エイミー・リーにも、好きなのに、ライブでは歌えないと思っていた曲がありました。
2011年のアルバム『Evanescence』に収められた「The End of the Dream」です。
あの強い高音の持ち主がためらった理由は、一瞬だけ難しい音を出せば済む歌ではなかったことにあります。
ところが、2017年の『Synthesis』でこの曲を録り直したあと、彼女はステージでも歌うようになります。
その間に変わったのは、伴奏の編成、歌い始めの自由さ、そして自分の声をどう聴かせたいかという考えでした。
2011年の原曲と2017年の再録、そして2018年に本人が語った公演の手応えから、その変化をたどってみましょう。
「The End of the Dream」――『Evanescence』(2011年)
2011年の曲が、ライブでは難しかった理由
エイミーは2016年、この曲の難しさを、音の高さだけでなく、音符の長さから説明していました。
声を長く伸ばし、それを曲の中で繰り返す。
ステージを動き回りながら歌うとなると、録音とは別の難しさが生まれるのです。
高い音を一度出せることと、一曲を歌い切り、そのあとも公演を続けられることは違います。
エイミーが考えていたのは、その晩の残りの曲まで含めた歌唱でした。
好きな曲だからといって、ただセットリストへ入れればよいわけではなかったのです。
スタジオ版の完成から、ライブでの演奏までには、もう一つの課題が残っていたのです。

2017年、拍に縛られない歌い始めを取り戻す
『Synthesis』は、過去の録音へオーケストラを足しただけの作品ではありません。
歌も伴奏も録り直し、弦楽器などの生演奏と電子音を中心に、曲を組み立て直したアルバムです。
もともとEvanescenceの音楽には、重いギターとドラムだけでなく、弦の細かな動きや電子音の仕掛けもありました。
エイミーは、大きなバンドの音に埋もれがちだった部分を、もっと聴かせたいと思っていたのです。
「The End of the Dream」にも、完成したロック版とは違う出発点がありました。
初期のアイデアでは、音数の少ない中で歌い、一定の拍にきっちり合わせずに言葉を届ける感覚があったといいます。
バンドの曲へ仕上げる間に、テンポや雰囲気が変わっていました。
2017年の再録では、彼女が気に入っていた、その自由な歌い始めを取り戻しました。
「The End of the Dream」――『Synthesis』(2017年)
歌い始めを一定の拍に合わせなくてよければ、声を伸ばす時間や、次の言葉へ移るタイミングを、歌の表情に合わせて決められます。
同じ曲でも、伴奏が歌に求めるものが変われば、歌手が使える表現も変わります。
原曲の勢いを失わないように歌うのか、言葉を急がずに始め、そこから大きな展開へ進むのか。
二つの録音は、エイミーが年齢とともにどう変わったかに加えて、この曲をどう歌いたくなったかも比べられる組み合わせです。
声を隠さず、細部まで聴かせるようになる
『Synthesis』での変化は、「The End of the Dream」だけに起きたものではありません。
エイミーは、若いころには歌を録音の中であまり前へ出したくなかったものの、次第に自分の声を受け入れられるようになったと話しています。
この作品では、聴き手のすぐ近くで歌うような親密さにも挑んでいました。
大音量のロック公演では、演奏を突き抜けるように歌うことを覚えてきた。
一方、オーケストラとの公演では、自分の一音一音がよく聴こえ、スタジオのように歌やピアノの細部へ集中できる。
本人は、二つの環境の違いをそのように説明しています。
オーケストラだから自動的に声が楽になる、という意味ではありません。
バンドの厚い音が減れば、歌の細かな動きも、それだけ客席に届きます。
エイミーにとっては、自分の声を目立たせること自体が、新しい挑戦になっていました。
2003年の代表曲「Bring Me to Life」も、2017年には同じ方針で録り直しています。
歌い慣れていなかった最初の録音から、多くの公演を重ねたあとの録音へ。
本人が語る、旋律への自信や見方の変化を考えるうえでも、象徴的な一曲です。
「Bring Me to Life」――『Synthesis』(2017年再録)
そして、2018年のインタビューでは、「The End of the Dream」を実際に公演で歌っている手応えを話しています。
難しさは残っていましたが、まだ声が元気な公演の前半へ置き、その後の歌にも配慮していました。
編曲を変えることと、一晩のどこで歌うかを考えること。その両方が、好きな曲をステージで歌うための方法になったのです。
変わったのは、難しい曲への取り組み方だった
「The End of the Dream」の変化は、昔より高い声が出るようになった、という説明だけでは捉えられません。
長い音を繰り返す難しさを本人が認め、歌い始めの時間の使い方を変え、自分の声がはっきり届く編成で挑み、公演の曲順も考えました。
難しさを力ずくで押し切るのではなく、どうすれば自分が望む歌として届けられるかを、曲全体から考え直した。
2011年から『Synthesis』期にかけてのエイミーには、そんな変化が見えます。
大きな声で音楽を満たす人が、その声の細部にも聴き手を近づけるようになったのです。
バンドの迫力を生かす歌作りについては、エイミー・リーの歌い方で、「Sweet Sacrifice」のギターと歌の関係などを取り上げています。
その重い演奏の中で育ててきた歌を、一音ずつ確かめるように歌い直す。その経験が、かつてためらっていた曲への挑戦にもつながりました。
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