星街すいせいさんの歌唱変遷は、声が細かった人が太くなったという単純な物語ではありません。
一人で録音をやり直せた個人勢時代から、制作陣の前で試し、ライブ会場の観客と時間を共有し、ついには自ら音楽の場を作るところまで進みました。
活動の規模が変わるたび、歌声が向き合う相手も変わっています。
それでも、自分の声を録音して確かめる姿勢と、歌でしか見せない感情を作品へ預けるところは、2018年から現在まで残り続けています。
- 2018年、個人勢の歌は「失敗を誰にも見せない場所」から始まった
- 2019年、所属が変わり「人前で失敗する怖さ」と向き合った
- 2020年から2021年、『GHOST』と『Still Still Stellar』で感情を隠さなくなった
- 2022年、喉の不調が「同じ声を守る」考えを変えた
- 2023年、『Specter』とTHE FIRST TAKEで弱さを正面に置いた
- 2024年、『ビビデバ』で強い声が軽やかに踊り始めた
- 2025年、『新星目録』と日本武道館で声が一つの場所を作った
- 2026年、Studio STELLARで歌声は「自分の作品」から「音楽の場」へ進む
- 変わったものと、変わらなかったもの
- まとめ|星街すいせいの歌声は、向き合う相手を増やしてきた
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2018年、個人勢の歌は「失敗を誰にも見せない場所」から始まった
星街すいせいさんは2018年3月、個人のバーチャルアイドルとして活動を始めました。
キャラクター、動画、告知まで多くを自分で手がけ、同じ年に初のオリジナル曲『comet』を発表します。
この頃の録音は、一人で何度でもやり直せる場所でした。
うまくいかなければ録り直し、納得したテイクだけを外へ出せるため、歌は挑戦の場であると同時に、自分を守れる場所でもありました。
一方で、カラオケ録音を聴き返し、自分の欠点を客観的に探す習慣はすでに育っていました。
本格的なレッスンを受けていなくても、歌っている時の感覚だけを信用せず、録音の中の声を材料に変えていたのです。
初期の歌には現在につながる明るい輪郭がありますが、完成した音源を大勢で作る経験はまだ多くありませんでした。
まず一人の部屋で、自分の耳を相手に歌を作っていた時代です。
2019年、所属が変わり「人前で失敗する怖さ」と向き合った
2019年、音楽活動を本格化するためのプロジェクトへ参加し、その後ホロライブへ移籍しました。
活動を支える人が増えたことで、録音は一人だけの作業ではなくなります。
同年の『天球、彗星は夜を跨いで』には、星街すいせいという存在の孤独と決意が濃く表れています。
まっすぐ伸びる音の強さはありますが、現在の大会場を掌握する声というより、届く場所を探して夜を進む声です。
スタジオでは、他者に聴かれながら歌うことへの緊張がありました。
間違いを見せないよう安全なテイクを選ぶと、音程は整っても、曲が求める大胆な表情が小さくなります。
外からの指示を受け、試して、録り直せると知ったことで、失敗は隠すものから完成形を探す途中へ変わりました。
一人で身につけた客観性が、制作陣と共有できる言葉になり始めた時期です。

2020年から2021年、『GHOST』と『Still Still Stellar』で感情を隠さなくなった
所属後は3Dライブや音楽番組への出演が増え、歌声をリアルタイムで届ける機会が広がりました。
録音で整えた一曲だけでなく、ライブ全体の流れの中で感情を持続させる必要が生まれます。
2021年の『GHOST』では、姿が見えていても本当の存在を見つけてもらえない苦しさを、鋭い高音と切迫した言葉へ変えました。
初期の孤独が静かな夜景だったとすれば、ここでは聴き手へ届くまで声を止めない意志になっています。
同年の1stアルバム『Still Still Stellar』は、星街すいせいさんを一曲の話題だけではなく、複数の曲調を持つ歌手として示しました。
表題曲では大きな旋律をまっすぐ歌いながら、すべてを力で押さず、弱い始まりからサビへ景色を広げます。
この時期に加わったのは、単純な声量ではありません。
一人の内側にあった感情を、ライブの観客が自分の物語として受け取れる大きさへ変える力です。
2022年、喉の不調が「同じ声を守る」考えを変えた
活動が増える一方で、星街すいせいさんは喉の不調に直面しました。
医師から日常の話し声を見直すよう助言を受け、自分が無理なく使える高さを探し、手術と休養も経験します。
ここは歌唱変遷を語るうえで、技術的な成長以上に重要な転機です。
昔と同じ音色を無理に維持することより、長く活動できる声へ基準を作り直す必要がありました。
話し声の変化は目立つため、歌声まで別物になったように語られることがあります。
しかし実際には、歌で使う声と長時間の配信で使う声を分け、現在の身体に合う方法を選び直したと考える方が自然です。
同じ頃、さまざまな歌手や演奏家と作る音楽企画やフェスへの参加も増えました。
自分の曲を自分の方法で歌うだけでなく、異なる音楽家の呼吸や、会場全体の流れの中で声の役割を考える段階へ進みます。
2023年、『Specter』とTHE FIRST TAKEで弱さを正面に置いた
2ndアルバム『Specter』には、明るい成功だけでは説明できない葛藤や苦しさが入りました。
1stアルバムのきらめきを消したのではなく、その光を維持する側の迷いまで歌の中へ持ち込んだ作品です。
『Stellar Stellar』を一発撮りの場で歌ったことも、変遷を象徴しています。
一人ならやり直せた録音から始まった歌手が、止められない一回の時間で代表曲を渡しました。
ここで聞こえる成長は、失敗しない機械的な正確さではありません。
息を置く瞬間、言葉を少し遅らせる場面、長い音の中で感情が変わる様子まで、一回の歌として引き受けられることです。
初期に他者の前で間違えることを恐れていた経験があるからこそ、完成されたテイクではなく、その場で生まれる揺れを見せる意味が大きくなります。
2024年、『ビビデバ』で強い声が軽やかに踊り始めた
『ビビデバ』は、星街すいせいさんの声を知らなかった層へも広く届きました。
この曲では、大きなロングトーンや切迫した感情だけで勝負していません。
短い言葉をリズムへ置き、声色を軽く切り替え、強い芯を残したまま体を動かしたくなる歌へ変えています。
それまで培った制御力が、重厚さではなく遊びとして使われました。
同年は大型フェスやテレビの音楽番組など、観客も音響も異なる場所で歌う経験を重ねます。
自分のファンだけが集まる公演と、初めて見る人の多いステージでは、同じ一音でも必要な届かせ方が違います。
『ビビデバ』の軽快さは、路線を突然変えた結果ではありません。
声を客観視し、曲ごとに強さの向きを選んできた蓄積が、誰でも一度でつかめるリズムへ開いたのです。
2025年、『新星目録』と日本武道館で声が一つの場所を作った
3rdアルバム『新星目録』では、過去の葛藤を抱えたまま、もう一度前へ進む意志が作品全体を貫きます。
声は明るさか暗さのどちらかを演じるのではなく、両方を知った人の推進力として鳴ります。
『AWAKE』では鋭いリズムと強い言葉を扱いながら、ただ激しく叫ぶ歌にはなりません。
短い音の切れ味と、長い音の広がりを使い分け、楽曲の速度を声で組み立てています。
そして2025年2月、日本武道館でのライブを実現しました。
個人勢時代に一人で録り直していた声が、制作陣、バンド、演出、会場の観客を結ぶ中心になります。

大きな会場に合わせて常に声を太くしたのではありません。
静かな場面では観客の注意を近くへ集め、サビでは空間を一気に開くことで、一人の歌声が会場の距離を変えています。
2026年、Studio STELLARで歌声は「自分の作品」から「音楽の場」へ進む
2026年、星街すいせいさんは自身の音楽活動を中心とする新レーベルStudio STELLARを始動しました。
目標として東京ドームを掲げ、作品を歌うだけでなく、制作や挑戦が続く場所そのものを作ろうとしています。
本人は、デビュー当初に「VTuber」と呼んでいた活動を、音楽や表現の広がりに合わせて「バーチャルアイドル」と捉えるようになりました。
呼び名の変化は、枠を捨てたというより、歌が届く相手を限定しなくなったことを表しています。
現在の声には、個人勢時代の録音習慣、スタジオで覚えた挑戦、喉の不調から得た更新力、フェスや武道館で育てた共有の感覚が重なっています。
声が別人のように変わったのではなく、同じ声で引き受けられる責任と景色が増えました。
変わったものと、変わらなかったもの
2018年と現在を比べると、高音の安定、声色の選択肢、ライブでの持続力、曲ごとの役割は大きく広がっています。
一人で完成させる歌から、他者のディレクションを受け、会場全体と作る歌へ変わりました。
一方で、録音を通して自分の声を客観視する姿勢は変わっていません。
歌でしか表に出しにくい感情を、作品の中なら大胆に見せられるところも、初期から現在をつないでいます。
喉の不調を経ても、昔の声へ戻ることを進化とはしませんでした。
今の身体と場所に合う方法を探し、その時の最良を更新し続けることが、星街すいせいさんの変わらない方法です。
まとめ|星街すいせいの歌声は、向き合う相手を増やしてきた
星街すいせいさんは、個人勢として一人で録音を聴き返すところから歌を育てました。
所属後は、人前で失敗する怖さと向き合い、正しい音程だけでなく、完成した作品のニュアンスを考える歌へ進みます。
『GHOST』『Still Still Stellar』では内側の感情を観客へ渡し、『Specter』では葛藤も隠さず、『ビビデバ』では強い声を軽やかなリズムへ変えました。
喉の不調は同じ声を無理に守るのではなく、長く歌える方法へ更新する転機になっています。
日本武道館を経てStudio STELLARを立ち上げた現在、歌声は一曲を完成させるものから、新しい音楽の場を作るものへ広がりました。
変遷の中心にあるのは音域の拡大だけでなく、自分、制作陣、観客、そして次の表現者まで、声が向き合う相手を増やしてきた歴史です。
星街すいせいさんの現在の歌い方と発声では、強い高音を支える録音習慣と、曲ごとに声の強さを変える仕組みを初心者向けに整理しています。
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