2021年の『Empathy』評で、「NME」は、音数を抑えた曲の中で聴かれるD.O.の柔らかな声を取り上げています。
その持ち味とともに、曲ごとの歌い回しにも目を向けてみます。
言葉を歌い終える時の音の動きや、盛り上がる箇所の質感に注目した批評が、具体的な手がかりになります。
『BLOSSOM』(2024年)収録の「우리가 몰랐던 것들 (Simple Joys)」の音源。
「Simple Joys」で、言葉の終わりを上向きに運ぶ
2024年の『BLOSSOM』を評した「KPOPREVIEWED」は、「Simple Joys」の歌詞の一部の言葉を歌い終える時、音が上向きに動くところに注目しています。
耳に入りやすいメロディとともに、その語尾の上がり方を楽しんだという評です。
柔らかな声という全体の印象だけでは、この細かな動きは説明しきれません。
一つの言葉をどんな音で終えるかも、D.O.の歌い回しを捉えるポイントになります。
「Mars」は、柔らかい声の中に前へ進む気持ちを置く
同じ『BLOSSOM』の「Mars」では、どんな感情を歌うのかを、本人の説明から確かめられます。
2024年5月に所属事務所を通じて公開した一問一答でD.O.は、違いのある相手と恋をすることへのためらいがありながら、自分から近づこうとする曲だと紹介しました。
メロディと歌詞の愛らしさが気に入り、表題曲に選んだそうです。
さらに、「Mars」と「Popcorn」には、本人が歌う時にも胸が弾み、気持ちが明るくなる言葉があると話しています。
歌詞をきちんと説明するだけでなく、歌っている自分の感情も動く。
そうした言葉を曲の魅力として挙げていることが、親しみやすい歌声を考える背景になります。
『Rolling Stone India』のデバシュリー・ダッタは、「Mars」の柔らかなギターの中を進む滑らかな声と、サビの揺るがない情熱を取り上げました。
優しい音色で歌われていても、伝わる気持ちまで弱いとは限らない。
相手との距離を埋めようとする思いが、声の滑らかさの中にも感じられるという評です。
この曲で耳を向けたいのは、柔らかい響きと、歌詞の中で前へ進もうとする人物との関係です。
ためらいを含んだ歌が、相手へ向かう意思をどのように伝えるのか。
声の強さだけで感情を判断せず、歌の中で何を望んでいるのかと一緒に聴くと、温かい声にも異なる表情が見えてきます。
「Good Night」は、盛り上がる中でも温かさを残す
『BLOSSOM』の「Good Night」について、「KPOPREVIEWED」は、歌が進むにつれ伴奏が厚くなり、歌声も伸び上がっていくと評しています。
それでも、曲を通して穏やかで温かい歌声が続き、メロディの運びにも落ち着きがあると聴いています。
曲が盛り上がるところでも、声の柔らかな印象が保たれている。
その両立に目を向けると、D.O.の歌声の温かさを、曲の展開の中で捉えられます。
『BLOSSOM』(2024年)収録の「오늘에게 (Good Night)」の音源。
「Si Fueras Mía」では、同じ声に切なさが宿る
柔らかな声が、切ない恋を運ぶ例もあります。
2021年の『Empathy』には、韓国語曲「It’s Love」のスペイン語版「Si Fueras Mía」が収録されています。
本人は発売時の一問一答で、ガイドの言語と雰囲気が気に入り、この言語でも歌いたくなったと説明していました。
2023年に『GRAMMY.com』へ寄稿したイヴァナ・E・モラレスは、「Si Fueras Mía」の切なさを帯びた声色に注目しています。
その声が、曲に描かれる恋慕と、言語の中にあるロマンチックな雰囲気を捉えていると評しました。
言葉が違っても同じ調子で歌うというより、その曲の感情が声にどう現れるかを聴いた批評です。
「Mars」の親しみやすさと、「Si Fueras Mía」の届かない恋への思い。
どちらも声の滑らかさが生きる曲ですが、歌が向かう感情は同じではありません。
温かい声という共通の印象の内側で、何を願い、何を惜しんでいるのかを比べられます。

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「Do you remember?」で聴かれた、声の重なり
2025年の『BLISS』評では、「TheKMeal」が「Do you remember?」の短いブリッジにある声の重なりを高く評価しています。
力とエネルギーのあるポップナンバーの中で、その重なりが評者の耳に残りました。
一つの声が持つ温かさと、複数の声を重ねた時の豊かさ。
このブリッジの評は、録音で声を組み合わせる効果にも目を向けさせます。
語尾を動かす細かな歌い回し、盛り上がりでも保たれる声の質感、重ねた声が作る響き。
D.O.の歌を捉える時には、それぞれを分けて聴く面白さがあります。
『BLISS』(2025年)収録の「Do you remember?」の音源。
歌詞で感情を届けることは、演技ともつながっている
声に感情を乗せることについて、D.O.自身も歌と演技を結びつけて説明しています。
2024年8月4日の横浜公演を取材した『TVガイドWeb』によると、歌では歌詞、演技では台詞を通じて感情を伝えるので、両者は同じだと語りました。
聴き手が共感し、作品に入り込める時間を作りたいという目標も、双方に共通していました。
この日のアカペラコーナーでは、「It’s Love」や「Goodbye summer」に加え、日本語の曲も披露しています。
斉藤和美の公演記事は、優里の「ドライフラワー」や尾崎豊の「I LOVE YOU」などに、情感を込めて歌う姿を伝えました。
伴奏に包まれた録音とは違い、声と言葉の流れに直接耳を向けられる場面です。
ここで大切なのは、別の歌手の曲でも、ただ音を正確に並べるだけでは終わらないことです。
どんな人物の、どんな気持ちを伝える言葉なのか。
本人の考え方を踏まえると、曲が変わった時の歌の表情を、その物語との関係で捉えられます。
ライブでは、一人で聴かせる声から、一緒に歌う声へ
2025年のマレーシア公演を報告した『Hype』は、「Simple Joys」などの穏やかな歌から、「Fit」の艶を感じさせるR&Bへ、会場の雰囲気が変わる流れを描いています。
その後には「Popcorn」や「SING ALONG!」の明るい曲も続きました。
一つのライブで、声が担う役割が何度も切り替わっています。
幕間にはバンドの演奏に合わせ、画面に映るEXOの曲の歌詞をファンが歌う時間もありました。
歌手だけが声を届け続けるのでなく、客席にも歌う番が用意されていたのです。
同じ公演では、「That’s okay」「I’ll Be There」「Draw my path」が、ファンへ伝えたいメッセージを持つ曲として選ばれたと紹介されています。
最後は再び「SING ALONG!」で、楽しい空気の中で終わりました。
じっくり聴いてもらう言葉と、会場が一緒に声を出せる歌を、どちらも届けています。
録音で重ねた声が豊かさを作る一方、ライブでは客席とのやり取りが歌の届き方を変えます。
語尾の小さな音の動きから、曲ごとの感情、そして会場全体との関係まで。
D.O.の歌の温かさは、声色だけでなく、その声をどんな言葉と場面に置くかにも表れています。
初ソロ作から、歌う曲の選び方や制作への関わりが広がった歩みは、D.O.(EXO)の歌唱変遷でたどっています。

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