尾崎匠海(INI)の歌声の変遷|ハスキーな声への迷いから、自分の表現を探る歌へ

尾崎匠海(2025年掲載の写真) シンガー
尾崎匠海(2025年掲載の写真)

INIの尾崎匠海は、自分のハスキーな声を、曲の中でどう生かすかを考えてきた。
メンバーの高音への憧れを語った2023年から、一人で作るステージ、藤牧京介とのデュエットへ。
自分の声を認めることと、その声で何を伝えるかを決めることは、少しずつ重なってきた。

高音への憧れと、自分の声への迷い

2023年10月のQJWebの取材で、尾崎は、自分のハスキーな声質をあまり好きではなかった時期があると明かしている。
個性だとは思っていても、楽曲で十分に生かせているのか、自信を持てなかったという。

その背景には、INIの曲にはもっと突き抜ける高音が必要だという思いがあった。
藤牧京介や髙塚大夢のハイトーンに憧れ、自分も同じような声にならなければ、と考えたこともあったそうだ。
グループの中で歌うからこそ、自分の声をどう位置づけるかという迷いがあった。

ただ、この取材では、少しハスキーな自分のトーンも大事にしたいという思いを語っている。
自分にしか出せない声でも、いろいろな楽曲の魅力を伝えられるのではないか、と考えられるようになっていた。
声の個性を受け止めることが、次の表現を探る出発点になっている。

歌うときは、尾崎匠海自身の表現になる

では、その声で表すのは誰なのか。
俳優としても活動する尾崎は、2024年にCUTが公開した取材の抜粋で、演じることと歌うことの違いを説明している。
芝居では、別の職業について調べ、その人物になっていく。
一方、歌を届けるときには、尾崎匠海が自分自身を表現している感覚があるという。

声質を大切にするという話が、声の出し方だけで終わっていない点が興味深い。
どんな曲でも、歌っている自分が何を感じ、どう届けたいのかが残る。
他人の声を目指すところから、自分が表すものを考えるところへ、歌に向き合う視点が広がっている。

初ソロステージで、好きなものと伝えたい思いを見せる

2025年1月29日、初のソロステージ『CAFE』を開いた。
ORICON NEWSの公演レポートでは、「Don’t Worry」でダンサーと踊る姿に加え、コーヒーをいれる場面や、ファンからのリクエストに応える企画も紹介されている。
リクエストで最も多かったOmoinotakeの「幾億光年」も歌った。
自分の曲を聴かせることと、客席の好きな歌を受け取ることが、一つの公演に入っていた。

尾崎匠海「Don’t Worry」(2025年)の公式音源。

最後に選んだのは、デビュー後初めて自ら作詞・作曲した「幻想」だった。
つらい時期に音楽に支えられた自身の経験から、今度は誰かの支えになりたいという思いを込めた曲だと説明している。
自分らしい声を見つけるだけでなく、その声で人に手渡したいものを、自作曲として形にしていた。

尾崎匠海「幻想」(2025年)の公式公開映像。

ただ、一人でステージを作った経験は、自信だけをもたらしたわけではない。
同年のReal Soundの取材では、普段のINIでは11人で補い合っていることに気づき、自分の良いところも課題も見えたと振り返っている。
ソロは、グループで歌う自分を見直す機会にもなったのである。

尾崎匠海(2025年「CAFE」公演)。
尾崎匠海(2025年「CAFE」公演)。
©LAPONE ENTERTAINMENT
画像出典:ORICON NEWS

「Unrequited Love」で、細かなニュアンスを試す

2025年、藤牧京介とのオリジナル曲「Unrequited Love」を発表した。
HYの仲宗根泉が作詞・作曲を手がけたバラードだ。

尾崎匠海&藤牧京介(INI)「Unrequited Love」(2025年)の公式音源。

ORICON NEWSの取材で尾崎は、スローな曲だからこそ歌唱が際立ち、難易度も高いと話している。
特にAメロやBメロでは、わずかなニュアンスによって曲の雰囲気が変わるため、二人で試行錯誤しながら歌ったという。
同じメロディーを歌う中でも、どう表情を付けるかを細かく探る制作だった。

Bezzyの対談では、録音する区切りの違いにも触れている。
INIでは短いフレーズごとに歌うのに対し、今回はAメロ、Bメロと長めのまとまりで録ったという。
久しぶりの録り方で、十分に歌った実感があったそうだ。
短い担当箇所で色を出すことに加え、少し長い流れの中で歌をつなぐ経験になっている。

尾崎匠海(左)と藤牧京介(2025年掲載の写真)
尾崎匠海(左)と藤牧京介(2025年掲載の写真)。
画像出典:画像掲載元

自分の歌い方を保ち、相手からも学ぶ

このとき尾崎は、藤牧の声をそのまままねするのではなく、自分のスタイルを貫いているとも語っている。
一方で、藤牧のミックスへのつなぎ方や、バラードの歌い方から学ぶこともあると話していた。
自分の声を大切にすることと、相手の表現から学ぶことが、一緒に進んでいる。

それでも、迷いがすべてなくなったわけではない。
2025年のWEBザテレビジョンの取材では、歌いたい表現と、INIの楽曲に合う表現の間で葛藤していると話している。

かつての高音への憧れから、ソロで伝える思い、二人で磨くニュアンスへ。
自分の声を大切にしながらも、そのままで満足せず、曲ごとに使い方を探し続けている。
尾崎の変化は、別の声になることより、自分の声で引き受ける表現が増えてきたところにある。

裏声の音量感や、曲の中での感情の強弱は、尾崎匠海(INI)の歌い方でも見ていきたい。

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