菊池風磨の歌声には、息の気配を感じる甘さや、裏声へふっと抜く歌い回しを魅力とする評があります。
ラップとメロディを歌う時の声色にも、違いが聴かれてきました。
具体的な曲の評と本人の録音の話から、声の個性と、場面に応じた選び方を考えてみます。
『Sexy Second』(2014年)収録の「We Gotta Go」のミュージックビデオ(短縮版)。
「We Gotta Go」のソロに聴かれた、裏声の抜き方
2018年の「Real Sound」で高橋梓は、菊池の歌声に息の気配と甘い声色を感じています。
ラップも歌う彼が、メロディを歌う時には甘い声色へ変わる点を取り上げました。
具体例が、2014年のアルバム『Sexy Second』に収録された「We Gotta Go」です。
評では、ブリッジのソロパートでファルセットを使い、声を逃がすように歌うところが注目されています。
声を軽く抜く部分も、甘い声の印象を作る一つの要素として聴かれているのです。
短いソロで声の質感を変えるところも、この曲の聴きどころとして示されています。
強く押し出す声だけを追うと見落としやすい、フレーズの途中で軽くなる瞬間に注目した評です。
「make me bright」では、独白のような言葉の流れを作る
甘い声の印象を、リズムの側から考えられる曲が「make me bright」です。
2019年の『PAGES』に収録され、菊池が愛聴していたiriが作詞作曲、ESME MORIが編曲を担当しました。
『Real Sound』で青木皓太は、音数を抑えた伴奏の中で、ゆったりしたサビと、言葉を多く置くソロ部分の緩急を取り上げています。
1番を担当する菊池と、2番を担当する中島健人の歌は、独白のように流れると評されています。
同じ小節の中でも言葉の密度が変わり、サビのゆったりした歌との間に動きが生まれる。
声色に加えて、言葉をどんな速さで運ぶかが、曲の心地よさを支えています。
この曲では、サビに複数の声が重なることも大切です。
同記事が紹介したラジオでの発言によると、菊池はソロ曲として勧められても、グループで歌うことを望んでいました。
自分の好きな音楽を、自分だけの声で完結させず、仲間の声との組み合わせで届ける選択だったのです。
「We Gotta Go」の短いソロとは、声を聴かせる時間の使い方も違います。
一瞬の裏声で質感を変える歌と、まとまった長さの言葉で流れを作る歌。
菊池の持ち味を捉えるには、どの声を出すかとともに、どれだけの言葉をどうつなぐかも見ておきたいところです。
歌い方と一緒に、マイクの持ち方も工夫する
2014年の歌唱についての評では、曲ごとに歌い方を変えることと、マイクの持ち方を工夫することが並べて語られています。
声そのものに加え、マイクを通じてどう聞かせ、どう見せるかにも試行錯誤があったという見方です。
息の気配や裏声のような細かな違いも、マイクを通じて聴き手に届きます。
菊池の歌を捉えるときは、声色とともに、歌っている場面での聞かせ方にも注目できます。
2024年7月23日の横浜アリーナ公演には、そのマイクを使わずに歌う場面もありました。
『音楽ナタリー』の公演レポートによると、「rouge」の途中で、菊池はアカペラの歌声を響かせています。
一曲すべてを無伴奏で歌ったという話ではなく、歌の途中に設けられた見せ場です。
伴奏やマイクを通した響きから、声そのものへ注意が向くひとときが生まれる。
持ち方を工夫することも、一時的にマイクを使わないことも、その場で声をどう受け取ってもらうかに関わっています。
普段の歌声の甘さを知っている人にとっても、届け方を変えることで、同じ曲に違った緊張感が加わる場面といえます。

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グループでは、自分のパートも組み直す
一方、グループの歌では、自分の声を出す場所を変える必要があります。
2025年1月のTOKYO FM『木村拓哉 Flow』で菊池は、3人体制のライブに向け、誰かが抜けた場所だけを埋めるのでなく、一曲全体の歌割りを考え直したと話しています。
元々自分が歌っていた部分を他の二人が歌う場合もあり、その逆もありました。
慣れた場所では、つい歌いそうになってマイクを下げることもあったそうです。
佐藤勝利も、リハーサルでは担当を確かめ合う瞬間があったと振り返りました。
歌い慣れた曲でも、自分の番を覚え直し、他の声へ渡す準備が必要だったのです。
菊池が理由として挙げたのは、全体のバランスです。
個々の声を単純に差し替えるだけでなく、今いるメンバーで曲がどう聞こえるかを考える。
ソロでは前面に出る歌声も、グループでは、別の声が入ってくる場所との関係で役割が変わります。
「Rock this Party」の録音には、高音を伸ばす力強さも
軽く抜く歌声とは別に、力を感じさせる高音も取り上げられています。
2025年3月の『THE FIRST TIMES』は、公式SNSで公開された「Rock this Party」の録音風景を紹介しました。
そこで菊池について描かれているのは、力強く声を出し、高音を伸びやかに響かせる姿です。
これは完成した曲の全パートを解説したものではなく、公開された録音の一場面についての報告です。
それでも、甘い声やファルセットだけでは捉えきれない、歌の輪郭を強く出す側面を知る具体例になります。
抜く声と押し出す声を、曲の中の役割ごとに見ていくことが大切です。
普段の歌い方から、あえて癖を増やす録音もある
2026年8月、菊池は「-196」のCMで歌った「どか~ん」の録音を振り返っています。
「WEBザテレビジョン」の取材によると、当初は普段の感じを本命として、何度か録っていたそうです。
最後に、少し癖をつけて笑える感じで歌うよう求められ、試してみたところ、そのテークが採用されました。
同じ素材を、いくつかのニュアンスで歌い分けた録音です。
本人も完成したCMを面白いと感じた一方、採用されたテークには驚いたと話しています。
歌い癖も、場面の狙いに合わせて増やしたり、表情を変えたりする選択の一つになっていました。
「どか~ん」を使用した「爆誕-196MAN」篇(2026年、1分48秒版)。
歌で場面の表情を作る柔軟さは、俳優としての仕事にも現れています。
2022年のドラマ『ファイトソング』について、武田梓プロデューサーは、菊池が演じる慎吾の歌が撮影現場で生まれたと説明しました。
当初は上機嫌で掃除する場面だったところ、監督から歌いながら演じるよう声が掛かり、その後は現場で自由に歌を作る方向になったそうです。
ここでは、美しく整った一曲を届けることより、人物の機嫌や、その場の空気を歌で伝えることが求められています。
CMで採用された癖のあるテークと同様に、歌声を一つの表情へ固定せず、場面に必要な人物像へつなげる例として捉えられます。
甘い声に感じられる息の気配、短いソロで使う裏声、録音で変えてみるニュアンス。
菊池の歌い方には、声の個性を持ちながら、曲や場面に合わせて表情を選ぶ面があります。
Sexy Zone時代の曲と歌唱の評を時期ごとにたどる菊池風磨(timelesz)の歌唱変遷では、その広がりを取り上げています。

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