JENNIE(BLACKPINK)の歌い方|強いラップと柔らかな歌をつなぐ声の選択

2025年『Ruby』の紹介に掲載されたJENNIE(撮影:Mok Jung Wook) JENNIE
2025年『Ruby』の紹介に掲載されたJENNIE(撮影:Mok Jung Wook)

JENNIEの歌い方を、切れのあるラップだけで捉えると、ソロ曲での声に驚かされます。
柔らかな歌、ささやくようなフレーズ、仲間と重ねる声。
その違いは、声を強くするか弱くするかだけではありません。
どんな質感で言葉を置き、伴奏や相手の声とどう組み合わせるか。
具体的な録音から、歌とラップを行き来する表現を見ていきます。

柔らかい声にも、いくつもの表情がある

Dominic Fikeと共演する「Love Hangover」では、裏声を用いた歌唱が特徴として挙げられています。
力強いラップで知られる声とは違う、軽やかな響きが出てくる曲です。
軽い響きで恋の迷いを描く、柔らかな表現の例です。

同曲の歌には、気持ちを明快に言い切るというより、つかみきれない感情に引かれていくような柔らかさがあります。
一方、「twin」は、アコースティックギターを中心にした伴奏の中で、手紙を読み上げるように歌う曲です。
どちらも強声で押し通す曲ではなく、前者には揺れる気持ち、後者には過去の友へ言葉を渡す近さがある。
静かな歌をひとまとめにせず、何を伝える声なのかまで聴くと、違いが見えてきます。

「Damn Right」で選ぶのは、短いフックを息をひそめてささやくような歌い方です。
Kali UchisやChildish Gambinoとの共演で、声を張らずに存在感を残します。
大きな声で強さを見せる代わりに、近くで話す声を置く。
柔らかさを、自信のなさとは違う表情へ使えるところも持ち味です。

「Slow Motion」では、相手の声と混ざる側に回る

「Slow Motion」は、ピアノを背にしたJENNIEの歌から、二人の声が重なる展開へ進みます。
Matt Championの声が加わっても、最初の穏やかな感触が曲の入口になっています。
伴奏が少ないところで一人の声を聴かせ、そのあとで相手との響きを作る。
客演とは、短い担当部分で目立つことだけではないと分かる組み合わせです。

別の形で声を前へ置くのが、「You & Me」のジャズ版です。
2023年公開のライブクリップでは、穏やかなピアノの旋律に乗せ、豊かな感情を込めて歌っています。
ダンス曲としての印象が強い一曲にも、こうして伴奏と声の関係を変えた版があります。
曲名だけで歌い方を一つに決めず、どのアレンジかを分けて捉えたい例です。

強いラップは、言葉を前へ押し出すために使う

「Mantra」では、エネルギッシュなラップとボーカルを、覚えやすいビートへ重ねています。
本人が込めたのは、ありのままの自分を好きでいてほしいという思いです。
勢いは威圧のためだけにあるのではなく、聴き手が一緒に自信を持てるように働いています。

その歌声には遊び心があり、言葉を少し引き延ばす表情も、曲の軽快さにつながっています。
速さだけでなく、言葉の響かせ方も曲の印象を決めています。
言葉の形を変えて、反復するフレーズに表情をつける。
ラップと旋律の中間にあるような歌を、親しみやすいフックへ変える工夫です。

「ZEN」の制作では、完成したデモを聴いた日に録音へ進み、最初のテイクから力強い歌が出てきたと、プロデューサーのPLUSSは話しています。
制作側が重視したのも、その勢いを保つことでした。
録るたびに表情を整え直すだけでなく、初めに出た力を残す判断もあるのです。

「ZEN」は、落ち着いた低音の土台に、意志のある声を区切りとして置くような曲でもあります。
旋律を大きく動かし続けなくても、言葉の置き方で輪郭を作れる。
柔らかな歌で気持ちを漂わせるときとは違い、ここでは声が一つひとつの主張を立たせています。

録り直す声と、そのまま生かす声を選ぶ

2024年「SPOT!」制作時のJENNIEとZICO(KOZ Entertainment公開)
2024年「SPOT!」制作時のJENNIEとZICO(KOZ Entertainment公開)。
画像出典:画像掲載元

「SPOT!」の録音では、共演者でありプロデューサーでもあるZICOが、JENNIE自身から修正録音の提案があったと明かしています。
相手は既に気に入っていても、本人にはもう一度確かめたい部分があった。
声をどう仕上げるかについて、受け身にならない姿勢が分かる出来事です。
ただし、どの音をどう直したかまでは公表された説明にないため、特定の発声法へ結びつけることはできません。

「ZEN」の初めの勢いを生かす制作と、「SPOT!」で本人が試し直す制作。
どちらか一つを、いつもの正解にしているわけではありません。
曲に必要な表情が出ているかを、その都度確かめるところに、歌い手としての判断があります。

一人の歌でも、声を重ねて響きを作る

『Ruby』の入口に置かれた「Intro : JANE with FKJ」では、柔らかな声の反復が音楽を形づくります。
伴奏の上に歌を一本載せるだけでなく、自分の声自体を曲の一部として組み立てる場面です。
話すような声やラップまで含め、声が担う役割を曲中で変えられることが、アルバムの幅になっています。

Tame Impalaの「Dracula」リミックスでは、ケヴィン・パーカーが、サビに八つのボーカルが同時に入ると説明しています。
録音では、JENNIEが多くのテイクを仕上げたといいます。
また本人は、ひとりで曲全体を歌う際、自分の歌に加えてパーカーのパートを歌う難しさも話しています。
重ねた声の厚みを、一回の発声の強さと取り違えずに捉えたい録音です。

『Ruby』にも、客演入りの版と、JENNIEがすべてのボーカルを歌う「JENNIE Only Audio」版があります。
相手の声と組み合わせた完成形を聴くことと、本人の声が全体を担う版を聴くことでは、受け取る印象も変わります。
声の使い方を比べるときには、録音の版まで確かめることが大切です。

歌と動きの強さを、いつも最大にしない

JENNIEは、激しい振り付け、強い歌唱、完璧な見え方を、同時にすべて最大へ上げることの難しさを話しています。
エネルギーにはいろいろな段階があるのに、以前は最大へ上げることばかり学んできた、とも振り返りました。
舞台では、自分の状態を聴き取り、力の配分を考える必要もあるのです。

2026年には、フェスでは細かく作り込んだ作品の世界を広げながら、客席とのやり取りを楽しむ余地も残したいと話しています。
準備した形を守ることと、その日の観客から力を受け取ること。
歌と動きを合わせたパフォーマンスにも、その両方を求めています。

JENNIEの声の幅は、強いラップに静かな歌を足しただけではありません。
裏声やささやきで距離を近づけ、言葉の置き方で勢いを作り、相手や自分の声と重ねて響きを変える。
その選択を、録音や舞台の条件に合わせて組み合わせています。
こうした自由を求めてきた歩みは、JENNIEの歌唱変遷でたどっています。

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