほかの声と一緒に鳴る部分にもあります。
高い音をどの声で歌うかという選択が、主旋律を受け持つ時とは別の場所でも必要になるのです。

歌声を一つの特徴だけで説明するより、主旋律なのか、重ねる声なのかという役割と合わせて見ると、曲の中で担っている仕事が見えてきます。

「Message」は、表情から声色を明るくする

2024年の「Message」について、吉田は「音楽ナタリー」の取材で、花畑を思い浮かべながら歌ったと話しています。
小さな録音ブースの中でも、その先に広がる景色を想像していたのです。

それと一緒に意識したのが、優しい顔で歌うことでした。
本人は、表情を意識せず歌ったときより、明るい声色になると説明しています。
声の響きを考えるとき、歌っている自分の表情も手がかりにしていました。

「Message」(2024年)の音源。

この選択には、曲の内容もつながっています。
「Message」は、塩﨑太智が、聴き手への愛情や感謝を曲にしたいと希望して生まれた楽曲でした。
吉田も、相手を思う言葉が並ぶ歌として受け止めています。
だからこそ、明るく優しい声色で歌うためのイメージや表情が、具体的な録音の方法になっていました。

同じ取材で語った「エビバディグッジョブ!」では、曲の途中で気持ちを切り替えています。
忘れ物で困る場面は状況を想像して心情を再現し、サビでは思い切り明るく、笑顔で歌ったといいます。
「Message」の優しさとはまた違う、困惑から元気へ、一曲の中で気分を切り替える表現でした。

吉田仁人(2026年の「rockin’on.com」掲載写真)
吉田仁人(2026年の「rockin’on.com」掲載写真)。
画像出典:画像掲載元

「好きすぎて滅!」では、パートごとに熱を注ぐ

柔らかく丸い声とは対照的な例が、2025年の「好きすぎて滅!」です。
「Billboard JAPAN」のインタビューで吉田は、普段の曲より少しキーが高く、練習時にはどう歌うか考えたと話しています。
任されたパートを見て楽しみになり、強い感情やテンションが出るよう、繰り返し練習しました。

いつもの録音では、一曲を通して歌えるくらいの力の配分を考えるそうです。
ところがこの曲では、それぞれのパートに全力を注ぐような歌い方を選びました。
通して同じ熱量で歌ったら持たないのでは、と感じるほど、録音では息を切らしながら取り組んだと振り返っています。

これは、普段から常に限界まで押して歌うという話ではありません。
曲が求める恋の勢いを伝えるため、まず録音で特に強い表現を選び、その後も練習を重ねたという具体例です。
高音を出す難しさと、そこでどれほどの感情を聞かせるかを、一緒に考えていたことが分かります。

本人は、スタンドマイクの前にメンバーが並び、熱く歌う少し懐かしい見せ方も気に入っていました。
歌声の力強さは、曲全体が描くその情景ともつながっています。
吐息で近づく「Kiss Plan」と、感情を大きく差し出すこの曲では、相手への向かい方そのものが違うのです。

ソロ曲では、言葉と伴奏の間にある感情を描く

ソロでの表現を考えるうえでは、吉田がどんな言葉を歌いたいのかも大切です。
2025年の「rockin’on.com」の取材では、グループに多い前向きな曲に対し、自分の曲では生活感を描きたいと話しました。
back numberを聴いて言葉の繊細さにひかれ、歌詞を見ながら音楽を聴くようになったとも振り返っています。

歌の中には、人に見せにくい弱さや迷いも置ける。
そうした言葉への関心があるから、明るさや力強さだけではない声の使い道も生まれてきます。
感情をすぐに解決させず、揺れている人の姿に寄り添うことも、彼のソロ曲を聴く時の視点になります。

2026年のEP『東京』について同媒体で語った際には、歌詞とサウンドの違いも意識していました。
「やすらぎ」は、えんぷていの奥中康一郎による、ライブを想定したアレンジです。
洒落た音を楽しんでいても、言葉を読むと主人公の思いに気づく。
吉田は、そうした隔たりを作りたかったと説明しています。

「ばいばい」も、勢いのあるギターロックと、東京を離れる人の物語を組み合わせた曲です。
録音して聴くと、思った以上につらい内容になっていると感じ、ライブで元気に盛り上がってもらえるだろうかと考えたそうです。
明るい伴奏なら明るい気持ちだけを歌う、という単純な組み合わせには収まりません。

だからこそ、吉田の歌では、声の質感とともに、どの言葉をどんな気持ちで差し出しているかにも耳を向けたくなります。
感謝を明るく届ける時、恋の熱を強く伝える時、生活の中の迷いを描く時。
その違いが、息の量や表情、力の注ぎ方を選ぶ理由になっています。

吐息を交えた丸さを選ぶ曲と、表情を通して明るさを引き出す曲。
吉田仁人は、曲の中で届けたい感情に合わせて、声の質感を作り分けています。
過去曲のDメロを裏声から地声へ替えた経緯と、ソロ曲での表現は、吉田仁人(M!LK)の歌唱変遷でたどっています。

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