「サウダージ」をカラオケで歌うと、最初のサビは越えられても、最後には声が重くなりがちです。
一方、岡野昭仁さんの歌は、高い音が続いても言葉の輪郭が薄くなりません。
地声のように力強く聞こえるため、「あの高音は地声なのか」と気になる人も多いでしょう。
結論からいうと、岡野さんの高音を普通の地声だけで押し上げた声と考えるのは無理があります。
ただし、すべてをミックスボイスという一語で片付けるのも適切ではありません。
魅力の中心にあるのは発声法の名前ではなく、高音になっても明るさ、言葉の強さ、声の勢いが残ることです。
岡野昭仁の高音を「地声かミックスか」だけで決めにくい理由
地声と裏声は、照明のスイッチのように完全な二択で切り替わるものではありません。
実際の歌声には、地声の力強さを多く残した高音もあれば、裏声の軽さを利用した高音もあります。
その中間をミックスボイス、ミドルボイス、地声系の中高音などと呼ぶことがありますが、言葉の使い方は統一されていません。
ここで発声の名前当てに夢中になると、岡野さんの声の面白い部分を見失います。
あの高音が印象に残るのは、単に音が高いからではありません。
高音へ上がっても声が急に頼りなくならず、歌詞が前へ飛び出してくるからです。
したがって、初心者には「地声か裏声か」よりも、「地声らしい存在感を残した高音」と捉える方が分かりやすいでしょう。
本人がすべての高音の発声方法を公表しているわけではないため、声帯や喉の内部の動きを断定することはできません。
それでも、真似する時に注目すべきポイントは十分に整理できます。
岡野昭仁らしさを作る3つの要素
一つ目は、声が明るいことです。
太さだけで押すのではなく、音の輪郭が見えやすいため、力強いのに重たく聞こえません。
暗く太い声を無理に作るより、話し声に近い明るさを保つ方が岡野さんらしい方向へ近づけます。
二つ目は、声の出だしが速いことです。
息だけが先に漏れてから音になるのではなく、最初の瞬間から言葉と音程がそろって始まるような強さがあります。
短距離走でスタートが決まると走り全体が速く見えるように、歌でも最初の一歩が曲の勢いを作ります。
三つ目は、発音がはっきりしていることです。
ポルノグラフィティの曲には言葉数の多いフレーズがありますが、岡野さんの歌は高音でも歌詞の形が崩れにくいのが特徴です。
声量を上げることと、言葉を明瞭にすることを同時に成立させているため、メロディーだけでなく歌詞まで強く届きます。
この3つが重なることで、岡野さんの高音には「高い声を出している」という以上の推進力が生まれます。
音域だけなら同じ高さへ届く人でも、声の始まりがぼやけたり、母音がつぶれたりすると同じ印象にはなりません。
本人の言葉から見える意外な努力
岡野さんというと、力強い地声で最初から何でも歌えた人のように見えるかもしれません。
しかし本人は、ファルセットに苦手意識があり、表現の幅を広げるため意識的に取り組んだことを明かしています。
アルバム「暁」の制作では、それまでとは異なるファルセットの使い方にも挑戦しました。
ソロ活動では、提供された仮歌を何度も聞き、自分にはなかった歌い方を取り込んだ経験も語っています。
普段は前へ進むようなリズムで歌うことが多い一方、曲によっては言葉を少し遅らせて置くなど、歌い方を使い分けています。
つまり、岡野さんの歌は一つの必殺技だけで完成したものではありません。
地声らしい強さを大きな武器にしながら、裏声、声色、リズムの置き方を曲に応じて選び直してきたのです。
生まれつき高い声が出たという話だけで終わらず、自分の苦手な声まで表現へ変えてきたところに面白さがあります。
デビュー初期から現在までの変化は、岡野昭仁の歌唱の変遷で詳しく整理しています。
「サウダージ」が苦しい本当の理由
岡野さんの高音を考えるうえで、「サウダージ」は避けて通れません。
発売から長い年月がたった現在も、カラオケで歌い継がれている代表曲です。
この曲の難しさは、最高音が一回だけ登場することではありません。
高めの音域が長く続き、休める場所が少ないうえ、歌詞も細かく詰まっています。
終盤では転調によってさらに負担が増すため、最初から全力で歌うと最後のサビを迎える前に声と息を使い切ります。
一度だけ高い棚へ手を伸ばすのではなく、荷物を持ったまま長い坂道を上るような難しさです。
最高音が出せる人でも、息継ぎの場所が曖昧だったり、すべての言葉を同じ強さで歌ったりすると最後まで持ちません。
「岡野さんのような高音が出ない」と感じる時は、音域だけを疑わないことが大切です。
本当の原因は、高さではなく息の配分、発音の忙しさ、高音を繰り返す持久力にあるかもしれません。
岡野昭仁の歌い方へ近づく練習
最初に整えたいのは声の太さではなく、歌詞が迷わず流れる状態です。
難しい部分を2〜4小節に区切り、まずメロディーを付けずに普段の声で読みます。
言葉がもつれる場所や息が足りなくなる場所があれば、そこへ息継ぎの印を付けましょう。
次はテンポを落とし、小さめの声で歌います。
高音を強く出そうとせず、声の出だしと言葉が同時に始まることを優先してください。
小さな音量でも歌詞がはっきり聞こえ、最後まで同じ調子を保てたら、少しずつ原曲の速さへ戻します。
原曲キーで苦しい場合は、キーを1〜2程度下げるところから試して構いません。
キーを下げることは逃げではなく、息の位置や発音を崩さず練習するための調整です。
余裕のある高さで歌い方を整えてから戻した方が、喉で無理に押し上げる癖も付きにくくなります。
最後に録音し、最高音だけでなく一曲全体を確認します。
見るべきなのは、歌い始めと最後のサビで声の明るさが大きく変わっていないか、言葉がつぶれていないか、息継ぎの前で急いでいないかです。
一回の派手な高音より、最後まで再現できる歌い方を目標にしてください。
地声を押し上げる癖がある人は、高音の張り上げを直す練習法も先に確認してください。
地声と裏声のつながりから整理したい場合は、ミックスボイスの出し方と見分け方が参考になります。
喉の形を無理に真似しない
岡野さんの明るい高音へ近づこうとして、喉の位置や響かせる方向を力ずくで固定するのは危険です。
「喉を上げる」「声を後ろへ引く」といった感覚的な表現を、首の筋肉で物理的に再現しても同じ声にはなりません。
初心者が自分で確認しやすいのは、声の明るさ、言葉の明瞭さ、声の出だし、最後まで歌える余裕です。
反対に、喉の内部がどのように動いているかを録音だけで判断することはできません。
発声中に痛みや強いかすれが出た場合は、その日の練習を中止してください。
話し声の不調が続く場合は、無理に慣らそうとせず耳鼻咽喉科へ相談しましょう。
岡野昭仁の高音は「地声らしさ」が魅力
岡野昭仁さんの高音は、地声かミックスボイスかという二択だけでは説明しきれません。
大切なのは、高音になっても明るさと言葉の輪郭が残り、声が最初の瞬間から力強く始まることです。
さらに本人は、苦手だったファルセットを研究し、曲に合わせてリズムや声色を変えてきました。
岡野さんのすごさは、地声だけで高音をねじ伏せることではありません。
強い声を持ちながら、一つの歌い方に閉じこもらなかったことにあります。






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