Charaの歌を特徴づける、息を含んだ甘い声。
あの声を出すために、本人が大切にしているのは、ただ小さく歌うことではありません。
声が細いだけでは、伴奏の中で存在感を失ってしまう。
だから、ささやくような声にも、しっかり鳴る声を組み合わせる必要があると話しています。
そっと近づいてくる感じと、気持ちを押し出す強さ。
Charaの歌い方を面白くしているのは、その両方を一人で出せることです。
「やさしい気持ち」の甘い声を知ったあとに、本人がどんなふうに歌を作り、声を使っているかを知ると、ささやき声という説明だけでは足りなくなります。
夜中のデモ作りから生まれた声
Charaは最初から、個性的な歌手になろうとして声を作ったわけではありませんでした。
もともとは楽器や曲作りに関心があり、自分で作った曲に、自分の声を入れてデモを録っていました。
誰かが歌っている曲のまねではなく、まだ誰も歌っていないメロディーに、初めて声を付ける作業です。
その時間が夜中だったことも、歌い方に関わっています。
ヘッドホンを着けて小さく歌っていたので、ささやくような声が多くなったと本人は振り返っています。
最初の頃は、自分の歌を人に聴かせることも、録音している姿を見られることも恥ずかしかったそうです。
声を張って、遠くの客席まで届けるところから始まった歌ではなかった。
自分の部屋で、自分の作った曲を歌う。
あの親密な歌声には、そんな出発点があります。
ただし、夜中に小さく歌っていたという話と、現在のステージで小さな声だけを使っているという話は別です。
人前で歌い、バンドの演奏と合わせるようになったCharaは、声の出し方を増やしていきました。
一曲の中に、いくつもの声がある
Charaは、自分の歌の中で、ウィスパー、ミドル、ストロングという声を使い分けていると説明しています。
ささやくような声と、強く鳴らす声、そしてその間の声。
一曲を同じ声色で通すのではなく、それぞれの割合を変えながら行き来する歌い方です。
本人にとっても、その切り替えは簡単なことではありません。
メロディーを先に作り、その音を自分の体でどう表すかを繰り返すうちに、自分らしい歌い方になったと話しています。
先に決まった歌唱法があって、そこに曲を合わせてきたわけではないのです。
息を含んだ声は、Charaが使う声の一つです。
ささやく声を使う場所もあれば、声をはっきり鳴らす場所もある。
その変化によって、甘えるような気持ちから、切実な願いや強気な気持ちまで、一曲の中で表せます。
「やさしい気持ち」でも、歌の中の女性は、ただ静かに相手を待っているわけではありません。
手をつないでいたいと願い、自分を受け止めてほしいと求めています。
やわらかい声であっても、歌っている気持ちまで弱いとは限らない。
声の甘さと、言いたいことの強さを一緒に楽しめるところが、この曲の魅力です。
ささやきから強い声まで、マイクで拾う

声を使い分けるCharaにとって、マイク選びも歌と切り離せません。
小さな息遣いを拾えても、途中から強くなる声をうまく捉えられなければ、せっかくの変化が伝わりにくくなります。
本人はマイクについて話す際、ささやく歌い方にも、チェストボイスが必要だと説明しています。
ここで求めているのは、息の音だけが目立つ細い声ではなく、演奏と重なっても歌として存在できる声です。
ささやきから、はっきりした声へ近づく変化を拾えることを、機材を選ぶ理由にも挙げています。
ライブでは別の難しさもあります。
繊細な音を拾うマイクは、周囲の楽器の音も拾いやすい。
歌だけを考えればよいわけではなく、演奏やコーラスとの混ざり方まで含めて、舞台全体の音を考える必要があります。
聴き手には、Charaがその場で自然に歌っているように届く。
でも、その自然さを届けるために、本人は声だけでなく、声を拾う道具のことも考えています。
力を抜いているように感じる歌にも、細かな選択があるのです。
歌詞も、声に出してから決まる
この声へのこだわりは、歌詞の作り方にも表れます。
Charaは、紙や画面の上ではよく見えた言葉でも、実際に歌ってみると、自分の声に合わないことがあると話しています。
息継ぎが難しかったり、決めた長さの中では言い切れなかったりして、そこから言葉を直すこともあります。
意味が通っていれば、歌として完成するわけではない。
その言葉を自分の声で歌ったとき、気持ちよく鳴るかどうかも確かめているのです。
Charaの独特な言い回しには、文章として考えた結果だけでなく、声に出した結果も含まれています。
だから、あの歌声は、どんな歌詞にも同じようにかぶせられる飾りではありません。
メロディーと言葉を歌ってみて、声を変え、ときには言葉のほうも変える。
そうして作られた曲だからこそ、あの声で歌うことと、あの曲らしさが深く結びついています。
歌詞の響きを優先していた時期から、言葉の伝わり方にも変化が出てきた経緯は、Charaの歌声の変遷でもたどれます。
その声だから歌える曲がある
新東京のボーカル、杉田春音は、自分の息を含んだ声に不安を持っていたとき、Charaの「やさしい気持ち」に出会いました。
よく通る力強い声でなければ活躍できないのではないか。
そんな思いがあった彼にとって、Charaがその声で広く聴かれていることは、自分の声を好きになるきっかけになったそうです。
Charaの歌は、息を含んだ声にも、歌を聴かせる力があると感じさせてくれます。
ささやくような声も、強く鳴らす声も、その曲の中で生かせる。
しかも本人は、ささやき声という持ち味を、ただ細く歌うこととは考えていません。
「やさしい気持ち」を聴くときも、甘い声そのものだけでなく、どこで相手にそっと語りかけ、どこで自分の願いを強く伝えようとするのかに耳を向けてみたくなります。
声がやわらかいからこそ、そこに込めた気持ちの強さが気になる。
その変化を歌にできることが、Charaの大きな魅力です。
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