KIRITO(PIERROT)の歌い方は、曲や場面に合わせて、声のキャラクターと感情の出し方を変えるところに特徴があります。
メロディーを聴かせる声、シャウトの強さ、表情を抑えた歌。
本人の説明を手掛かりに、どのように声を使い分けているのかを見ていきます。
「BALANCE」公式ミュージックビデオ(2023年、『ALPHA』収録)。
曲の場面に合わせて、声のキャラクターを変える
2026年の「PARADIGM SHIFT」では、Aメロ、Bメロ、サビで異なる声色を使う歌が取り上げられています。
KIRITOは、自然にそうなったとした上で、場面ごとに大きく変わることが自分のスタイルだと説明しました。
「PARADIGM SHIFT」公式配信音源(2026年、『SHIFT』収録のスタジオ版)。
曲が進むにつれて、声の性格も変わっていく。
その変化が、歌の場面を切り替える役割を持っています。
曲の構成と声の表情を一緒に考えると、KIRITOの歌の特徴を捉えやすくなります。
「想像の楽園」は、感情と発声を一緒に練り直した
声の表情を選び直す作業は、Angeloの「想像の楽園」にも表れています。
2013年の『FAITH』制作時、この曲の歌は早い段階で録り終えていました。
しかし、ほかの作業も進める中で、もっと良い歌にできると感じ、制作の後半に歌をすべて録り直したといいます。
見直したのは、初めの録音では気付いていなかった感情の込め方や発声で、歌詞にも一部変更を加えました。
音程やタイミングを直す話よりも、曲に対してどんな歌を置くかを、全体から考え直した例です。
KIRITOにとって感情と発声は別々の課題ではなく、表したいものに合わせて一緒に練る要素なのだとわかります。
同じメロディーでも、曲への理解が進めば、必要な声の表情が変わることがあります。
一度録った歌を守るより、さらに納得できる表現へ近づけたことに、この歌い手の制作への姿勢が表れています。
メロディーを聴かせる声に、シャウトの強さも加える
2022年の「Discord」で本人が前面に出したと説明しているのは、英語の歌詞やシャウトなどの要素です。
それまでにあまり見せていなかった、自分の別の面を打ち出す曲になっていました。
「Discord」公式ミュージックビデオ(2022年、『NEOSPIRAL』収録)。
メロディーを歌う持ち味に、シャウトを強く打ち出す方法も加え、曲の印象を変えています。
この曲で何を前へ出すかを選んでいる点に、KIRITOの声の使い方が表れています。
新しい歌い回しを、自分の表現として身に付ける
『ALPHA』の「BALANCE」のAメロなどについて、KIRITOは、少しミクスチャー寄りの要素を取り入れたと話しています。
その際に大切にしているのが、自分のものとして身に付けてから表現することです。
2023年の『ALPHA』の録音では、一つのフレーズの感情の出し方に納得できず、一晩かかったこともあったといいます。
自分のスタジオで時間をかけられる分、どこまで詰めるかの終わりが見えないような作業でもありました。
新しい歌い回しを取り入れることと、その声に自分の感情を乗せられることの間には、こうした試行があります。
同作では録音の順番も調整し、メロディーを聴かせる曲を先に、シャウトを強く出す曲を後に回したと説明しています。
歌い方の違いは、一曲の印象を変えるだけでなく、制作中のペース配分にも関わっていました。
リズムへの対応も、歌を支える一つの要素です。
Angeloの『HETERODOX』を制作した2017年には、「Scheme」の複雑なリズムを問われ、変拍子は得意なので録音も比較的すんなり進んだと話していました。
言葉や旋律を曲のリズムに乗せ、新しい歌い回しも自分の表現として届ける。
声の色に加え、こうした歌の運び方も、KIRITOの持ち味を考える手掛かりになります。

画像出典:画像掲載元
「雫」で、耳元のような近さを作る
『NEOSPIRAL』の「雫」は、最初の1コーラスを歌とピアノで進める曲です。
KIRITOは前半の声について、残響を付けるリバーブなどのエフェクトを外し、耳元で歌っているように聞こえる形を目指したと説明しました。
大きな空間へ声を広げるのとは違う、近さを生かす選択です。
ここでは、声の聞こえ方に録音の処理も関わっています。
声が近く感じられることを、本人の発声だけで説明するのではなく、ピアノとの組み合わせや残響の扱いも含めて考えると、この曲の作り方が見えてきます。
声色を変える方法に加え、その声をどんな距離で届けるかまで選んでいるのです。
同じアルバムでは、曲順に沿って歌を録り、1曲目から最後へつながる感情の移り変わりを感じながら表現したとも話しています。
一曲だけで歌を完結させず、アルバム全体の流れの中で感情を捉えることも、声の表情を支えていました。
小さな編成でも、歌を中心に置く
アコースティックの「Phantom」公演では、伴奏を絞ることで歌を届ける方法も試してきました。
2022年には、ギターのアルペジオやリフを、歌のメロディーを乗せるための最低限の音として捉えていると説明しています。
音数を増やす前に、歌をどう成立させるかが中心にあるのです。
2026年の同シリーズでは、ギタリスト二人に演奏を任せ、自身がギターを持たずに歌う形にも取り組みました。
本人は、歌に専念できる良さと、この体制だから扱える曲が広がることを挙げています。
自分で弾きながら歌う場合と、歌に集中する場合を、作品や公演に応じて選べるようになっていました。
伴奏を小さくすることも、演奏をほかの人に任せることも、歌のための選択です。
声の強さや声色に加え、何を背景にして歌うかまで視野に入れると、KIRITOの歌い方の幅を捉えやすくなります。
抑揚を抑えることも、感情を伝える選択になる
KIRITOは、若い頃には抑揚を大きく誇張していたこともあり、その後、修正してきたと振り返っています。
経験を重ねる中で、感情を出し過ぎずに淡々と歌うほうが、リアルに伝わる場合もあると気付いたそうです。
2026年の「GEARS OF FATE」などでの優しい歌声についても、伝える感情によって、声の出し方やキャラクターは変わると説明しています。
『SHIFT』では、歌詞もできるだけシンプルな言葉にして、感情が伝わりやすい形を考えたといいます。
声の表情と、歌う言葉の選び方が、同じ方向を向いているのです。
「GEARS OF FATE」公式配信音源(2026年、『SHIFT』収録)。
強く押し出す声、場面ごとに変わる声色、表情を抑える歌い方。
そのどれもが、曲にある感情を聞き手へ届けるための方法になっています。
使える表現の中から、曲に合う声と抑揚を選ぶことが、KIRITOの歌を考える手掛かりになります。
こうした選択が作品とともにどう変わってきたかは、KIRITOの歌唱変遷でたどれます。

こちらの記事もおすすめ

本人の発言から、KIRITOの歌の選択がどう変わったかをたどります。

低い声、深いビブラート、芝居がかった言葉の置き方など、真似しやすい特徴…

少し鼻に集まった声、揺れの大きなビブラート、口元の…



コメント