Moni(Chilli Beans.)の歌い方|「fu uh」の言葉のないサビと、「rose」の声の掛け合い

Moni(Moto名義で活動していた2024年/「Real Sound」掲載写真) Moni(Chilli Beans.)
Moni(Moto名義で活動していた2024年/「Real Sound」掲載写真)

Chilli Beans.のMoni(旧名義Moto)は、歌詞を発音して伝える場面だけでなく、言葉を置かずに声で表すサビも歌います。
「fu uh」では鼻歌のイメージを生かし、「rose feat. Vaundy」では、違う個性を持つ声と掛け合う。
曲ごとに声が担う役割から、歌い方を考えます。

「fu uh」(2024年)のリリック映像。

「fu uh」は、サビを言葉で埋めない

2024年9月の「fu uh」は、鼻歌をイメージしてタイトルがつけられた曲です。
サビに言葉を置かないのは、言葉がないほうが伝わることもある、という思いからだと、リリース時に説明されていました。

言葉の細かな意味を歌う場面と違い、このサビでは、声でメロディを運ぶこと自体が表現の中心になります。

「lemonade」は、クールに寄りすぎない歌を選ぶ

言葉のある歌でも、Moniは曲調と声の距離を考えています。
2021年のRolling Stone Japanで「lemonade」の歌い方を聞かれたときは、ポップな曲なので、クールに傾きすぎない歌を目指したと話していました。
ただ格好よく歌うというより、曲が持つ明るさとの釣り合いを取る考え方です。

同じ取材でLilyが好きだと挙げたのは、高音に加え、中音域の少しふわっとした声でした。
張りのある見せ場だけでなく、柔らかな質感が残る高さにも、メンバーが感じる魅力があります。
Moniの声を聴くときには、力強さが増す瞬間とともに、その手前の表情にも耳を向けたくなります。

この取材では、バンドのコーラスが30トラックを超える場合もあると、Maikaが説明していました。
ハモリはMaikaを中心に組み立てており、Moniが一人で全声部を歌うという話ではありません。
前に出る歌と、三人で重ねる声を分けて聴くと、Moniの歌が周囲の声にどう支えられているかも考えやすくなります。

「rose」は、違う声の個性を掛け合わせる

2023年の「rose feat. Vaundy」について、Maikaは、大人っぽいバンドサウンドに対して、ボーカルはポップだと話しています。
Moniのかわいらしい声と、Vaundyの妖艶な声が合った、というメンバーからの捉え方でした。

二人の声の個性を生かしたいという狙いがあり、Maikaは、お互いのボーカルの良さを引き出せる曲にしたかったと説明しています。
Moni自身も、初めてVaundyと掛け合ったことを、面白く、新鮮な体験だったと振り返っていました。

Real Soundの別の取材では、その作り方も本人が説明しています。
Vaundyが歌う部分はVaundy自身が考え、Moniの部分は自分で入れていったといいます。
曲がセッションのような性格を持つ一方、歌には、かわいらしさと少しあやしい雰囲気を組み合わせると面白いのではないか、と考えていました。

サビのメロディーは、一緒に考えている場でVaundyが加えたものだったそうです。
自分なら選ばないかもしれない形が入り、耳に残りやすいものになったと、Moniは振り返っています。
声質の異なる二人を並べただけでなく、歌う部分の発想にも、それぞれの個性が持ち込まれていたのです。

「rose feat. Vaundy」(2023年)のMV。

「wonderland」は、つぶやきが届く音数にする

声の親密さは、歌い手の出し方だけで決まるものではありません。
『Welcome to My Castle』についての2023年のReal Soundの取材で、Moniは「wonderland」を、思ったことをそのままつぶやくような曲にしたかったと説明しています。
ドラムから作り始め、音数を少なくし、温かい雰囲気へまとめた曲でした。

取材者が、独り言というより相手へ語りかけるような親密さを指摘すると、Moniは、力を抜いて聴こえてきたものを大切にした結果なのかもしれないと答えています。
強く歌って相手を引き寄せる方法とは違う、音を詰めすぎずに届ける方向です。
ここでの力を抜くという言葉は、本人が語る制作の感覚として捉えるとよいでしょう。

同じ作品の「My life is saikooo」では、制作当時によく聴いていたヒップホップの言葉遊びを、歌詞やサウンドへ取り入れたと話しています。
言葉を置かない「fu uh」と、言葉の遊びを生かすこの曲では、声に任せる役割が変わります。
歌詞の意味、言葉の響き、言葉のないメロディーを、曲に合わせて使い分ける発想があります。

Moni(Moto名義で活動していた2022年/「Billboard JAPAN」掲載写真)
Moni(Moto名義で活動していた2022年/「Billboard JAPAN」掲載写真)。
画像出典:画像掲載元

「breath」では、かわいらしさより言葉の強さへ

親密で柔らかい表現が、そのまますべての曲の正解になるわけではありません。
2026年の「breath」について、MoniはNiEWで、ドラマの台本から暗さや重さ、苦しみの中へ光が差す感覚を受け取ったと話しています。
制作側から、かわいらしさを求めないという要望もあり、本人はそれをうれしく感じたといいます。

シビアなものを表現するため、音をたくさん並べるよりも、言葉の強さや一つずつの音が聴こえる編曲がよいと考えたそうです。
「wonderland」と同じく音数を抑える方向でも、こちらは温かいつぶやきではなく、重い内容を伝えるための選択でした。
伴奏が少ないという共通点だけで、同じ歌い方だと捉えないことが大切です。

「rose」でメンバーが評価したかわいらしい声も、Moniの一面です。
その声をいつも前面に出すのでなく、曲の背景に応じて、別の表情が必要になる。
「breath」の制作意図は、Moniが声を使う場面を決める基準を具体的に教えてくれます。

仲間の曲へ、自分の表現を足していく

他の人の作った曲を歌うときにも、Moniなりの入り方があります。
2026年の『HONESTY』の取材では、自分だけの世界から表現するより、誰かのイメージを受け取り、そこへ自分の色を加えるほうがやりやすいと気づいたことを話しています。
メンバー二人の曲は自分の気持ちそのものではなくても、よくわかると感じていたのです。

そのイメージと自分の表現が重なることを、楽しく、自信を持ってできると語っていました。
歌詞を書いた人と歌う人が違っても、内容を他人事として扱うのではなく、共感できる部分から自分の声へ移していく。
「rose」の掛け合いとは違う形でも、相手の発想がMoniの歌を動かしています。

好きな歌を、楽器と一緒に試してきた

こうした歌の背景には、弾き語りを通じて音楽に触れてきた経験もあります。
2023年のFenderNewsでMoniは、YUIの歌詞や歌い方に惹かれ、ギターを始めたと話しています。
練習では、プリティー・レックレスの弾き語り映像を見て弾いており、歌いながら演奏するのが好きだとも説明していました。

また、好きな曲を流し、そのリズムに合わせて繰り返し弾くこともしていたといいます。
歌と伴奏のリズムを一緒に感じながら音楽を身につけてきた姿が伝わります。
声の質感だけでなく、伴奏の中へどう言葉やメロディーを置くかも、Moniの歌を聴く楽しみの一つです。
歌い方を一つに絞るか迷っていた時期から、録音した声を近くに届けようとした歩みは、Moni(Chilli Beans.)の歌唱変遷でたどっています。

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