ニンニンは、「Lingo」の導入を、メンバー同士が電話で話しているように始めると説明している。
歌声の高さに加え、話しかける調子や、声の質感をどう選ぶかも、その歌い方を知る手がかりになる。
本人の言葉、メンバーからの評価、公演の記録。
歌い出し、ラップ、ソロ、共演という異なる場面から、ニンニンの声の使い方を見ていきたい。
「Bored!」の公式本人カメラ映像(2024年ソウル公演/同年11月公開)。
本文で触れる2025年Kia Forum公演とは別の舞台です。
「Lingo」、メンバー同士の会話のように曲へ入る
「Lingo」は、2022年のミニアルバム『Girls』の収録曲だ。
NMEのインタビューで、ニンニンは、この曲の歌い始めを、メンバー同士が電話しているような感じと説明した。
そこから始まるため、秘密を分け合う女の子同士の会話のように感じられるという。
『Girls』の各曲について語るNMEの公式インタビュー(2022年公開)。
ここで曲の表情を作っているのは、誰かへ話しかけているような声の調子だ。
相手に向かって言葉を出す感覚を、歌の導入へ持ち込んでいる。
ニンニンの説明は、声をどんな場面のものとして使うかを示している。
この曲では、メンバー同士の会話という発想が、歌い出しの雰囲気につながっていた。
親しい相手に話すときと、大勢へ呼びかけるときでは、言葉を渡す距離感も変わる。
「Lingo」は、その距離感を歌の入口として捉えられる曲なのである。
こうした場面の想像は、録音前の準備にもある。
2021年のGRAMMY.comの取材で、ニンニンは、自分がどんな人物で、何が起き、どんな感情を抱いているのかを、映画の場面のように思い描いてから歌うと説明した。
音を出す前に、曲の中で言葉を発する人の気持ちをつかんでおくのだ。
歌い方を考えるとき、この順番は大切だろう。
声を柔らかくすることにも、強く出すことにも、その場面でそう歌う理由がある。
「Lingo」の会話という説明も、曲中の人物関係から声の調子を考える例として読むことができる。
高い裏声と低い声のお題で、メンバーが挙げた魅力
2025年のTeen Vogueの企画には、ジゼルとニンニンが歌う場面がある。
その場面のお題は、一方が高い裏声、もう一方が低い声で歌うというものだった。
そこでニンニンは、低い声も意外なほど上手だと、メンバーから紹介されている。
aespaが参加したTeen Vogueの公式企画映像(2025年公開)。
歌声の魅力を考えるとき、低い声での表現にも注目できる。
身近で一緒に歌うメンバーの評価が、その聴きどころを教えてくれる場面だ。
高く張る声が目立つ曲を入口にした人も、低い箇所でどんな表情になるかに耳を向けると、印象は変わるだろう。
声の高低は、出せる音の幅であると同時に、曲の中で違う表情を作るための選択肢にもなる。
「Jingle Bell Rock」で見せる、力の抜けたラップ
言葉を話すように運ぶ魅力は、ラップでも取り上げられている。
ニンニンは2021年のVogue Singaporeの取材で、長く歌ってきたことに加え、ヒップホップのダンスが好きで、ラップにも取り組んでいると話していた。
歌い手としての経験に、ダンスやラップへの関心も重ねていたのである。
その一例が、aespaによる2023年の「Jingle Bell Rock」だ。
GRAMMY.comのGlenn Rowleyは、このカバーでジゼルとニンニンが加えたラップを、ゆったりとして肩の力が抜けたものとして紹介している。
手拍子やトイピアノを含む伴奏の中で、言葉を気軽に投げるような二人のパートに注目した評だ。
ここで聴きどころになるのは、長く伸ばす高音とは違う、短い言葉の連なりである。
旋律を大きく歌い上げる箇所と、言葉をリズムへ置く箇所では、声が担う仕事も変わる。
この曲の評は、ニンニンの軽やかさを、声の高さだけでなく言葉の運びから考える具体例になっている。

画像出典:画像掲載元
「Bored!」、声の質感を抑えた表現へ
声の質感については、「Bored!」の公演評が具体的だ。
2025年、Kia Forumでのニンニンを取材したK-Pop ConcertsのKatie D.は、その歌声をエアリーと表現している。
空気を感じさせる、軽い質感を指す言葉だ。
この評からは、力強く声を出すことに加え、軽い質感を残すことも、一曲を聴かせる手段になっていると分かる。
「Because Of You」、相手の声と並んだときのバランス
別の歌い手と組むと、声の魅力は二人の関係の中にも現れる。
2024年、SHINeeのミンホのアルバム『CALL BACK』で、ニンニンは「Because Of You」に参加した。
発売時の記者会見を取材したスタートゥデイによると、ミンホは、ニンニンとのボーカルのバランスがとてもよく合ったと話している。
相手の歌声との相性を、共演した本人の言葉から知ることができる。
録音時の話にも、その距離感が表れている。
ミンホは同じ会見で、ニンニンの録音と自分の別の録音の日が重なったが、負担を感じさせたくなくて彼女の録音室には入らず、終わってから挨拶したと振り返った。
一緒の部屋で同時に歌ったという話ではなく、それぞれに録音した声を合わせた結果への評価だったのである。
この言葉から分かるのは、共演相手が、二人の声を並べたときの釣り合いを評価していたことだ。
一人の声の強さや高さに加え、相手が歌った後をどう引き継ぐか、二人でどんな印象の一曲を作るかにも注目できる。
「Bored!」のように自分だけで一曲を担うソロと、「Because Of You」のように相手の声がある曲とでは、ニンニンの声を聴く視点も変わってくる。
ピアノと声だけの歌で、何を伝えるか
伴奏が少ない曲での表現を考える材料もある。
2026年のGQ Koreaの取材では、高校の卒業作品として作った歌が話題になった。
取材者は、ピアノとニンニンの声だけで、豊かな印象を受けたと伝えている。
本人によると、使ったコードは簡単なもので、短時間で歌詞を書き、録音した作品だったという。
この話では、複雑な伴奏を重ねることより、限られた音の中に声を置くことが、歌の印象を生んでいる。
大きな舞台の強い歌声とは別の条件でも、声と歌詞が聞き手に情景を届けていたのだ。
同じ取材でニンニンは、ロサンゼルスで音楽を作っていたとき、その日の感情をメロディや歌詞に入れようとしていたとも話している。
声の質感を選ぶことと、その声に乗せる感情を見つけることは、彼女にとって近いところにあるのだろう。
抑えた歌を聴くときにも、音量の小ささだけでなく、どんな気持ちが言葉に込められているのかに耳を向けたい。
会話のような導入、低い声に寄せられた評価、ソロで評されたエアリーな質感。
ニンニンの歌い方は、声の高さと、その声をどういう調子で届けるかを合わせて考えると、見えるものが増える。
多様な歌を歌う中で、自分の表現をどう探してきたかは、ニンニンの歌唱変遷でたどっている。

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