甲斐田晴は、弾き語りやカバーを届ける活動から、オリジナル曲を歌うソロ活動へと歩みを広げてきた。
VΔLZでは仲間と歌の意図を確かめ合い、ソロでは作家とともに一曲の声を作っている。
収録の具体例と初ワンマンをたどり、その表情が広がる過程を見ていきたい。
弾き語りを重ねた活動から、オリジナル曲へ
2023年のReal Soundの記事は、活動当初から歌の配信やカバー動画を続け、ギターや鍵盤を使って弾き語りをしていた姿を紹介している。
楽器とともに歌を届けることが、早くから活動の一部になっていた。
2022年5月6日の3Dお披露目配信では、「透明な心臓が泣いていた」を披露し、翌日にデジタルリリースした。
この曲からソロのオリジナル作品を発表する活動が始まっている。
同年10月には『86400秒のキセキ』を届け、歌う曲を自分の作品として重ねていった。
弾き語りで親しまれてきた歌い手に、自身の楽曲を持つシンガーとしての歩みが加わった時期である。
後のワンマンライブでも、出発点の「透明な心臓が泣いていた」が歌われることになる。
甲斐田晴「透明な心臓が泣いていた」(2022年)の公式アニメーションMV。
高いハーモニーでも、力強さを出したかった
2024年のVΔLZ『三華の樂』では、高い声にどんな表情を持たせるかを考えていた。
Real Soundの取材で、「ムーンウォーカーズ」のサビの上ハーモニーは、ファルセットでは欲しい力強さが出ず、苦労しながら地声で歌ったと振り返っている。
VΔLZ「ムーンウォーカーズ」(2024年)の公式音源。
同作の「ブリキの魂」は、三人が互いに歌をディレクションして収録した。
長尾景によると、甲斐田も言葉のニュアンスを伝える役割を担っていた。
自分の声を選ぶことに加え、仲間と歌の意図を確かめ合う制作でもある。
VΔLZ「ブリキの魂」(2024年)の公式MV。
『MAGIC』で、作家とともに一曲の声を作る
2025年6月に発表した『MAGIC』は、音楽の魔法を軸に甲斐田自身がプロデュースし、堀江晶太も共同プロデュースで参加した作品だ。
このアルバムには、歌い手と作り手の関係が見える具体例がある。
「独白」を提供したヒトリエのゆーまおは、依頼を受けた段階から、イガラシの旋律が甲斐田に合うと考えていたという。
完成した曲についても、歌がよく馴染んだと公式コメントで評価している。
歌手の持ち味を見越して生まれた旋律に、甲斐田が声で応えた例として受け取れる。
「始まりの理由を」を手がけた白神真志朗は、楽曲提供からレコーディングまで関わり、音や言葉、声の細部に甲斐田と気持ちを込めたと伝えている。
ここでは、作家とのやり取りが録音まで続いていたことが分かる。
グループで互いに表現を確かめ合う経験とともに、ソロでも共作者と歌を仕上げる過程を重ねていた。
甲斐田晴「始まりの理由を」(2025年)の公式MV。

©ANYCOLOR, Inc.
画像出典:ANYCOLOR公式発表
ソロでは、声色を次々に変える曲にも挑む
2026年4月発売の『WEATHER』には、「アイスブレイクブレイカー」が収録された。
作詞・作曲の安部大希は、公式コメントで、音程や声色が目まぐるしく変わる難しい曲になったと説明している。
歌いこなせるか心配したものの、甲斐田の歌唱に感服したという。
歌とセリフ、かっこよさとひょうきんさを行き来する声が、この曲での見どころとして挙げられている。
一曲の中で声の表情を次々に変える歌唱が、ここでは具体的な作品として形になっている。
甲斐田晴「アイスブレイクブレイカー」(2026年)の公式アニメーションMV。
初ワンマンで見せた、感情を前に出す歌
2026年7月29日には、東京国際フォーラム ホールAで初ワンマンライブ「-足跡-」を開催した。
PANORAの公演レポートで、草野虹は、それまでに見ていた活動からの印象が変わるほど、泥臭く、力のこもった歌唱だったと記している。

画像出典:画像掲載元
終盤の「透明な心臓が泣いていた」でも、声を荒らげ、感情をぶつけるように歌う姿が報告されている。
録音で選び取ってきた声の表情に加え、観客の前で気持ちを前面に出す歌唱が、初ワンマンを印象づけた。
ソロ活動の入口だった曲が、この公演では最後に置かれている。
最初の作品を歌い続けながら、その場の観客へ感情を向ける。
新しい楽曲が増えることと、出発点の曲がライブで新たな意味を持つことの両方が、この歩みにはある。
高音での声の選択や、ロングトーンの母音への意識は、甲斐田晴の歌い方でも見ていきたい。







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