ホ・ユンジンの歌をたどると、よく響く声を持っていることと、その声をどう使うかは別の課題なのだと分かります。
LE SSERAFIMでは曲の人物像に合わせ、自作曲では自分の迷いにも向き合う。
さらに、仲間の歌を導く側にも立つようになりました。
歌唱の変化を、単純に声量や高音の伸びだけで説明するのは難しい人です。
録音で求められた表現と、歌で伝えたいことの変化をたどります。
声楽の経験と、自分の話を歌いたい気持ち
アメリカで育ったユンジンは、教会の聖歌隊で歌い、高校ではオペラやミュージカルに取り組みました。
一方で、決められた登場人物を演じるだけでなく、自分自身の話を音楽にしたいという気持ちもあったと振り返っています。
声を使って役を表す経験と、自分の言葉を持ちたい願いが、出発点で重なっていました。
高校の舞台「オペラ座の怪人」ではカルロッタを演じ、2017年には地域の高校ミュージカル賞の主演女優部門にノミネートされました。
これは、デビュー以前から舞台で歌っていたことを示す経歴です。
ただし、後のポップスをすべて声楽の延長と捉えると、彼女が新たに身につけた表現を見落としてしまいます。
2022年、音をきれいに並べることから離れる
2022年のデビュー曲「FEARLESS」の録音では、音程よりも歌詞に意識を向け、話すように歌うことを求められました。
本人はガイドを歌とラップの間のように受け止め、強い人物像を想像しながら表現を探っています。
同年秋の「The Hydra」では、ナレーションをさらに気軽に話す感覚へ近づけました。
一方、「Impurities」は、柔らかな歌と強い内容の歌詞が組み合わさるところを本人が気に入っていた曲です。
同じグループの中でも、強さを直接押し出す声だけが必要とされていたわけではありません。
曲の雰囲気と、言葉の意味を別々に考える余地が広がっていきます。
デビュー100日の節目には、自作曲「Raise y_our glass」を公開しました。
デビュー前から準備していたこの曲は、自分を励ます気持ちと、仲間への思いが重なる歌でした。
グループの世界観を表す仕事と並んで、自分の経験を直接歌へ移す場所が生まれます。
2023年、自分の迷いを歌の明るさに変える
翌2023年の「I ≠ DOLL」では、アイドルを外見だけで判断する視線への疑問を、自分の側から歌にしました。
日記のように内面を表せるソロ曲は、彼女にとって、グループとは別の角度から言葉を差し出す場になります。
役柄の感情を伝える経験の先で、歌う内容そのものも引き受けるようになったのです。
8月の「blessing in disguise」では、ディスコやファンクの方向へ踏み出しました。
本人にとっては、それまで慣れていた音楽とは異なり、何を歌うかを決めるまでに約2か月を要したといいます。
やがて、遠回りも今につながっているという見方にたどり着くと、歌詞は約2時間で形になりました。
ここで明るい音楽に乗せたのは、順調な成功談だけではありません。
挫折や迷いを経た道のりを、感謝とともに振り返っています。
つらかった経験と明るい曲調を組み合わせることで、今だからこそ言える気持ちを表す。
曲の明るさの中に、複雑な思いを置く試みでした。

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グループの「FEARNOT」では、曲を届ける責任も広がります。
制作の出発点は「Raise y_our glass」より早く、英語の歌詞とメロディーのガイドを用意し、2022年にはチョクチェと曲を練っていました。
2023年のアルバム「UNFORGIVEN」に収まった歌は、完成した曲を歌うだけでなく、仲間が歌う曲の形を考える経験にもなったのです。
「FEARNOT」—『UNFORGIVEN』収録の公式音源(2023年)
2024年、声の質感を選び、仲間の歌も導く
「EASY」の録音では、寒い場所で白い息が出るような場面を想像する指示を受けました。
デビュー曲で求められた、強い人物の態度とは異なる入り口です。
また、この時期には、自分では好きではなかった声をファンが認めてくれることが、支えになっているとも話しています。
声を変える努力に加え、今ある声を信じることも、表現の土台になっていました。
グループの外では、MAXの「STUPID IN LOVE」に参加しました。
MAXは、彼女の声が曲にぴったり合い、以前から温めていた曲の足りない部分が埋まったと説明しています。
ここで求められたのは、主役として声を張ることだけではなく、相手と組み合わさったときに生まれる魅力でした。
「CRAZY」収録の「Crazier」では、メインプロデューサーとしてメンバーの録音にも関わります。
発表時のショーケースで、サクラは具体的で分かりやすい助言を、カズハは制作を円滑に進める姿を挙げました。
自分の声で表す段階から、ほかの人の声を通して曲を完成させる段階へ。
歌い手として積んだ経験を、仲間へ渡す役割がはっきりしてきます。
「Crazier」—『CRAZY』収録の公式音源(2024年)
同じ年のソウルのファンミーティングでは、「Raise y_our glass」をチェウォンと歌いました。
ユンジンは、一人で歌うときよりも曲の思いが伝わり、よりよいステージになったと振り返っています。
自分のために書いた歌も、別の声と一緒になることで意味が変わる。
制作と共演の両方から、歌を自分一人のものとして完結させない経験を重ねました。
2025年以降、歌を届ける距離と形を変える
2025年1月の自作曲「jellyfish」は、アコースティックギターを軸にしたR&B/ソウルの曲です。
海を漂うクラゲのイメージを通して、生きることを見つめます。
ディスコ調の曲で過去を振り返った時期とは、歌を置く音楽の景色も変わりました。
ソロであることを一つの音楽性に固定せず、書いた内容に合う器を選び続けています。
年末のCOUNTDOWN JAPANでは、グループの曲をバンドの演奏に合わせて披露しました。
「HOT」「Come Over」ではスタンドマイクを使い、観客へ親密に語りかけるような場を作りました。
同じ曲でも、振付を中心に見せる場面とは届け方が変わります。
作品の幅だけでなく、ステージの形にも選択肢が増えていました。

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2026年の「BOOMPALA」では、旋律を歌う感覚よりも、言葉を唱えるような表現が求められました。
ユンジン自身が受けた指示は、森で瞑想している場面を想像することでした。
新作ごとに高音や声量を増やすのではなく、曲の世界へ入るための声を選ぶ。
デビュー時から続く課題が、また違う形で現れています。
同年9月、ユンジンは、ツアー冒頭の「Need Your Company」から「Sonder」へ続く演出を、ミュージカルのように捉えていました。
会話が歌へ移り、一人ずつの姿がグループへまとまっていく構成です。
「Need Your Company」では、人と関係を結ぶために心を開くことを伝えたいと説明しています。
舞台で役を表していた経験が、今は自分たちの関係を観客へ示す歌につながっています。
ホ・ユンジンの変化は、一つの発声を完成させて終わる歩みではありません。
言葉に合う声を探し、自分で曲を作り、仲間の声を導き、共演によって歌の意味を広げる。
声を出す力を、何のために使うのかという問いが深まってきた歩みです。
曲ごとの声の選び方は、ホ・ユンジンの歌い方で掘り下げています。

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