ReoNaさんの歌声は、弱々しい声から力強い声へ、一直線に変わったわけではありません。
大きく変わったのは、静かな声を手放さないまま、その声で背負える感情と音楽の種類を増やしてきたことです。
17歳で初めてオリジナル曲を受け取った頃は、低いAメロを歌えず、作曲者にメロディーを書き直してもらったと本人が振り返っています。
そこからアニメの登場人物として歌い、ReoNa名義で言葉を届け、激しいロックを歌い、大会場の静寂を自分のものにし、2026年には愛の情熱と切なさを一つの声へ混ぜるところまで進みました。
現在の歌声を象徴する「HEART」を聴いたあとで、その道のりを古い時期からたどっていきましょう。
- デビュー前は、歌える音域より「言葉を届けたい気持ち」が先にあった
- 2018年は、神崎エルザの強さとReoNaの静けさが同時に現れた
- 2019年、「forget-me-not」と『Null』で借り物ではない言葉を選んだ
- 2020年の「ANIMA」で、静かな歌手という枠から大きく踏み出した
- 2021〜2022年は、声を登場人物の表情へ変える幅が増えた
- 2023年、武道館で「一人に話しかける歌」が大会場を満たした
- 2025年の『HEART』は、昔の曲を現在の声で歌い直す地点になった
- 2026年の「Amore」で、絶望だけではなく愛の熱まで声へ混ぜた
- ReoNaに変わらず残るのは、背中を押すより隣に立つ姿勢
- まとめ|ReoNaの進化は、静かな声で歌える世界を広げたこと
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デビュー前は、歌える音域より「言葉を届けたい気持ち」が先にあった
ReoNaさんにとって最初のオリジナル曲は、17歳の時に受け取った「怪物の詩」でした。
当時はボイストレーニングへ通った経験がなく、ピアノのデモを何度も聴きながら独学で曲を覚えたと語っています。
ところが、最初のAメロは本人には低すぎました。
現在なら難曲を歌い切る歌手が、出発点では自分の音域に合わせて旋律を変えてもらっていたという事実は、ReoNaさんの変化を考えるうえで重要です。
ここで始まっていたのは、広い音域や大きな声を競う歌唱ではありません。
本人が「言葉を届けることを意識した原点」と呼ぶように、まず言葉があり、その言葉を自分の声でどう渡すかを探す歌でした。
2018年は、神崎エルザの強さとReoNaの静けさが同時に現れた
正式デビューの入口は一つではありませんでした。
アニメの劇中アーティスト、神崎エルザ starring ReoNaとしては「Independence」や「Disorder」のような強いロックを歌い、ReoNa名義では「SWEET HURT」で甘く静かな声を前面に出しています。

「SWEET HURT」の録音では、声が出すぎないよう座って歌った曲もありました。
明るく柔らかな音色で痛みを歌うことで、歌詞の怖さや孤独がかえって浮かび上がるという設計です。
この時点で、後年の激しい曲に必要な声が突然生まれたわけではありません。
強く歌う役割と、隣でささやく役割の両方が最初からあり、ReoNa名義では後者を自分の中心に選んだと見る方が自然です。
2019年、「forget-me-not」と『Null』で借り物ではない言葉を選んだ
翌年の「forget-me-not」では、作品の登場人物へ寄り添いながら、ReoNa自身のメッセージも重ねる歌へ進みました。
野外で撮影された映像に三つの人物像が登場するのも、少女と大人の間にいた当時の揺れを映す仕掛けでした。
同年の『Null』では、デビュー前から歌っていた「怪物の詩」や、自身の過去を材料にした「Lotus」を収録しています。
アニメの物語を歌うだけでなく、自分の痛みや居場所のなさを、初めて聴く人へ通じる言葉へ変える段階に入ったのです。
歌声の変化も、単純な声量の増加ではありません。
長くライブで歌って固まった歌い回しをそのまま録音せず、初めて聴く人へ届く形を考え直したという本人の言葉からは、歌いやすさより伝わり方を優先し始めたことが分かります。
2020年の「ANIMA」で、静かな歌手という枠から大きく踏み出した
「ANIMA」は、ReoNaさんの歌唱が広く知られる大きな転機になりました。
疾走するバンドサウンドと高揚する旋律を背負いながら、言葉を置き去りにしない歌が求められた曲です。
それ以前にも神崎エルザ名義でロックを歌っていましたが、「ANIMA」はReoNaという名前と強い歌唱を正面から結び付けました。
静かな声しか出せない人ではなく、静けさを出発点にして激しい音楽へ入れる人だと伝わったのです。
この時期を現在の発声だけから説明すると、声量や高音の話に偏ります。
ReoNaさんの声の芯、息、音量の選び方を詳しく知りたい場合は、ReoNaの歌い方・発声分析で整理しています。
2021〜2022年は、声を登場人物の表情へ変える幅が増えた
「ないない」と「シャル・ウィ・ダンス?」では、ReoNaさんの歌声が物語の案内役としてさらに複雑になりました。
ただ悲しむのではなく、幼さ、怪しさ、諦め、遊び心を一曲の中へ同居させる必要があったからです。
「シャル・ウィ・ダンス?」では、作品世界のいびつな舞踏会を、声の色や言葉の表情で描くことが求められました。
初期の「静かで優しい声」という印象を残しながら、場面ごとに人格が少し入れ替わるような歌へ広がっています。
この広がりは、強い声を獲得したという一語では説明できません。
同じ小さな音量でも、無垢に聞かせるのか、不穏に聞かせるのか、救いに聞かせるのかを選べるようになったことが、この時期の進化です。
2023年、武道館で「一人に話しかける歌」が大会場を満たした
2023年には日本武道館で初のワンマン公演を行い、2ndアルバム『HUMAN』を発表しました。
会場が大きくなっても、歌い方を大きな掛け声へ変えたのではなく、目の前の一人へ話しかける感覚を保ったことに意味があります。
実は、そのライブの型は最初から完成していたわけではありません。
初期ツアーでは激しい曲の熱気が残る客席を前に、バンドが静寂になるまで次の曲を始めず、その沈黙から「虹の彼方に」へ入ったことが転機になりました。
やがてReoNaさん自身も、拍手が続いていてもひるまず、言葉が届く静けさを待てるようになります。
武道館は大声で空間を制圧した到達点ではなく、何千人もの客席を「一対一」の距離へ近づけた到達点だったのです。
2025年の『HEART』は、昔の曲を現在の声で歌い直す地点になった
3rdアルバム『HEART』では、デビュー曲を再構成した「SWEET HURT -Naked-」が収録されました。
本人は過去の自分を再現する必要はなく、現在の自分が同じ曲を歌えばよいという考えを示しています。
これは、昔の声へ戻る企画ではありません。
歌い慣れた曲に現在の経験を持ち込み、デビュー時の痛みを消さずに別の距離から見つめ直す試みです。
長く演奏を支えてきたバンドマスターも、デビュー前やデビュー直後の音源と現在では歌声がまるで違うと語っています。
16ビートの曲を少ないテイクで歌えた録音では、音の高さだけでなく、体の中で細かなリズムを扱う力の成長も感じたと振り返りました。
同じく息を多く含む声から活動の幅を広げてきた歌手との違いは、Aimerのデビュー初期から現在までの歌声の変化を読むと比較しやすくなります。
2026年の「Amore」で、絶望だけではなく愛の熱まで声へ混ぜた
2026年の「Amore」では、作品に流れる愛情を、明るい恋の歌へ単純化せずに歌う必要がありました。
本人は、情熱と切なさの間を探りながら、どの声の成分をどれほど混ぜるかを考えたと話しています。

初期のReoNaさんは、痛みを大きな声で押し返さず、その隣に座る歌手として登場しました。
現在はその立ち位置を変えずに、愛、ソウル、ダンス感、激しいロックまで扱っています。
声が太くなった、音域が広がったという変化だけでは、ここまでの道のりを捉え切れません。
最も大きな進化は、静かな声のまま世界を狭くしない方法を身につけたことです。
ReoNaに変わらず残るのは、背中を押すより隣に立つ姿勢
デビュー当時から現在まで変わっていないのは、聴き手を一方的に励まさない姿勢です。
すでに疲れている人へ「頑張れ」と言うことが、かえって苦しさを増やす場合があると本人は考えてきました。
だからこそ、激しい曲を歌えるようになっても、歌の中心は勝利の宣言にはなりません。
力を見せるために声を大きくするのではなく、言葉を必要な距離へ届けるために音量を選びます。
LiSAさんがライブの熱量と言葉の強い立ち上がりを広げてきた過程は、LiSAのガルデモ時代から現在までの歌声の変化で紹介しています。
二人は同じアニソンとロックの大舞台に立ちながら、客席との距離の作り方が異なります。
まとめ|ReoNaの進化は、静かな声で歌える世界を広げたこと
ReoNaさんは、低いAメロを歌えずメロディーを書き直してもらった17歳の頃から、音域と表現の両方を広げてきました。
「SWEET HURT」の柔らかさ、「ANIMA」の激しさ、武道館の静寂、『HEART』での再解釈、「Amore」の情熱は、別々の歌手像ではありません。
すべてをつないでいるのは、歌である前に言葉を届けるという考えです。
大きく歌えるようになった現在も、最大音量を使い続けず、聴き手の隣へ届く声を選ぶからこそ、初期の個性が成長の中で消えていません。
ReoNaさんの歌声は、弱さを克服して強さへ置き換えたのではなく、弱さを置き去りにせず、そこへ数多くの表情を持ち帰った声だと言えるでしょう。






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