豊かな声で大きなバラードを歌ってきたD.O.が、2021年の「Rose」では、親密な恋の歌を甘く柔らかく届ける。
当時の評が新鮮に感じたのは、その表情でした。
その後も彼は、声をじっくり聴かせる曲を選びながら、言葉の運び方や感情の見せ方を広げています。
2019年の「That’s okay」から、2025年の明るい「SING ALONG!」へ。
本人が好む音楽と、歌を届けたい相手への思いが、ソロ作品の歩みをつないでいます。
『BLISS』(2025年)収録の「SING ALONG!」のミュージックビデオ。
「That’s okay」の慰めを、初ソロアルバムへつなぐ
2019年の「That’s okay」は、2021年の初ソロアルバム『Empathy』につながる曲です。
発売時の一問一答でD.O.は、この曲のように聴く人を慰められたらと考え、「Rose」や「I’m Fine」の作詞に取り組んだと説明しています。
声の魅力に加えて、どんな言葉を自分の声に乗せるかも考えていました。
「괜찮아도 괜찮아 (That’s okay)」(2019年)のミュージックビデオ。
初めてのソロアルバムでは、自分がやりたかった音楽を大切にしました。
中心に選んだのは、好きで、聴いていて心地よいアコースティックギターです。
グループで歌う時とは違い、一人で曲を歌い切る難しさもありましたが、新鮮で楽しい経験だったと振り返っています。
「Rose」の分かりやすいメロディも、誰もが一緒に歌えることを本人が挙げていた特徴です。
大きな声を聴かせるだけでなく、聴き手が自分の気持ちを重ねたり、口ずさんだりできる歌を選ぶ。
その方向は、初ソロ作の曲選びと言葉作りの両方に表れていました。
「Rose」の甘さは、それまでの声に加わった表情
2021年のソフィアナ・ラムリの評は、大きなバラードで豊かな声を生かしてきたD.O.に対し、「Rose」の甘い恋の歌を意外な表情として捉えています。
アルバム全体の控えめな音作りによって、滑らかな歌声と言葉へ耳が向くことも評価されました。
同じ評は、それ以前のソロでの歌や参加作品にも、声を中心に据えた簡素な伴奏があったと指摘しています。
『Empathy』は、それまでにもあった親密な歌の方向を、一枚のアルバムとしてまとめて見せた作品といえます。
「That’s okay」で慰めを届けた声が、「Rose」では恋をする人の身近な感情を運ぶ。
持ち味を生かしながら、歌う物語を選んでいく歩みでした。
『Empathy』(2021年)収録の「Rose」のミュージックビデオ。

画像出典:画像掲載元
2023年の「Somebody」で、穏やかな曲の中の緩急を聴かせる
2023年の『Expectation』でも、アコースティックギターと恋の感情を中心とする方向は続いています。
サラ・デルガドのアルバム評は、前作との連続性に加え、今回は恋の始まりから喪失へ、曲順に沿った物語があることに注目しました。
似た感情の曲を並べるところから、一枚を通して感情の時間を描く作品へと広がっています。
表題曲「Somebody」では、落ち着いた曲調の中に、言葉の緩急があります。
個人批評サイト「The Bias List」のニックは、抑えた音作りには物足りなさも感じつつ、サビやブリッジで歌が力と感情を増すところを評価しています。
ヴァースではラップに近い節回しで言葉が進み、伴奏がゆったりしていても、歌の流れには速さがあると捉えました。
「Rose」で印象に残った柔らかさに、言葉を運ぶ速さや、感情を前に出す場所の違いが重なる。
穏やかな曲の中でも、その表情の変化を聴くことで、この時期の歌の幅が見えてきます。
Somebody — 『Expectation』(2023年)のミュージックビデオ。

画像出典:NME
2024年の『BLOSSOM』では、本人がとくに気を配ったこととして、歌詞を挙げています。
アルバム名の「成長」は、自分がすでに成長したというだけでなく、これからも成長していく意味を込めたものだったそうです。
聴き手にも一緒に進んでほしいという思いが、歌う言葉を選ぶ背景にありました。
「Snowfall at Night」は、曲の出発点から一緒に作る
2025年1月の「Snowfall at Night」では、制作への関わり方にも変化がありました。
本人によると、準備を始めたのは前年10月頃です。
俳優としての撮影がない日に、少しずつ会って録音や制作を進めていました。
今回は自分から作曲家に連絡し、メロディや雰囲気、楽器、歌詞、コンセプトまで、最初から最後まで一緒に相談しています。
そのような作り方は、本人にとって初めての楽しい経験でした。
初ソロ作でも曲選びや作詞をしていた彼が、今度は歌う曲そのものの出発点から関わったのです。
「밤에 내린 눈 (Snowfall at Night)」(2025年)のミュージックビデオ。
同時期の取材では、ソロで曲を選び、歌い、全工程を一緒に経験することが、自分の成長につながっているとも話しています。
聴く人に共感や力を届ける音楽を、以前より考えるようになった。
その変化は、出来上がった曲をどう歌うかという問いに、どんな曲を作って歌いたいかという問いが重なってきたことを示しています。
また、今の自分の声や姿を作品に残せること自体が大切だとも語りました。
その時の自分を記録しながら、次の表現へ進む考え方です。
「SING ALONG!」で、温かい声を弾む音楽へ
2025年の初め、D.O.は、それまでの落ち着いたイメージに加え、体が動くような楽しい音楽も準備していると話していました。
7月のフルアルバム『BLISS』の表題曲「SING ALONG!」では、明るい夏のポップソングへと進みます。
この曲の評では、新しい曲調の中にも、聴き慣れた温かい声色が感じられることが取り上げられました。
一方で、曲の展開が一貫しすぎているという指摘もあります。
新鮮な方向に進んだことと、曲としての変化をもっと求めることが、同じ評の中に並んでいたのです。
「Rose」の親密な恋、「Somebody」の言葉の緩急、そして「SING ALONG!」の明るさ。
ソロ作品をたどると、温かい声をどんな感情や曲調に置くか、その選択が増えてきたことが分かります。
歌う曲を選ぶところから、曲の始まりを一緒に作るところへ。
制作に深く関わる歩みも、その声で何を届けるかを考え続ける時間でした。
語尾の動かし方や曲ごとの声の質感は、D.O.(EXO)の歌い方で取り上げています。

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