桜井賢(THE ALFEE)の歌い方|艶のあるリードと、3声の真ん中を担う声

2023年のトークイベントでの桜井賢(めざましmedia掲載) シンガー
2023年のトークイベントでの桜井賢(めざましmedia掲載)

桜井賢の歌には、ロックの曲を前へ進める強さがあります。
その一方で、長年曲を作ってきた高見沢俊彦が魅力として挙げるのは、声の艶です。

力強いリードを歌い、3人のハーモニーでは真ん中を担う。
同じ歌い手が、曲の前に立つ声と、仲間の間に入る声を使っています。
さらに本人は、長いライブを歌い切るために、声を張る配分も考えるようになったと話しています。

「HEART OF RAINBOW」公式配信音源(2025年のシングル版)。

声の艶を、作り手の耳でも確かめる

2025年の取材で高見沢は、桜井の良さを艶のある声だと説明し、ある音の響きを特に好むとも話しています。
桜井自身は、自分の良さをよくわかっていないと答えていました。
作り手と歌い手が、同じ声を別の立場から捉えているのです。

高見沢が説明した録音の進め方は、いったん歌ってもらって確認し、その日は終え、別の日にもう一度歌ってもらうというものです。
作った曲にどのような声が合うのかを、実際の歌で確かめています。

歌い手が感じる出しやすさや手応えと、聴く側が魅力に感じる響きは、ぴったり重なるとは限りません。
桜井の声の艶も、本人だけで完結するものではなく、その声をよく知る作り手とのやり取りの中で生かされています。

「星空のCeremony」は、高い歌い出しで声を生かす

その選択が具体的にわかるのが、2022年の「星空のCeremony」です。
Techinsightの取材で高見沢は、桜井の声の良さが生きるキーで作り、高い音から歌い始める形が合うと説明しました。
単に最高音を上げるのではなく、曲の入り口でどんな声を聴かせるかまで考えられています。

一方、桜井は、上の音から下がっていく旋律のほうが音程を取るのは難しいと話しています。
高いところへ届いたら終わりではなく、そこから次の音へ移る部分にも注意が要るのです。
この曲を考えるときには、高音の迫力に加えて、歌い出したあとの旋律の運びも大事な要素になります。

ベースを弾く人が、ハーモニーの最低音とは限らない

THE ALFEEの3声の基本について、高見沢は、上を自分、真ん中を桜井、下を坂崎幸之助が歌うと説明しています。
ベースという楽器の役割と、歌う声の位置を、そのまま同じものとして捉えないことが大切です。

リードでは一曲の中心を担い、コーラスでは上下の声と一緒に響きを作る。
桜井の声を追うときにも、一人で前へ出ている部分と、3人の中へ入る部分では、聴く焦点が変わります。
声の力だけでなく、重なったときにどんな場所を担っているかまで見ると、バンドの歌がつかみやすくなります。

同じ2022年のシングルに入った「Circle of Seasons」は、最初から最後まで3人のコーラスで歌う曲です。
坂崎も、このように全編を3声で進める曲は意外に少ないと話していました。
リードの合間にハーモニーが入る曲とは、声の役割を考える出発点が違います。

一人の歌声に注目したあと、3人が重なった響きへ耳を広げる。
「星空のCeremony」と「Circle of Seasons」は、桜井のリードと、仲間の中で働く声の両方を考える対照的な例になります。

2022年の夏のライブでの桜井賢(上飯坂一撮影/Real Sound掲載)
2022年の夏のライブでの桜井賢(上飯坂一撮影/Real Sound掲載)。
画像出典:画像掲載元

「HEART OF RAINBOW」で語った、張り続けないための配分

2025年に「HEART OF RAINBOW」を歌うことについて尋ねられた桜井は、昔と同じように届けるためにも、歌い方を変える必要があると話しています。
過去のライブ映像を見て、序盤から声を張りすぎると最後まで持たないと思うこともあるそうです。

そこで考えているのが、ライブを通して歌うための配分です。
しかも、曲によって使える方法と、使えない方法があります。
決まった一つのやり方をすべての曲へ当てはめるのではなく、曲に合わせて探っているという説明でした。

歌の強さを考えるときには、一つの高音がどこまで出るかに目が向きがちです。
桜井が語っているのは、その瞬間だけでなく、最後まで自分の歌を届けるための判断です。
声を張る場所を選ぶことも、長いステージで声を使う技術の一部になっています。

歌詞の主人公を、自分の声で演じる

歌の世界へどう入るかについては、桜井自身がはっきりした考えを話しています。
2026年1月のReal Soundの取材では、高見沢から受け取った歌詞の主人公を演じる感覚で歌うと説明しました。
歌いやすさや難しさはあっても、まずその世界を自分なりに理解し、作品をよい形で表すことを重視しているのです。

この考え方を置くと、声の艶にも表現上の役割が見えてきます。
同じ強い声でも、主人公が誰かに呼びかけるのか、自分の内側で思いを抱くのかで、言葉の届け方は変わります。
桜井の歌を、本人の性格がそのまま出る声としてだけ捉えず、曲の人物を引き受ける声として聴く。
長く歌う代表曲にも、新しい歌にも共通する姿勢が、そこにあります。

細かく合わせた録音を、通して歌うライブへ

高見沢は2025年の取材で、曲のジャンルが変わっても、自分たちらしいコーラスをどう入れるかが大切だと語っています。
「HEART OF RAINBOW」のような激しい曲にも、3人の声を生かす場所が用意されるのです。
桜井には、主旋律を歌う力と、バンドの響きに加わる力の両方が求められます。

近年のTHE ALFEEでは、コーラスの録り方も変わっています。
坂崎によると、昔は3人で一緒に歌い、小さな音程や長さの違いを許容することもありました。
今は一人ずつ録ることで、より細かく合わせることが求められるそうです。

2026年1月の取材で桜井が挙げた課題も、録音とライブの違いでした。
アルバム『君が生きる意味』に収めた「孤独の太陽」のような難しい曲を、ベースを弾きながら通して歌うには、部分ごとに仕上げた録音から、もう一歩進む必要があります。
曲を繰り返し聴いて体へ入れ、全体を歌い切ることへ向かっていくのです。

音楽評論家の馬飼野元宏も、2024年のコラムで、桜井が安定したベースと歌を同時に担うことに注目しています。
弾くリズムと歌の旋律は同じ動きとは限らず、それぞれを進める難しさがあるという指摘です。

歌のフレーズが伸びている間にも、楽器は別の刻みを続けることがあります。
桜井のステージを考えるときには、声の伸びやかさと、その下を進むベースの動きを一緒に追うと、二つを担う仕事が見えやすくなります。

「孤独の太陽」公式配信音源(2025年のアルバム『君が生きる意味』収録)。

艶のある声を、どんな曲の、どの場所で生かすか。
仲間の声とどう重なり、長いライブの中でどう配分するか。
桜井の歌い方には、声そのものの魅力と、その声を必要なところへ届ける判断が結びついています。

ガーファンクルへの憧れからハードロックを歌い、歌い方を選び直してきた歩みは、桜井賢の歌唱変遷でたどっています。

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