青山テルマの歌い方|聴かせるバラードと、一緒に騒げるパラパラ

青山テルマ — 2022年のインタビュー掲載写真 シンガー
2022年のインタビュー掲載写真。出典:HARAJUKU POP WEB

青山テルマの歌い方は、「そばにいるね」だけではつかみきれません。
切ない気持ちを歌う一方で、ラップをし、パラパラで客席を盛り上げる曲も歌っています。
この違いを、本人は歌い回しから作っています。
自分の歌声に耳を傾けてもらうのか、聴いている人も声を出したくなる歌にするのか。
曲によって、歌でしようとしていることが変わるのです。

2008年の「そばにいるね feat.SoulJa」は、離れた恋人を思う女性の歌でした。
2026年には、SoulJaとともに「THE FIRST TAKE」用の新しいアレンジで歌っています。
長く歌ってきたバラードと、後に広げた賑やかな歌い方。
その両方をたどると、青山テルマが一曲のイメージに収まりきらない理由が見えてきます。

「そばにいるね」の柔らかさと、会えない寂しさ

「そばにいるね」の女性は、離れていても恋人を思っています。
ただ、相手を安心させたい気持ちの裏には、会えない寂しさや不安もある。
強い気持ちと弱い気持ちが、同じ人の中にある歌です。

その気持ちを、青山テルマは柔らかさのあるR&Bの歌唱で表しています。
自分も寂しさを抱えながら、相手に優しく気持ちを届けようとする。
そういう女性の歌として聴くと、声の穏やかさにも意味が見えてきます。

この声を引き出す過程には、録音する側の仕事もありました。
前作に当たるSoulJaの「ここにいるよ feat.青山テルマ」では、佐藤博がボーカルの録音とミックスに携わっています。
歌手が持っている声と、その声をどう録り、曲の中でどう聞かせるか。
「そばにいるね」につながる青山テルマの印象は、そうした制作の中で形になりました。

けれど、切ないバラードが広く知られると、歌っている本人まで、おしとやかな人だと思われるようになります。
本人は明るく、笑うことも踊ることも好きでした。
アップテンポの曲をシングルで歌いたい気持ちがあっても、若い頃はそれを口に出せなかったと振り返っています。
バラードを歌う自分は本物でも、それだけが歌いたい自分のすべてではなかったのです。

パラパラでは、歌を飾りすぎない

2018年「世界の中心~We are the world~」制作時の青山テルマ
2018年「世界の中心~We are the world~」制作時の青山テルマ。出典:BARKS

2018年の「世界の中心~We are the world~」は、その別の一面がはっきり出た曲です。
青山テルマは、ここではフェイクをあまり使わず、淡々と歌う感覚だと話しています。
フェイクとは、メロディーに細かな音の動きなどを加える歌い回しのこと。
R&Bの歌唱で見せられる工夫を、そのまま全部持ち込んではいません。

目指したのは、みんなで言葉を叫び、踊って楽しめる曲でした。
聴く側もすぐに加われるようにするには、歌手だけが難しい節回しを披露する必要はない。
歌の装飾を減らすことが、客席との距離を縮める方法になっています。

冒頭の早口のカウントダウンにも、その作り方が表れています。
録音中、曲が始まるまでに数え終わらなくなり、残りの数字を急いで詰め込んだ。
その場で起きた面白さを、そのまま残したのでした。
整えて歌い直すよりも、一緒に騒いでいるような勢いが、この曲には似合っていたのです。

自分の声を加工することも、歌の表現になる

声をどう使うかという工夫は、生の歌い回しだけに限りません。
ディズニー映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』に関わる「In This Place~2人のキズナ」では、ボーカルにオートチューンを使いました。
これは映画の日本版エンドソング「In This Place(日本語バージョン)」を、別のアレンジにした曲です。

オートチューンは音程を補正するためにも使われる仕組みですが、ここで本人が求めたのは、声をゲームの世界に似合う音にすることでした。
映画の中へ自分が飛び込んだような曲にしたかったのです。

しかも、普段あまり歌わないファンクやディスコ調の曲で、慣れていない声の加工もある。
録音では久しぶりに苦戦したと語っています。
柔らかいR&Bの歌声を持っているからといって、どんな曲でも同じように歌えば完成するわけではありませんでした。

歌声も、伴奏や映像と同じように作品の世界を作る材料になる。
「そばにいるね」で声そのものの柔らかさに惹かれた人には、加工した声をあえて選ぶという、別の表現の方法が見えてきます。

賑やかな曲を増やしても、「そばにいるね」は歌い続ける

これだけ違う歌を作っていくと、昔のバラードから離れたくなったのかと思うかもしれません。
しかし、青山テルマは「そばにいるね」を歌い続けてきました。

2022年にSoulJaと再び組んだ時には、候補が二曲ありました。
一曲は「そばにいるね」が好きな人に喜ばれそうな曲調。
選んだのは、過去の曲を思い出させながら、新しさも感じた「いつまでも feat.SoulJa」のほうでした。
同じ相手とまた歌う機会に、以前と似た曲を再現することだけを求めなかったのです。

本人には、過去のヒット曲を歌いたくないという気持ちはありませんでした。
むしろ、歌い続けることで、当時を知らない人にも届けてきたという思いがある。
新曲では新しいことをする。その一方で、以前の曲を楽しみにしている人にも歌う。
曲を増やすことと、代表曲を大切にすることが、同じ活動の中にありました。

2022年の日本武道館公演より
2022年の日本武道館公演でSoulJaと共演する青山テルマ。撮影:217..NINA/VANITYMIX

そのことは、2022年の日本武道館公演の曲順にも表れています。
「マダバカ」のラップで始まり、「何度も」を歌い、加藤ミリヤとの「poppin’」ではラップを交わす。
後半にはSoulJaと「そばにいるね」「いつまでも」を続け、アンコールでは「世界の中心」も歌いました。

一つの公演の中で、静かに言葉を受け取る時間も、体を動かして楽しむ時間も作っていたわけです。
賑やかな曲があるから、バラードがなくなるのではない。
どちらも聴きたい人が、同じライブにいられる構成でした。

歌を聴いてほしい時と、一緒に歌ってほしい時

青山テルマの歌い方を知るなら、声の柔らかさだけを追うよりも、曲の中でその声に何をさせているかを見ると分かりやすくなります。
「そばにいるね」では、会えない相手への思いを丁寧に伝える。
「世界の中心」では、細かな歌い回しを抑えて、聴く人も加われる歌にする。
「In This Place~2人のキズナ」では、声を加工して映画の世界へ近づける。

寂しい時にそっと聴きたい歌と、友達と気兼ねなく騒ぎたい時の歌。
青山テルマは、その両方を自分の曲にしてきました。
柔らかい声で聴かせることも、歌を飾らずにみんなを誘うことも、同じ歌手の選択なのです。

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