Souさんの歌声は、透明、爽やか、息が多いという言葉で紹介されることがよくあります。
たしかに、力で押し切るロックボーカルとは違い、声の向こう側が透けるような軽さが大きな魅力です。
ただし、その軽さを「息を多く流した弱い声」と考えると、Souさんらしさから遠ざかります。
2018年に外部ディレクターと録音した際、本人が改めて気づかされたのは、高音の出し方ではなく、低い音でも声量と明るさを失わないこと、歌詞の最初の言葉をはっきり届けることでした。
現在の透明な高音を支えているのは、目立つ音だけをきれいにする技術ではありません。
低音から言葉の輪郭を消さず、息、少し鼻にかかった響き、語句ごとの小さな引っ掛かりを一つの声へまとめることです。
Souの透明感は一つの成分では作れない
2026年、じんさんはSouさんの声について、透明感や青さを感じた原点を振り返っています。
そこで挙げられたのは、単独の発声テクニックではなく、少し鼻にかかった歌い方、息遣い、耳に残るフックの組み合わせでした。
この説明が面白いのは、透明感を「薄い声」と同じ意味にしていない点です。
息だけが増えれば言葉は遠くなり、鼻へ寄せることだけを意識すれば、こもった鼻声にもなります。
ところがSouさんの歌では、柔らかな質感の中に、どの言葉を聴かせたいかという小さな輪郭が残ります。
作曲家から「硝子の風が吹きつけたような歌声」と評されたこともあります。
硝子という比喩には透明さがありますが、同時に硬い縁もあります。
Souさんの声を聴いた人が涼しさだけでなく、鋭さや切実さまで感じるのは、この二面性があるからでしょう。

転機は高音ではなく、低い音の声量だった
Souさんの発声を考えるうえで、2018年の「SUMMER VERSE!!」録音は重要な出来事です。
普段は自宅で録ることが多かったSouさんが、Q-MHzのメンバーから客観的なディレクションを受けました。
その場で指摘されたのは、声が最も美しく出る音域より少し低くなると、声量も小さくなりやすいことでした。
音程が下がっても、もう少し大きく、明るい声を保つよう求められ、Souさんはその場で対応しています。
さらに本人は、歌詞の頭に来る言葉をもっとはっきり言わなければ伝わりにくいことにも気づいたと話しています。
どちらも派手な秘技ではありません。
しかし、低い音で声が消えず、言葉の入口が見えるからこそ、その先にある軽い高音まで一本のフレーズとして届きます。
高音だけが急に明るくなる歌は、そこへ到達した瞬間こそ華やかでも、低音との間に段差ができます。
Souさんの歌い方では、低い音にも明るさを残すことで、その段差が小さくなります。
これは地声と裏声をつなげる考え方にも通じますが、声区の名前を当てる前に、フレーズ全体のつながりを見る方が本質に近いでしょう。
「鼻にかかった声」と鼻声は同じではない
Souさんの歌声を説明する時、「鼻にかかった」という表現は避けられません。
一方で、鼻を塞いだような声を真似しても、同じ印象にはなりません。
ここでいう鼻にかかった質感は、じんさんが息遣いやフックと一緒に挙げた、声の色についての説明です。
喉や鼻の内部が実際にどう動いているかを、外から決めつける言葉ではありません。
聞き手にとって大切なのは、音が細い場所でも言葉を追えることです。
Souさんの歌には、母音をなめらかに伸ばす場面と、子音や語頭で輪郭を立てる場面があります。
その切り替えがあるため、声全体は柔らかいのに、歌詞まで曖昧にはなりません。
鼻腔共鳴と鼻声の違いを考える場合も、「鼻へ響かせれば正解」と単純化しない方が安全です。
こもりを感じた時は、響きの位置を想像するより、普段の話し声と同じように言葉が聞き取れるかを先に確かめる必要があります。
キーを上げるより、声が最も生きる場所を選んでいる
「SUMMER VERSE!!」の録音では、原曲キーに加えて、半音上と半音下の候補まで用意されていました。
実際に歌った結果、最初に作られたキーが最も合うと判断されています。
この話から分かるのは、Souさんの魅力が最高音の高さだけで決まっていないことです。
低音の存在感、言葉の明るさ、声の色が同時に生きる範囲を探した結果として、キーが決まっています。
歌い手の高音を扱う記事では、何オクターブ出るかという数字が注目されがちです。
ただし、ユーザー編集型の音域表は、裏声、加工、短い効果音まで同じ基準で数えているとは限りません。
Souさん自身も、2015年当時は現在より音域が狭かったと振り返っていますが、そこから「現在は何音まで出る」と断定することはできません。
重要なのは、範囲が広がった現在も、曲に対して声を選んでいることです。
高い音を増やすより、自分の声が最も魅力的に聞こえる場所を作品ごとに探す姿勢が、長く活動を続けられる強さになっています。

提供曲を歌う人から、声の景色を選ぶ人へ
2026年のアルバム「Panorama」には、じんさん、Chinozoさん、ナカシマさん、栗山夕璃さんなど、異なる個性を持つ作家が参加しています。
Souさんは、流行の音へ受け身で合わせるのではなく、それぞれの作家の歴史から「この人にはこんな曲を書いてほしい」という景色を選びました。
その選び方は論理より直感に近いと本人は話しています。
けれども、作品ではどの曲にもどこか尖った部分を入れることを意識しており、単なる寄せ集めにはしていません。
声の透明感を守りながら、ジャズ、ロック、エレクトロニックな曲まで違う輪郭をまとっています。
ここまで来ると、Souさんは提供された難曲を歌える人というだけではありません。
自分の声を中心に、どんな作家とどんな世界を作るかを決めるディレクターでもあります。
初期から続く軽い声が、活動の広がりによって薄まるのではなく、違う曲をつなぐ共通の色になったのです。
Souの高音を真似る前に知っておきたいこと
Souさんらしく聞かせようとして、最初から息を増やし、声量を落とすのはおすすめできません。
2018年の録音で本人が向き合ったのは、むしろ低音でも声を小さくしすぎず、語頭をはっきりさせることでした。
表面の儚さだけを真似ると、歌詞が聞こえないまま声が細くなる可能性があります。
反対に、明瞭さを求めて全ての言葉を強く当てれば、Souさんの滑らかさは消えてしまいます。
参考にするなら、まず一曲の中で消えている言葉を見つける方が現実的です。
低い音だけ急に小さくなっていないか、歌詞の最初の一音が抜けていないかを録音で確かめると、息の量より先に直す場所が見えます。
痛みや強いかすれが出る場合は、似せることを中止してください。
高い声で喉が締まる原因がある状態では、透明感を作るつもりが、声を支えられない状態へ変わっていることがあります。
まとめ
歌い手Souさんの透明な高音は、息を多くした弱い声ではありません。
少し鼻にかかった質感、息遣い、耳に残るフックに加え、低音でも失われない明るさと、歌詞の頭を届ける明瞭さが支えています。
2018年の外部ディレクションで見えた弱点は、その後の成長を考える大きな手掛かりです。
高音だけを磨くのではなく、低い音からフレーズをつなぎ、言葉が消えないようにする。
その土台があるからこそ、Souさんの軽い声は頼りなくならず、異なる作家の曲でも同じ人の歌として残ります。
現在は、自分に合う曲を受け取る段階から、自分の声でどんな景色を作るか選ぶ段階へ進みました。
透明感は変わらない看板ではなく、作品ごとに形を変えながら、活動全体をつなぐ色になっています。






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