KAIRYU(MAZZEL)の歌い方|言葉を置く間合いと、曲の終わりを彩るフェイク

MAZZEL(2024年、KAIRYUは下段左) KAIRYU(MAZZEL)
MAZZEL(2024年、KAIRYUは下段左)

KAIRYUの歌を聴くときは、声が言葉を置くタイミングと、旋律に加える変化に注目してみると、その持ち味をたどりやすくなります。
「First Love」のカバーと、MAZZELの「Seaside Story」を手がかりに、歌の間合いや終わり方を見ていきます。

「MAZZEL COLOR」での「First Love」カバー(2024年)。

言葉を少し後ろに置き、フレーズに余白を作る

KAIRYUが「MAZZEL COLOR」で披露した宇多田ヒカルの「First Love」について、音楽ライターの高橋梓は、言葉を少し後ろに置く歌い方に注目しています。
Aメロやサビの一部で、メロディーに対して言葉を後ろへ置くことで、リズムを詰め込みすぎず、余白が生まれているという指摘です。

こうした歌を聴くときの手がかりになるのが、伴奏の流れと、声が言葉に入る瞬間の関係です。
言葉の間合いによって、一つのフレーズが持つ表情も変わります。
このカバーでは、言葉がどのタイミングで届くのかに耳を向けると、歌の奥行きを捉えやすくなるでしょう。

自分で録って聴き、歌い方を探す

こうした歌の表情は、どのように作られているのでしょうか。
2026年のQJWebでKAIRYUが明かしたのは、気に入った歌を自分で歌い、携帯電話のボイスメモへ録音するという取り組みでした。
うまくいかなければ、どう変えるとよくなるかを試し続け、その中から自分らしい歌を見つけてきたと話しています。

出発点にあるのは、よい歌と出会ったとき、それを自分が歌ったらどんなふうに聴こえるだろう、という関心です。
原曲を好きになることから、実際に自分の声で確かめる段階へ進んでいます。
自分では歌えたつもりでも、録音を聴くと違って感じる部分がある。
その差を放置せず、次の歌い方を探してきたのです。

この方法なら、言葉を置く位置や語尾の残し方も、歌っている最中の感覚だけで決めずに振り返れます。
本人の話は、細かな表現が持って生まれた声だけで決まるものではなく、歌い、聴き直す過程でも育つことを教えてくれます。
カバーを聴くときにも、原曲に対して自分の声をどう生かすかという選択に注目したくなります。

「Seaside Story」の終わりに加えたフェイク

KAIRYU自身も、ライブでは歌にアレンジを加えることが多いと話しています。
2024年のインタビューで、その工夫を録音にも残せた例として挙げていたのが、「Seaside Story」でした。

この曲では、アウトロ、つまり曲の終わりの部分にフェイクを入れています。
フェイクは、旋律に変化や装飾を加える歌い方のことです。
本人によると、そのパートは、レコーディング中に急遽加えたものでした。
こうした歌を音源として残せたことを、嬉しく感じていたと語っています。

「Seaside Story」(2024年)のMV。

KAIRYUは、子どもの頃から親しんできたブラックミュージックが、自分の歌唱スタイルに影響しているとも説明しています。
その背景を踏まえつつ、カバーでは言葉の置き方、「Seaside Story」では終わりに加えた旋律の変化を聴くと、声でフレーズを形づくる面白さが見えてきます。

KAIRYU(2026年)
KAIRYU(2026年)。
画像出典:画像掲載元

得意なR&Bを、仲間との歌へ広げる

R&Bとの関係がより具体的にわかるのが、RAN、TAKUTOと歌う「I’m yours, You’re mine」です。
2025年のananで、KAIRYUは以前からやりたかった音楽に挑戦でき、録音も楽しかったと語っています。
長く聴いてきた音楽だからこそ、この曲では自信を持って臨めたのでした。

一方、この種類の曲に慣れていないRANが苦戦する姿を見て、自分から助言できればと考えたそうです。
普段はダンスを教わることもある相手に、歌では自分の経験を返していく。
歌い方の好みが個人の特徴にとどまらず、ユニットの表現を支えるものにもなっています。

同じ取材で「J.O.K.E.R.」については、歌詞やダンスの勢いに加え、歌い方にも魂が乗る曲として語っていました。
慣れ親しんだR&Bの心地よさと、勢いを前へ出す楽曲の新鮮さ。
得意な方向を持ちながら、違う曲が求める表情も楽しんでいることが伝わります。

「Only You」では、自分らしい声も大切にする

バラード「Only You」の録音について、KAIRYUはUSENのencoreで、曲へ寄せすぎず、SKY-HIと相談しながら自分らしく歌えたと話しています。
期待していたバラードが届いた喜びと、自分の声をその中へ置く心地よさの両方があったといいます。
曲の雰囲気を受け止めつつ、歌い手としての個性も残す姿勢です。

また、KAIRYUはこの曲を通して、メンバーの性格やキャラクターが声色に表れることを実感していました。
歌声だけからでも、その人らしさが伝わってくるという本人の感想です。
全員が同じ声に近づくことより、それぞれの声で歌い継ぐ意味を感じているのでしょう。

共演するSEITOが注目したのは、曲の最後にNAOYAからKAIRYUへ歌が渡る部分でした。
一人のフレーズを聴くときに加え、声が交代する瞬間も、この曲の聴きどころになります。
余韻を残す歌が、次の人の歌とどうつながるか。
KAIRYUの表現は、単独のカバーとグループの楽曲で、違った役割を持っています。

自分の録音を、グループの歌の出発点にする

『Parade』の制作時には、ほかのメンバーの録音にも立ち会っていました。
2024年のTOKYO FMの番組では、自分の持つ音楽の知識を生かし、ブースで仲間の歌を支えたことを振り返っています。
EIKIも、隣にKAIRYUがいてくれた録音の中で成長を感じたと話していました。

当時の録音順は、おおむねKAIRYUから始まり、ボーカルを担うメンバー、ラップを担うことの多いメンバーへ進んでいたそうです。
先頭を任されることに過度な気負いはなく、よい音源にする意欲を持って臨めるのが嬉しい、と本人は受け止めていました。
自分のパートを仕上げることと、全体の歌をよくすることが、同じ制作の中にあります。

「First Love」での言葉の間合い、「Seaside Story」のフェイク、「Only You」での声の受け渡し。
それぞれを聴き比べると、歌の装飾を増やすことだけがKAIRYUの持ち味ではないとわかります。
どこで余白を作り、どこで旋律を動かし、どんな声を次の人へつなぐかという違いを楽しめるのです。

「MISSION」の再録で、その時点の歌い方を音源へ持ち込んだ経緯は、KAIRYU(MAZZEL)の歌唱変遷で取り上げています。

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