大神ミオの歌を、力強い高音だけで捉えると、近年の作品の大切な部分がこぼれてしまいます。
静かな曲で気持ちを伝えること、別の歌声と重なること、以前の曲を今の作品へ迎え入れること。
活動を重ねるにつれ、持っている声をどこで、どう生かすかという選択が広がってきました。
客席と向き合った初期のステージ
大神ミオは、ホロライブゲーマーズに所属するVTuberです。
ゲームや日々の配信と並んで、カバー曲やオリジナル曲を通して歌を届けてきました。
2020年1月の『hololive 1st fes.』では、「夜もすがら君想ふ」を披露しました。
客席へ呼びかけ、手拍子を受けながら歌うステージです。
初期の時点から、力強い声を出すことと、目の前の人を歌へ招くことが結び付いていました。
同年12月の『hololive 2nd fes.』で選んだのは、水樹奈々の「PHANTOM MINDS」。
勢いのある歌と動きで見せる曲は、早くから彼女の表現の一部にありました。
後に柔らかな曲へ広がっていくからこそ、この出発点も覚えておきたいところです。

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「Howling」で、高音の強さを自分の曲にした
2021年8月、初のオリジナル曲として「Howling」と「わんわん!わおーん」を発表します。
ZAQが手掛けた「Howling」と、立秋による「わんわん!わおーん」。
同じ歌い手から、かっこよさと親しみやすさの異なる面が示されました。
「Howling」の旋律は、制作の途中で高音を増やす方向へ変わっています。
ZAQは、当初はサビの高低の釣り合いを取っていたものの、さらに高音を使いたいという要望を受けて作り直したと説明しました。
高い声を生かすことが、曲を作る段階から選ばれていたのです。
カバーで好きな曲を歌うことから、自分の声で何を見せたいかを曲作りへ反映することへ。
オリジナル曲を持つ意味は、曲名が増えることだけではありません。
歌手として前に出したい面を、作り手と一緒に形にできるようになることでもあります。
『Night walk』で、得意な勢いの先へ進んだ
2023年の『Night walk』では、「夜明けのメロウ」で従来の勢いとは違う歌へ挑みました。
本人も、アルバムを作る間に歌い方が増えたと振り返っています。
一方、同年の『hololive 4th fes.』では、「夜光通信」で力のある歌声を披露しています。
新しい表情を探す時期にも、堂々と歌う持ち味は続いていました。
柔らかい表現を覚えることが、強い声を手放すことにはなっていません。
「ナイトループ」を約2か月練習した経験は、歌への取り組み方も変えました。
感覚だけで歌わず、歌い方を考えて準備する習慣ができたといいます。
ここには、曲調の変化とは別の成長があります。
好きな曲を覚えて歌うところから、難しい箇所を自分の課題として扱い、録音までに準備するところへ進んだことです。
表現の幅を支えるものが、得意な声だけでなく、曲に向き合う方法にも増えていきました。
共演曲では、いつもの印象から離れる場面も
2023年のholo*27のステージでは、博衣こよりと「アニマル」を歌いました。
この共演は、普段クールな印象もあるミオが可愛らしさを、こよりがクールな面を見せた場面として紹介されています。
互いのいつもの印象が入れ替わるような組み合わせでした。
同年のBlue Journeyでは、猫又おかゆ、鷹嶺ルイとの「夏を許せない」に参加します。
歌に語りを交えるこの曲は、複数の声で内面の重い感情を描く場にもなりました。
ソロで客席を引っ張るときとは、声に求められる役割が違っています。
こうした共演を挟むと、歌声の変化を年齢や時間だけで説明しにくいことが分かります。
同じ時期でも、相手や曲の人物像が変われば、前に出す表情は変わる。
ミオの歩みには、別の歌い手と一緒にいることで見えてくる幅もあります。
『My Sparkle』で、聴く人の時間へ近づく
2024年の生誕ライブでも、その幅は選曲に表れていました。
冒頭に「Howling」「夜光通信」「夜明けのメロウ」を並べ、仲間との共演を経て、新曲「小心旅行」へ進んでいます。
強さ、落ち着き、共演の楽しさを、一つの公演の中に置く形です。
「小心旅行」は2024年8月に配信された曲です。
翌年のアルバムへつながる作品として、先に聴き手へ届けられていました。
2025年8月の『My Sparkle』は、旅をテーマに、温かさや癒しを前に出した作品になりました。
ミオは、前作の大人びた雰囲気とは違う面を見せたかったと話しています。
好きな景色や移動する時間を、歌を聴く時間へつなぐアルバムです。
「カメリア」などのバラードも好評でした。
その反応が、柔らかな曲へ進む後押しになりました。
同作の冒頭には「Howling (Rearrange ver.)」が置かれています。
穏やかな作品へ向かう一方で、最初の代表曲も今のアルバムへ迎え入れました。
昔の自分と新しい自分が、同じ作品の中に並んでいます。
ソロライブで、声を聴かせる場面を広げた
2025年9月、初のソロライブ『Our Sparkle』は「Howling」で幕を開けました。
生バンドを背にした力強い始まりに対し、中盤にはアコースティックの時間を設けています。
「カメリア」はピアノだけの伴奏で歌われ、声とことばへ向き合う場面になりました。

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ミオ自身、生の楽器が好きで、シンプルな演奏の中で自分の声を聴いてほしいという意図を説明しています。
曲順に緩急を付けるだけでなく、声の受け取られ方を考えた構成でした。
大きな会場でも、ずっと大きな音で押すことだけを選んでいません。
アルバムで増やした歌の表情を、ライブの流れとして届ける。
ここまで来ると、強さと柔らかさは二者択一ではなく、一人の歌手を形作る両方の要素です。
どちらを出すかによって、客席との距離の作り方も変えられます。
2026年、三人で歌うRosaMiAへ
2026年には、アキ・ローゼンタール、AZKiとのRosaMiAでも活動を進めました。
9月に三人のアコースティックライブを行い、「Blossom Sinfonia」を発表しています。
ソロライブで声を届けた先に、三人の声を重ねる作品が加わりました。
強い高音を自分の曲にした時期から、曲ごとの準備を深め、穏やかな歌や共演へ表現を広げてきた大神ミオ。
その変化は、以前の声を捨てることではなく、持っている声の使い道を増やす歩みとして捉えられます。
それぞれの曲でどう声を選んでいるかは、大神ミオの歌い方で詳しく紹介しています。

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