Reolの歌声はどう変わった?「れをる」・ユニットREOL・ソロから『美辞学』まで

美辞学期のReolのアーティスト写真 Reol

Reolさんの歌声は、初期より単純に太くなった、上手くなったという変化では説明できません。
最も大きく変わったのは、その声が誰の世界を代表し、誰が進む方向を決めるのかです。

ネット上で姿を見せずに歌った「れをる」、三人の世界を背負ったユニット「REOL」、自分で作詞作曲を担うソロ「Reol」。
三つの表記は名前の揺れではなく、声の主導権が移っていった記録でもあります。

2026年の『美辞学』まで進むと、初期の鋭さを捨てずに、力を抜いた親密な声まで選べるようになりました。
変わらない個性を守ったのではなく、自分で壊し、回収し、別の意味を与え直してきたことがReolさんの歌唱の変遷です。

2012〜2015年|「れをる」は姿より先に声が知られた

活動の始まりは2012年の動画投稿でした。
音楽を仕事にする仲間が身近にいなくても、インターネットなら一人で始められると考え、宅録を覚えて作品を公開していきます。

当時の「れをる」は、本人の生活や素顔より、マイクを通った声とイラストが先に届く存在でした。
リスナーにとっては、どこに住む誰かを知る前に、速い言葉と強い輪郭を持つ声そのものが人物像になっていたのです。

2014年の自主盤『No title+』、2015年のアルバム『極彩色』へ進む過程で、その声はネット発の音楽文化を代表する一つの記号になりました。
『極彩色』は、歌い手「れをる」の時代を一度終える意味も持っていました。

この時期の重要さは、後年より荒削りだったかどうかではありません。
姿を伏せた環境で、声だけが先に巨大なキャラクターを作ったことにあります。

2016〜2017年|ユニットREOLで声は三人のアイコンになった

2016年には、Gigaさん、お菊さんと三人組のREOLを結成します。
ここで本人は、自分がGigaさんにとっての専用シンガーであり、ユニットを代表する歌姫になろうとしていたと後に語っています。

個人の内面を歌うだけでなく、音楽、映像、衣装を含む三人の世界へ観客を連れていく役目です。
知名度のあった自分が前へ出ることで、他の二人にも関心を広げたいという意識がありました。

『Σ』の収録曲では、密度の高い電子音と強い映像に負けない声が求められます。
鋭い発音や高速フレーズは、技巧を見せる飾りではなく、三人の作品を一瞬で識別させるロゴのように働きました。

しかし、アイコンとして前へ出るほど、自分自身の音楽をどこまで決められるかという問題も大きくなります。
ユニットは2017年に活動を終え、声の強さとは別の問いが残りました。

2018年|Reolとして、声だけでなく曲の決定権を持つ

2018年、頭文字だけを大文字にしたReolとしてソロ活動を始めます。
表記の変化は小さく見えますが、本人にとっては別の世界へ移ったような再出発でした。

ソロでは、作詞と作曲を自分で担い、自分で作ったメロディーを自分の言葉で歌うことを選びます。
ユニットのサウンドを象徴する歌姫から、どんな声を必要とする曲なのかまで決めるシンガーソングライターへ変わったのです。

鏡に囲まれたソロ始動期のReol

『虚構集』では、ギラギラした強さだけでなく、自分と他者、現実と虚構の間で揺れる感情が中心へ出てきます。
編曲者を曲ごとに迎えられるようになったことで、声を一種類の電子音へ固定せず、異なるサウンドの中で試せるようになりました。

この転機で増えたのは、歌唱技術の名前ではなく、選択肢です。
強く歌えるから強く歌うのではなく、自分の曲が必要とする強さを自分で決められるようになりました。

2020〜2021年|『第六感』で内輪の速さが広い入口になった

2020年の『第六感』は、ストリーミング再生が1億回を超える大きな広がりを生みました。
ネット発の鋭い語感を失わず、初めて聴く人でも一度でつかめるサビと結び付いたことが大きな転機です。

それ以前の魅力を一般向けに薄めたわけではありません。
細かなリズムの面白さと、テレビCMでも伝わる大きなフックを同じ曲に収めることで、Reolさんの声が届く範囲を広げました。

この時期には、YouTubeの公式企画や無観客配信も含め、録音作品の声をライブでどう成立させるかがより重要になります。
宅録から始まった声が、大勢の観客と同じ時間を作る声へ役割を広げたのです。

2022〜2023年|過去を捨てずに『BLACK BOX』へ収納した

活動が長くなると、初期の代表曲は現在の自分を縛ることがあります。
Reolさんは『No title』を新しい形で扱い直し、過去を封印するのではなく、現在の創作へ接続しました。

2022年頃には、自分のためだけでなく、誰かのために音楽を作る感覚が増えたとも語っています。
一人称で閉じていた言葉が「私たち」へ開くような変化は、声を自己表現だけで終わらせない方向へつながります。

2023年の『BLACK BOX』には、ネット、ユニット、ソロという複数の経歴が同居しました。
箱へしまって終わるのではなく、互いに矛盾する自分を一つの公演と作品で扱える段階へ進んだのです。

初期を懐かしむだけでも、過去と決別するだけでもありません。
昔の鋭さを今の作曲とステージへ組み込み直すことが、この時期の歌声を厚くしました。

2024年|武道館で『No title』は十年後の現在形になった

2024年、活動十周年を記念した初の日本武道館公演は『No title』と名付けられました。
匿名のネット投稿から始まった題名を、十年分の観客と作品を背負う会場へ持ち込んだことに意味があります。

同じ曲でも、初期音源と十年後のライブでは、アレンジ、編成、会場、歌う目的が違います。
動画だけを並べて技術の上下を決めるのではなく、一人で公開した曲が大規模な共同体の記憶へ変わったことを比べるべきです。

ここで過去は、若い時の声を再現する課題ではなくなりました。
現在の自分と観客が、同じ曲に新しい意味を足せる場所へ変わっています。

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2025〜2026年|『美辞学』で無題だった道に名前を付けた

2025年はシングルを連続して出すより、横浜アリーナでの発表と次のアルバムへ集中する時間になりました。
2026年1月の『美辞学』を、本人は十年以上無題だった道へようやく名前を付けた作品と説明しています。

前作『BLACK BOX』には、一度物語を終えるような感覚がありました。
次のアルバムは作りたい気持ちが戻るまで急がず、自分の癖や原点をもう一度肯定できる段階で作られています。

Reol Oneman Live 2026 美辞学のビジュアル

『RE RESCUE』の切迫した声は、初期から続く強い輪郭を現在の作品へつなぎました。
その一方で『COCOON』では、本人にとって初のラブソングを、これまでにないアンニュイな歌声で表しています。

この曲では、声が作品の危機感を前へ運ぶ役目を担っています。
次に発表された『COCOON』では、同じ輪郭を保ちながら、聴き手との距離を縮める方向へ声の力を変えました。

強い声を弱めたのではなく、強さを使わない場面まで自分で選べるようになったと考えると、この二曲は矛盾しません。
自分らしさを一つの声色へ固定せず、曲ごとに必要な距離を決めることが現在のReolさんらしさです。

三つの名前で変わったもの、変わらなかったもの

「れをる」「REOL」「Reol」が同じ人物なのか戸惑う声は、今も海外ファンを含めて見られます。
表記だけを整理すれば、初期の個人名義、三人組ユニット、現在のソロ名義です。

けれど、歌声の歴史として見ると、違いはもっと鮮明です。
初期は声が匿名の人物像を作り、ユニットでは三人のアイコンになり、ソロでは曲の方向まで自分で決めるようになりました。

変わらず残ったのは、速い言葉や高音そのものではありません。
自分の声を完成した形と思わず、作品の目的に合わせて作り替える姿勢です。

Reolさんの歌い方と発声では、現在の声がどのようにリズムや電子音の一部として設計されているのかを、初心者向けに整理しています。

まとめ|Reolの歌唱変遷は、声の主導権を取り戻す物語

初期の「れをる」は、姿より先に声が知られた存在でした。
ユニットREOLでは、その声が三人の音楽と映像を代表するアイコンになります。

2018年のソロ始動で、作詞作曲を含む創作の決定権を自分の手へ戻しました。
『第六感』で広い入口を作り、『BLACK BOX』と武道館で過去を回収し、『美辞学』では無題だった道に自分で名前を付けています。

現在は『RE RESCUE』の切迫感だけでなく、『COCOON』の親密さも選べます。
歌声が変わった最大の理由は、強い声を磨き続けたからだけではなく、その声を何に使うかまで自分で決められるようになったことです。

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