三枝明那の歌声の変遷|激しい曲に苦戦した出発点と、録音で磨いてきた歌

三枝明那(初ソロライブ「Unity」の公式ビジュアル) シンガー
三枝明那(初ソロライブ「Unity」の公式ビジュアル)

三枝明那は、Rain Dropsの初期、激しい曲に声を埋もれさせないよう、必死に歌っていたと振り返っています。
その後は、仲間の歌を聴いて自分の歌い方を考え、低い旋律や初めてのラップにも挑戦しました。
録音のたびに技術が上がるという実感は、どんな経験から生まれたのでしょうか。
初ソロミニアルバムで、複雑なメロディーを託した作曲者から評価されるまでをたどります。

『UniVerse』収録「アナザーシェード」(2024年)の公式音源。

「VOLTAGE」で、楽器に負けない歌を目指す

2020年5月、にじさんじのライバー6人によるRain Dropsが、ミニアルバム『シナスタジア』でメジャーデビューしました。
三枝は当時、元気さや全力で取り組むこと、大きな声を自分の持ち味として挙げています。
ただ、ユニットに選ばれた際には、自分でよいのかという思いもあり、選んでもらった以上、できることを精一杯やろうと考えていました。

リード曲の「VOLTAGE」は、歌い慣れない激しい楽曲でした。
本人が意識したのは、楽器の中に自分の歌が埋もれないようにすることです。
必死に歌い、完成した曲には、力強く、聴き応えのあるものになったと手応えを感じていました。

元気な声を自分の持ち味としていても、それを激しい曲の中で生かすことには、新たな難しさがあった。
三枝の出発点には、そんな挑戦がありました。

Rain Drops「VOLTAGE」(2020年)のMV。

自分の歌で精一杯だった録音から、仲間へ寄り添う録音へ

同年11月の『オントロジー』では、録音中に考えられることが変わっていきます。
前作では、自分のことで精一杯だったと、三枝は取材で振り返っています。
今度は、ほかのメンバーの歌を聴き、その歌い方に寄り添ってみようと思えるようになったのです。

緑仙が語ったのは、三枝と自分の録音が終わったあとも残り、ジョー・力一の収録を聴いていたという出来事でした。
仲間の収録を聴きながら、曲が仕上がっていく時間も楽しんでいました。
三枝自身も、曲の完成度を上げるにはどう歌えばよいかを、考えられるようになったと話しています。

声を前に出すことへ懸命だった初期に比べ、歌を考える範囲が、自分のパートから曲全体へ広がっていました。
他の人がどう歌うかを受け取り、自分の歌い方を選ぶ。
6人で歌うことが、三枝に新しい判断を求めていたのです。

「雨言葉」では、低い旋律をそのまま歌うことに迷う

『オントロジー』の挑戦は、激しい曲ばかりではありません。
じんが手がけた「雨言葉」について、三枝はBメロが低く、そのままでよいのか迷ったと話しています。
相談のうえ、最終的には、その低い旋律をそのまま歌いました。

この取材で三枝が気づいたというのが、アルバムの曲ごとに、リズムの取り方が違うことでした。
録音を終えてから、プロデューサーがずいぶん挑戦的なことを求めていたのだと感じたそうです。
声を強く出せれば、どの曲にも対応できるという作品ではなかったのです。

低い部分をどう扱うか、曲の流れへどう乗るか。
一曲ごとに異なる課題に向き合う経験が、録音の中で重なっていきました。

Rain Drops「雨言葉」(2020年)のMV。

三枝明那(2024年インタビュー掲載の公式キャラクター画像)
三枝明那(2024年インタビュー掲載の公式キャラクター画像)。
画像出典:画像掲載元

『バイオグラフィ』では、初めてのラップにも向き合う

2021年の『バイオグラフィ』制作時、三枝は、経験のないタイプの曲を録るたびに技術が上がり、今回は特にその実感が強かったと話しています。
リード曲「エンターテイナー」の難しさについては、6人のメインボーカルがいるからこそ表現できる曲だと捉えていました。

Rain Drops「エンターテイナー」(2021年)のMV。

三枝、緑仙、ジョー・力一の3人で歌う「ブギーマン」では、初めてラップに挑戦します。
まず知人にラップについて聞き、流行している曲や国内外の音源を聴くところから始めました。
そのうえで、誰かのまねをするより、自分らしく歌えばよいのではないか、というところにたどり着いたといいます。

『バイオグラフィ』収録「ブギーマン」(2021年)の公式音源。

実際に試してみると楽しく、また挑戦したいと思えたという話でした。
新しい歌い方を知り、自分に合う形を探すことが、次に歌う意欲にもつながっていました。

『バイオグラフィ』(2021年)の全曲試聴映像。

ソロ作品で、難しいメロディーを歌として仕上げる

2024年9月には、初ソロミニアルバム『UniVerse』を発表します。
収録曲「アナザーシェード」の作詞・作曲・編曲を担当した⌘ハイノミは、早口で複雑なメロディーを作ったため、人が歌えるのかというところから、三枝と相談したそうです。

それでも録音後には、その歌い上げ方をほぼ完璧と評し、歌い手としての力に感心したとコメントしています。
本人が録音の積み重ねによる成長を実感していた歩みに、今度は曲を託した作り手の評価が重なりました。

三枝明那(『UniVerse』初回生産限定盤Bの公式ジャケット)。
三枝明那(『UniVerse』初回生産限定盤Bの公式ジャケット)。
画像出典:にじさんじ公式サイト

「VOLTAGE」で声を届かせようと必死だったところから、仲間の歌に寄り添い、低い旋律や未知のラップにも向き合うようになった。
難しい歌と出合うたび、歌うための考え方や選択肢が増えていったことが、取材の言葉から見えてきます。
三枝明那の変遷は、大きな声や勢いだけで説明するより、曲ごとに違う課題を引き受けてきた過程として見ると、より具体的になります。
録音でどんな感情を残すかという選択は、「Funeral」を扱う三枝明那の歌い方で取り上げています。

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