町田ちまの歌声はどう変わった?スマホ直録りから映画主題歌まで

町田ちまの歌声の変化をスマートフォン直録りから映画主題歌までたどる記事のアイキャッチ シンガー

町田ちまさんの歌唱変遷は、歌声が細い声から太い声へ変わった、という一直線の成長ではありません。
最も大きく変わったのは、歌う人として作品を受け取る立場から、言葉や物語を作る段階へ入るようになったことです。

2018年の最初の歌動画は、スマートフォンへ直接録音したものでした。
それからカバー曲で多彩な役を見せ、初オリジナル曲では歌詞の方向を細かく伝え、Nornisでは別の歌手と声を合わせます。

初ソロ作品を作った時には、難曲よりシンプルなバラードへ苦戦しました。
現在は映画主題歌で、自分の経験をもとに歌詞の核へ関わっています。

高音を出せることは活動初期から変わらない魅力です。
変化したのは、その声で誰の言葉を歌い、作品のどこまで自分で引き受けるかでした。

2018年、最初の歌はスマートフォンへ直接録音した

町田ちまさんは2018年9月に活動を始め、翌月には初めての歌動画「変わらないもの」を公開しました。
現在のような専用の収録環境ではなく、スマートフォンへ直接声を入れた録音です。

動画の説明には、歌詞を一か所間違えたことも本人の言葉で残っています。
完成度だけを見れば、後年の作品とは条件が大きく違います。

それでも最初の一曲が示したのは、設備が整うまで待つより、歌いたい気持ちを先に外へ出す人だったことです。
きれいに編集された歌手像を最初から完成させるのではなく、失敗も含めて活動の出発点を残しました。

この時期の歌声を現在と直接比べ、技術の優劣を決めることはできません。
マイク、録音、編集、伴奏の条件が違うからです。

比較できるのは、歌と本人の距離です。
最初は好きな曲を自分の声で届けること自体が中心でしたが、後年は作品の言葉や構成へ関わり、自分が歌う理由まで作るようになります。

2020年、カバー曲が「この声なら何役できるか」を広げた

活動初期から、町田ちまさんの歌には高い音域と大きな感情の振れ幅がありました。
2020年の「-ERROR」は、その力を多くの人へ分かりやすく伝えた代表的なカバーの一つです。

カバーを重ねる時期には、本人の経歴を説明するオリジナル曲がまだ多くありません。
代わりに、曲ごとの主人公へ入り、明るさ、暗さ、幼さ、激しさを切り替えることで「どんな歌手なのか」を見せました。

ファンの記録でも、最高音だけでなく、低い場面と高い場面の落差、曲によって声質が変わる点が繰り返し話題になっています。
ただし、声区名や身体の使い方については説明が一致していません。

確かなのは、この頃までに「高い声が出る人」という入口と、「曲ごとに別の人物を見せる人」という二つの印象が育ったことです。
前者は一音で伝わりますが、後者は複数の曲を聴いて初めて見えてきます。

2021年、「6月のプレリュード」で初めて自分の歌を設計した

2021年7月、初のオリジナル曲「6月のプレリュード」が公開されました。
ここで町田ちまさんは、完成した曲を歌うだけの立場から一歩進みます。

初のオリジナル曲で自分の物語を設計し始めた町田ちま

歌詞を作る人へ長い要望を渡し、曲名の文字も自分で書きました。
歌声をどう響かせるかだけでなく、何を歌い、どんな入口から聴き手を招くかへ関わった最初の作品です。

同年には「フォニイ」のカバーも大きな反響を得ました。
声の切り替えや高音の強さが注目される曲と、自分の活動へ言葉を置くオリジナル曲が並んだことで、町田ちまさんの二つの方向が同時に見えます。

一つは、与えられた世界へ深く入り、別の人物を立ち上げることです。
もう一つは、自分が伝えたい物語の輪郭から歌を作ることです。

後年の変化は、カバーをやめてオリジナルへ移ったことではありません。
他者の物語を演じる力を残したまま、自分の経験を置ける作品を増やしたことにあります。

2022年、3DライブとNornisで「一人の物語」から外へ出た

2022年には3Dライブ「Prelude」が行われ、「6月のプレリュード」も立体的な舞台で披露されました。
スタジオで完成した最初のオリジナル曲が、身体の動き、照明、観客の時間を含む歌へ置き直されたのです。

同じ曲でも、公式MVと3Dライブでは伴奏、音響、映像、歌う状況が違います。
二つだけを聴いて、発声がどれだけ成長したかを断定することはできません。

それでも曲の役割は変わりました。
2021年には初めて自分の物語を形にする曲でしたが、翌年には活動の時間を観客と振り返り、次の段階へ進む公演の軸になっています。

さらに同年6月、戌亥とこさん、朝日南アカネさんとNornisを結成しました。
後に二人組となったユニットでは、一人の曲へ自分の表情を付けるだけでなく、別の歌手の声がある場所を考える必要が生まれます。

メンバーからは、町田ちまさんが難しい高音へ届くこと、音程が安定していること、録音するたびに違う案を出すことが語られました。
本人は自信を失う瞬間もありましたが、他者の証言によって、自分では当たり前にしていた強みを外から知ります。

ソロで自由に役を変える力と、ユニットで相手へ合わせる力が、ここから同時に育っていきました。

2023年、初ソロ作品で「簡単に聞こえる歌」の壁へ当たった

2023年、初のソロ・ミニアルバム『The Pages』が制作されました。
一冊の本のページをめくるように、曲ごとに異なる物語と声を置く作品です。

幅広い歌い分けは、それまでのカバー活動ともつながっています。
しかし制作で本人が特に難しいと感じたのは、激しい曲ではなく、シンプルなバラード「ひとひらの未来」でした。

リズムを正確に追うほど言葉が細かく切れ、歌詞が文章としてつながりにくくなっていたためです。
「文章を読むように歌う」という助言を受け、一音ずつ整えることから、一文の行き先を作ることへ意識を移しました。

この転機は、歌える声の種類が増えた話ではありません。
すでに多くの声を使えた人が、声色を大きく変えなくても物語を届ける方法を覚えた出来事です。

町田ちまさんの歌い方・発声で紹介した「簡単な歌ほど難しい」という逆転は、この時期に表面化しました。
派手な高音で注目された歌手が、目立たない言葉のつながりへ戻ったことで、表現の土台が変わります。

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2024年から2025年、完成度だけでなく制作の入口へ関わった

Nornisでは、二人の個性をぶつけるソロ部分と、声を一つへ寄せるユニゾンの両方が求められました。
2024年の『Tensegrity』と初ツアーは、その関係を録音だけでなく舞台へ広げた時期です。

Nornisで制作とアンサンブルの幅を広げた町田ちま

高品質な収録環境では、細部を何度も確認し、完成度を上げられます。
一方で町田ちまさんは、きれいに録ることへ集中しすぎると、ライブにある感情の爆発を置き去りにする感覚も持っていました。

そこで、できあがった曲を最後に歌うだけでなく、制作の早い段階から関わりたいという意識が強くなります。
言葉や曲の意図を作る過程から共有すれば、録音でも「なぜここを歌うのか」を自分の感情として持てるからです。

2025年のオーケストラ公演へ進む頃には、二人の声を合わせる技術だけでなく、作品のメッセージをどう届けるかが大きなテーマになりました。
活動初期のように歌ってみたい曲をすぐ録る自由と、長い制作で一つの作品を設計する責任が、同じ歌手の中に共存します。

2026年、「ネオンと残像」で自分の経験が映画の物語になった

2026年3月、「ネオンと残像」が映画『東京逃避行』の主題歌として発表されました。
町田ちまさんは歌うだけでなく、作品と自分の経験が重なる部分を言葉へ置くため、歌詞の方向にも関わっています。

デビュー直後には、既にある曲をスマートフォンへ直接録音していました。
8年後には、映画の主人公へ寄り添いながら、自分の経験を曲の中心へ渡しています。

この二つの間にあるのは、機材が豪華になったことだけではありません。
歌を完成させる工程の最後に声を入れる人から、作品の最初にある問いを一緒に考える人へ変わりました。

同年6月、Nornisは活動を終了し、二人はそれぞれの個人活動へ重点を移しました。
ユニットで得たアンサンブルと制作の経験は終わるのではなく、再び一人で作品を作る時の土台になります。

現在の歌声を「ソロへ戻った」とだけ表現するのは正確ではありません。
他者と合わせ、自分を抑え、制作の入口へ参加した時間を持ったうえで、一人の名前へ帰ってきたからです。

変わらないのは、準備が整う前でもまず歌ったこと

町田ちまさんの活動を年代順に追うと、作品の規模は大きく変わっています。
直録りのカバーから、3Dライブ、ユニット、ソロ作品、ツアー、映画主題歌へ進みました。

それでも出発点から残っているのは、条件が完全に整うまで歌を止めなかったことです。
最初の動画には録音環境の制約も歌詞の間違いも残りましたが、それを消してから始めるのではなく、その時にできる形で公開しました。

後年は完成度を高められるようになったからこそ、正しさへ寄りすぎる新しい悩みが生まれます。
そこで再び、ライブの衝動や文章の意味、自分が歌う理由へ戻りました。

初期の勢いと現在の制作参加は、反対に見えてつながっています。
どちらも、歌を上手に処理することより、今届けたいものを声にすることを優先する選択です。

まとめ

町田ちまさんの歌唱変遷は、2018年のスマートフォン直録りから始まりました。
カバー曲で高音と多彩な役を見せ、2021年の「6月のプレリュード」で初めて自分の物語を設計します。

2022年には3Dライブでその曲を舞台へ置き直し、Nornisで他者と歌うことを学びました。
2023年の『The Pages』では、難曲よりシンプルな歌へ苦戦し、「文章を読むように歌う」という考えへ出会います。

2024年以降は、録音の完成度とライブの感情をどう両立するかを考え、制作の早い段階から関わるようになりました。
2026年の「ネオンと残像」では、自分の経験を映画の物語へ重ね、歌詞の方向まで参加しています。

変わったのは、高音が出るかどうかではありません。
他者の曲へ声を置く人から、言葉、場面、共演者との関係を含めて歌を作る人へ広がったことです。

最初から残る「まず歌う」という衝動に、8年分の制作経験が加わりました。
それが、現在の町田ちまさんの歌を、技術だけでは説明できないものにしています。

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