イェソンの歌声の変遷|ハスキーな声から広がった、柔らかさと力強さの表現

2026年、『Where We Are』期のイェソン イェソン
2026年、『Where We Are』期のイェソン

イェソンの歌声には、切実な思いを一気に届ける強さがあります。
けれど、SUPER JUNIORの活動と並行して作ってきたソロ作品をたどると、その強さだけでは説明できない選択が見えてきます。
柔らかな声を求め、バンドの響きに心を寄せ、そこからもう一度、大きな感情を歌う。
その歩みには、自分の好きな声と、人に期待される声の両方に向き合う時間がありました。

ハスキーな声の持ち主が、別の響きを求めていた

SUPER JUNIORのイェソンは、キュヒョン、リョウクと組むSUPER JUNIOR-K.R.Y.でも、歌を中心にした表現を重ねてきました。
2013年の日本シングル「Promise You」には、離れていても相手を思う気持ちが込められています。
本人はこの曲を、恋人同士の物語と、自分たちとファンの関係が重なる歌として捉えていました。

一方で、自分の声にずっと満足していたわけではありません。
2016年には、デビュー当時の非常にハスキーな声を、自分ではあまり好きではなかったと振り返っています。
鼻にかかるような美しい声への好みがあり、強く歌いすぎたり、ハスキーな響きを前に出しすぎたりしないようにしていたのです。

人から個性として受け取られる声と、本人が出したい声が、最初から一致するとは限りません。
イェソンの場合、そのずれが、歌い方を探す出発点になっています。
持ち味を守りながら、そこに別の表情を加えようとしていたことが、ソロの歩みを読む手掛かりになります。

2016年、ソロ活動を始めた頃のイェソン
2016年、ソロ活動を始めた頃のイェソン。
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2016年、自分の歌と、求められる歌が交わった

2016年の初ソロアルバム『Here I Am』では、自分で曲を作る立場も表に出ました。
表題曲はBrother Suと制作したバラードで、別れた相手を思い、その家の前まで足を運ぶ人物の気持ちを歌っています。
声を聴かせるだけでなく、どんな状況の、誰の思いを歌うかまで、自分の作品として引き受ける一歩でした。

ただし、この時の本人の関心は、悲しいバラード一色ではありませんでした。
心が休まるインディーズの音楽や、幸せなミディアムテンポを好み、用意した曲にも裏声を多く使っていたといいます。
そこへ制作側から、彼の強みである訴えかける歌を生かそうという考えが加わり、「Here I Am」の編曲が形になりました。

初ソロ作は、従来の歌をそのまま延長した作品とも、自分の好みだけに振り切った作品とも言い切れません。
柔らかく歌いたい気持ちと、感情を強く届ける声が、一枚の中で出会っています。
後年の多彩な作品につながる揺れは、すでにこの段階にありました。

翌年の『Spring Falling』にも、その二つの表情は続きます。
表題曲「Paper Umbrella」はピアノや弦楽器とともに、落ち着きと力強さを生かしたバラードです。
一方の「All But You」では、柔らかなギターに甘い声を重ね、ゆっくりしたフォークの温かさを表現しました。

2019年、春へ向かう声を選んだ『STORY』

日本のアルバム『STORY』では、声の選び方をさらに意識しています。
以前は高音やロック、強く訴える歌い方が中心だったのに対し、この作品では澄んだ美しい声を多めに使ったと説明しました。
冬から春へ向かう時期に合う歌を届けたいという思いが、その選択に結びついていました。

曲作りでも、先に伝えたい物語を考え、それに合う音楽を探しています。
「Because I Love You ~大切な絆~」にはジャズの要素を、「いま会いにゆきます ~If You~」や「染まったんだ ~初恋~」には甘いミディアムテンポを選びました。
同じ愛を歌う場合にも、ときめき、親しさ、痛みを、異なる曲の表情に分けていたのです。

歌い方の変化が、声をどう響かせるかだけでなく、どんな物語を届けるかと結びついてきます。
悲しみを大きく膨らませる場面もあれば、近くにいる相手へ穏やかに話すような場面もある。
その違いを一枚のアルバムに置くことで、イェソンという歌手の印象も広がっていきました。

2019年、日本のアルバム『STORY』を発表した頃のイェソン
2019年、日本のアルバム『STORY』を発表した頃のイェソン。
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2021年から2023年、好きだったバンドの音楽を中心へ

2021年の『Beautiful Night』では、聴き手が好みそうな音楽を考える姿勢から、自分が本当にやりたい音楽へ重点を移したと語っています。
シティポップの表題曲は、幼い頃から親しんだキム・ヒョンチョルの音楽にも通じる選択でした。
以前から好きだった作り手たちとの協働を、作品全体へ広げています。

数百曲の候補から選んだという制作は、一曲だけ新しいジャンルを試す作業でもありませんでした。
長く一緒に仕事をしたかったThe Black Skirtsをはじめ、音楽の好みに合う相手を迎えています。
歌う前の選曲や共作者との出会いから、自分の声を置く世界を作っていきました。

2023年の『Sensory Flows』では、収録曲で試してきたバンド音楽を、作品の中心へ置きました。
SM入社後にロックグループで活動した時期もある彼が、好きだった音楽を表題曲に選んだのです。

「Small Things」は、力を抜いて歌いたい気持ちに合う曲でした。
wave to earthのキム・ダニエルへ自ら制作を頼み、サビには裏声を使っています。
声の軽さとバンドの響きが、前に出る方法を変えました。

大きく感情を押し出すことだけが、声の存在感を作る方法ではない。
伴奏の中に自然に収まり、小さな気持ちをそのまま置く歌にも、自分らしさを見いだしていきます。
好きなジャンルを収録曲で試す段階から、その音楽でアルバムを代表させる段階へ進んだことが、この時期の大きな変化です。

同年の「Floral Sense」では、ひとまず完成していたソロ曲に、aespaのWINTERを迎えました。
支え合う気持ちをもっと伝えるために、女性の声を加えることを考え、春の明るさを感じた彼女の歌声を選んでいます。
自分だけで歌い切ることより、曲に必要な関係を、声の組み合わせで描こうとした選択でした。

力強さをもう一度選び、2026年の歌へ

2024年の「It’s Complicated」では、再び力のある歌を前面に出しています。
多くの候補から、音とボーカルの両面で最も強さを感じた曲を選び、ファンが期待する自分の歌にも合うと考えました。
柔らかさを覚えた後も、強く歌う表現を手放してはいなかったのです。

2026年の日本作『咲き誇る時を待つのは』では、全十曲の作詞に参加しました。
四季を軸に、長く一緒に歩んできたファンへの思いを、ロック、ディスコ、カントリー・ポップなどへ託しています。
声の印象を季節と結びつけていた頃から、作品全体の物語を季節で描くところまで、その発想も育ちました。

同年の韓国作『Where We Are』の「Pedazos」は、静かな始まりから次第に激しくなる曲です。
本人はその展開を、複数の感情が同時に存在する人生と重ねています。
曲に出会った日の高揚と、家族を心配する思いが重なった経験も、この作品を今の自分に近いと感じる理由になりました。

アルバムではセルフディレクティングにも取り組み、九曲の作詞と一曲の作曲に参加しています。
時間が過ぎて初めて分かる感情や、一人で考えてきたことが、制作の材料になりました。
歌い手として用意された曲をどう届けるかに加え、今の自分をどんな作品として残すかまで、表現の範囲が広がっています。

イェソンの変化は、強い声から優しい声へ一直線に進んだものではありません。
澄んだ声、軽い裏声、他者と響き合う声を経験しながら、力強い歌にも違う意味を持たせてきました。
その曲では何を伝えたいのかを考え、声の使い道を選ぶ。
曲ごとの具体的な違いは、イェソンの歌い方で掘り下げています。

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