オリヴァー・サイクス(Bring Me The Horizon)の歌唱変遷|歌う声を学び、20年前のスクリームを録り直すまで

NMEの取材に答えるオリヴァー・サイクス(2024年6月公開/画像:NME) オリヴァー・サイクス
NMEの取材に答えるオリヴァー・サイクス(2024年6月公開/画像:NME)

2026年、オリヴァー・サイクス(Bring Me The Horizon)は、20年前のデビュー作を録り直すため、昔の声の出し方を思い出していました。
その間に、本格的にメロディを歌うことを学び、柔らかな裏声や複数の歌を重ねる表現も増やしています。
声の選択肢を広げた人が、なぜ再び最初のスクリームへ向かったのでしょうか。
本人と制作側の説明をたどると、新しい歌を身につける苦労と、最初の録音に残った心残りがつながってきます。

Bring Me The Horizon「Pray For Plagues」2026 Repented版の公式リリックビデオ。

2006年、手探りで残したデスコアの声

2006年の『Count Your Blessings』は、Bring Me The Horizonのデビューアルバムです。
冒頭曲「Pray For Plagues」は、初期のデスコアの歌唱を伝える作品でもあります。

Bring Me The Horizon「Pray For Plagues」公式MV(2006年の原盤に対応、2007年投稿)。

後年、オリヴァーは、このアルバムを嫌っていたというより、録音の仕上がりにずっと満足していなかったと説明しています。
予算も経験も限られ、録音や音作りの知識も乏しかった時期の作品でした。
完成したCDを車で聴いたときにも、思い描いていた音との違いを感じたと振り返っています。

それは、後から音楽の好みが変わって、若い頃の作品を遠ざけたという話とも違います。
本人によれば、録音直後から納得できず、長く聴き返していなかったのです。
スクリームを中心とした初期の姿と、その姿を思いどおりに録音へ残せたかどうかは、分けて考える必要があります。

2006年のBring Me The Horizon(写真:Naki/Redferns)
2006年のBring Me The Horizon(写真:Naki/Redferns)。
画像出典:画像掲載元

当時の声を残す原盤は、その後の変化を考える出発点になります。
2026年の再録に向き合った背景にも、この録音への思いがありました。

2013年、本格的に歌い、声を重ねることへ挑む

2013年の『Sempiternal』は、本人が初めて本格的に歌った作品と振り返るアルバムです。
この時期には、ジョーダン・フィッシュの助けも得ながら、メロディを歌うことを学んでいました。

その挑戦が具体的に分かる曲が「And The Snakes Start To Sing」です。
当時の取材でオリヴァーは、歌唱面で自分の限界に挑んだ曲として挙げ、それまでになく歌を重ねたことが大変だった一方、やりがいも大きかったと話しています。

Bring Me The Horizon「And The Snakes Start To Sing」公式音源(2013年)。

この曲には、本人にとって非常に個人的な、人生の暗い時期の経験も込められていました。
2013年の激ロックの取材では、出来事からまだ一年ほどなのに、聴き返す自分は当時とは違う場所にいると感じる、と振り返っています。
録音した歌が残っているからこそ、そのときの自分との距離も分かる。
声を重ねる挑戦は、複雑な気持ちを作品へ残す経験にもなっていました。

ここで広がったのは、メロディを歌うことに加え、録音の中で複数の歌を組み合わせる方法でした。
ひとつの声を強く届けることから、声をどう重ねて曲を作るかへも関心が向かっていたのです。

2014年公開のBring Me The Horizonの写真(中央がオリヴァー・サイクス)
2014年公開のBring Me The Horizonの写真(中央がオリヴァー・サイクス)。
画像出典:画像掲載元

「Drown」から、自分の歌をさらに押し出す

次の変化は、『Sempiternal』のツアーの途中から始まります。
レコード会社からさらにシングルを出す話を受けたとき、バンドの状態の良さを感じていたオリヴァーは、既発曲を選ぶ以上のことができると考えました。
そこで生まれたのが、2014年に発表した「Drown」です。

Bring Me The Horizon「Drown」公式MV(2014年のシングル版)。

2015年の激ロックの取材で本人が語っているのは、ミュージシャンとして自信がつき、もっと強い曲を書けると感じたことでした。
次のアルバムでは、長くスクリームをしてきた人だと知る聴き手を、歌唱でも驚かせたいという目標を持っていました。
新しい声を初めて作品へ入れる段階から、その歌を前へ出してバンドの可能性を広げる段階へ進んでいたのです。

2015年、柔らかな裏声で暗い感情を歌う

2015年の『That's The Spirit』では、怒りや切迫感に加え、もっと複雑な気持ちを歌で伝えようとしています。

その選択が分かるのが、アルバムの最初の曲「Doomed」です。
本人は、曲名の暗さに対して、あえてファルセットを使うことに意味があったと説明しています。
柔らかな歌声と絶望的な言葉を組み合わせることで、暗さの中に高揚もある感覚を表そうとしていました。

Bring Me The Horizon「Doomed」公式音源(2015年の原盤、2020年投稿)。

2024年、得意とは言えない裏声にも取り組み続ける

2024年の『POST HUMAN: NeX GEn』について、オリヴァーは、ダン・ランカスターとの制作でファルセットに取り組む機会が増えたと話しています。
裏声は自分の得意分野ではなく、声を行き来させることにも難しさを感じていたという説明です。

Bring Me The Horizon「Kool-Aid」公式MV(2024年)。

「Kool-Aid」を取り上げた制作の対談では、それまでにやったことのない歌の表現にも取り組めたと語っていました。
一人では分かりにくかった部分も、歌うことに長けたダンと作る中でつかめるようになったという説明です。
ダンの側も、本人が思っているより裏声は良いと励ましていました。

「Doomed」で裏声を使ってからも、それで学び終えたわけではありません。
発表された曲だけを並べると滑らかに広がって見える声の選択肢に、本人の苦手意識や、共同制作で得た発見が伴っていました。

2026年、昔の声も思い出しながらデビュー作を再録する

2026年7月には、初期作品を全面的に録り直した『Count Your Blessings | Repented』を発表しました。
オリヴァー、リー・マリア、プロデューサーのバスター・オデホルムらが、作品を一から作り直しています。

そこで求めたのは、2006年に思い描いていた音を、今の経験で形にすることでした。
本人によれば、再録の最初のミックスは現代的で迫力があったものの、それだけでは狙いに届きませんでした。
初期作に多く詰め込まれたギターのフレーズも、はっきり聴こえる必要があったのです。
ソニーの発売告知でも、歴史を置き換えるためではなく、頭の中にあった音を実現したかったという本人の説明が紹介されています。

「Pray For Plagues」の再録作業では、昔使っていた声の出し方を思い出す過程もありました。
音作りを見直すことと、当時使った声を取り戻すこと。
再録には、その両方の仕事がありました。

歌う声を学び、裏声や声の重ね方を広げ、その経験を持って初期作品へ戻る。
オリヴァーの変遷は、表現に使える声を増やし、かつての声とも向き合い直してきた歩みです。
曲ごとの声の切り替えと録音での重ね方は、オリヴァー・サイクスの歌い方で詳しく見ていきます。

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