PaleduskのKAITOは、最初から歌うことに自信を持っていたシンガーではありません。
シャウトを入口にバンドを始め、聴き手と歌を共有する曲、メロディーを前に出す曲へと表現を広げてきました。
その過程をたどると、声の使い道が増えることと、自分の内面を歌えるようになることが、重なって見えてきます。
シャウトを入口に、声でできることを探していた
中学生の頃、友人にバンドへ誘われたKAITOは、楽器も歌も得意ではないけれど、シャウトならできると思ったと振り返っています。
地元のハードコアバンドのライブに衝撃を受け、活動にのめり込んでいきました。
後の多彩な表現の出発点には、まず叫ぶ声で音楽へ参加できるという実感があったのです。
早い時期から、関心が激しい声だけに限られていたわけではありません。
2017年の「Dark Eyes」ではラップも取り入れ、KAITOはヒップホップのラップとトラックの組み合わせに魅力を感じていると話していました。
好きな音楽を自分たちの曲へ持ち込む試みが、声のリズムにも及んでいます。
シャウトを得意な入口にすることと、そこから動かないことは別でした。
声を強く出す以外にも、言葉をリズムへ乗せて演奏と結び付ける方法がある。
この初期の関心は、後に曲の展開ごとに表情を変えるPaleduskを考えるうえでも、大切な下地です。

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「Lights」で、客席と分かち合う感情が前に出た
2018年の『Blue Rose』に入った「Lights」は、怒りを向ける曲とは違う役割を持ちました。
友人の死をきっかけに生やつながりを考えたKAITOは、言葉を書く前からギターのリフに感情を動かされていたといいます。
ギターのTSUBASAが作る親しみやすい旋律と、声を合わせられるパートが、その思いを客席へ開いていきました。
本人も、制作時から大きな会場で歌う景色を思い描いていました。
誰かを思う気持ちを、ステージ上の一人の告白だけで終わらせず、そこにいる人と共有する曲にしたのです。
ここでの変化を、単に歌が穏やかになったと捉えると、大事な部分を落としてしまいます。
強い声を持つ歌い手が、客席の声も入ってこられる曲を担うようになったこと。
歌の感情が届く先まで含めて、表現の幅が広がっています。
2020年、昔の曲を録り直す声と、新しい感情
2019年の「NO!」で、定型から離れる曲の構成に手応えを得ました。
歌を置く音楽の枠も、広がっていたのです。
2020年の『HAPPY TALK』では、「LIGHTS」を録り直しました。
KAITOは、大切な曲を新しい聴き手にも届けたいと考え、再録には自分のシャウトの成長を確かめる意味もあったと説明しています。
同じ曲を残しながら、その時点の歌い手として向き合い直した録音でした。
同作の「Q2」は、亡くなったスタッフのMasaへ向けた曲です。
作曲を担うDAIDAIは温かさを感じるメジャーキーや合唱できる旋律を選び、KAITOも怒りや憎しみを軸にする書き方から離れ、その思いを率直に表すことに挑みました。
「Lights」にも、すでに人とのつながりを歌う面がありました。
そのため、「Q2」で初めて優しい感情を知ったという順序ではありません。
以前からあった大切な人への思いを、別の曲調と、より直接的な言葉で差し出す選択が増えた、と捉えるほうが自然です。
KAITO自身も、『HAPPY TALK』の頃にバンドのスタイルが変わったと振り返っています。
DAIDAIが持ち込んだ、複数の音楽の発想を一曲へ組み合わせる作り方の中で、歌も一定の激しさだけを受け持つものではなくなっていきました。
「PALEHELL」で、曲全体を歌うことが選択肢になった
2024年のEP『PALEHELL』の表題曲は、バンドにとって初の全編歌モノとして送り出されました。
一部に旋律のあるパートを置く段階から、曲全体を歌で担う段階へ進んだ、分かりやすい節目です。
この曲でKAITOが扱ったのは、外から見た印象と、当人にとっての価値が違うという感覚でした。
他人にはつらそうに見えることが、自分には楽しく大切なことかもしれない。
好きなものを好きでいる難しさを、自分の声で歌う曲になっています。
メロディーを歌う範囲が広がると、言葉を持続する旋律の中へ置く場面も増えます。
激しい場面の勢いで感情をぶつけるだけでなく、一曲を通して自分の思いを運ぶ必要がある。
「PALEHELL」は、KAITOの声が担う役割を考えるときに、外せない作品です。

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「HUGs」と「I'm sorry」で、弱さも歌の中心へ
2025年の「HUGs」では、メロディーを歌うパートの増加が、本人の実感にもなりました。
KAITOは以前の自分を叫ぶことが中心だったと説明し、歌いたい気持ちはあっても、うまく歌えないという思いがあったことを明かしています。
歌う部分の増加は、初めから得意だったものを見せるというより、自分の可能性を広げる歩みでした。
「HUGs」では、普段なら照れて言いにくい、人に受け止めてほしい気持ちを歌にしています。
話し言葉では口にできない思いも、歌なら表せる。
KAITOはその曲を、聴き手が感情を外へ出す手段にもしてほしいと考えました。
続く初のフルアルバム『PALEDUSK』の「I'm sorry」では、悲しさの中に強さを感じ、弱さを表す方向へ進みました。
KAITOは、「HUGs」以降、自分の弱い部分も書けるようになったと振り返っています。
怒りや楽しい気持ちが、以前の偽物だったわけではありません。
そこへ、うまくいかない自分や、誰かに支えてほしい自分も加わったのです。
歌える旋律が増えることと、声に乗せられる感情が増えることを、切り離せない時期になっています。
2026年、KAITOはライブで歌いたい曲として「HUGs」を挙げました。
制作時には歌唱面でも気持ちの面でも万全ではなく、自分と向き合う必要があったといいます。
歌うたびにつらかった時期を思い出しても、諦めずに曲を形にした当時の自分を尊重できることが、今この曲を歌う意味になっています。
憧れの声を追いながら、自分の声を引き受ける
2026年4月のZepp DiverCity公演では、ONE OK ROCKのTakaらを迎えた一夜の終盤に「LIGHTS」を披露しました。
KAITOは、Takaのように歌えたらと思う気持ちを明かしながら、自分は自分でいいという思いも伝えています。
初期から大切にしてきた曲へ戻る場面で、自分の声を受け入れる言葉が出たことは印象的です。
ここまでの変遷は、シャウトを卒業して普通の歌へ進むという一本道ではありません。
昔の曲を歌い直す声、客席と共有する旋律、弱さをさらけ出す歌が、重なってきた過程です。
憧れの歌手から刺激を受けながらも、そのすべてをKAITO自身の表現として引き受けるところに、現在の歌い手としての姿があります。
曲の中でシャウトや旋律をどう組み合わせているのかは、KAITO(Paledusk)の歌い方で掘り下げています。
変遷と併せて見ると、同じ激しい声にも、曲ごとに異なる役割があることが分かります。

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