ONE N' ONLYのEIKUには、高い声が思うように出なくなり、別の歌い方を探した時期があります。
その後、一人で歌を担うグループから三人のボーカルがいるグループへ進み、高音の強さも、中音域の温かさも、自分の持ち味として生かすようになりました。
近年のラップまでたどると、彼の変化は、出せる声を増やすことと、誰の声にどうつなぐかを考えることの両方にあります。
高い声が出なくなったときに出会った「メロディー」
EIKUこと山下永玖は、小学生の頃からドラムやギターに親しみ、弾き語りでも活動していました。
ところが中学三年から約二年間、変声期で高い声が出にくくなったといいます。
そこで出会ったのが、玉置浩二の「メロディー」でした。
深みのある声をまねしようと試すと、それまでにない声が出るようになった。
EIKUは2017年、そう振り返っています。
以前の高音へ戻ろうとするだけでなく、違う質感を試す中で、自分の声の可能性を見つけていったのです。
変化の途中にも、ステージには立ち続けていました。
2015年5月の渋谷LUSHでは、変声期で声がうまく出ないことがあると話しながら、オリジナル曲や「ひまわりの約束」を披露しています。
当日の歌は、若々しい高音と、温かく芯のある声の両方を感じさせるものとして評されました。
本人の悩みと、客席に届いた魅力は、必ずしも同じではありません。
難しさを抱えながらも歌い、その中で使える声を探していた時期として見ると、後の表現につながる歩みが分かります。

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一人で担う歌から、三人の声が並ぶ歌へ
さとり少年団でボーカルを担っていたEIKUに、2018年、新しい環境が生まれます。
EBiSSHとの合同ユニット、ONE N' ONLYでは、REIとTETTAも歌うことになりました。
「I'M SWAG」のデモは普段の曲よりキーが高く、不安もあった一方、二人がいることが挑戦する支えになったといいます。
一緒に歌ってみると、大人っぽいREIの表現や、TETTAの色気も新しい刺激になりました。
声に合うパートが選ばれるため、自分がどう歌うかへの意識も強くなります。
単に歌う人数が増えたのではなく、すぐそばで違う声を知り、自分の歌へ取り入れる機会が増えたのです。
2020年の「Shut Up! BREAKER」では、その挑戦がさらに強い方向へ向かいました。
SNSの誹謗中傷に対するメッセージを持つ曲で、EIKUは前作「Category」以上に攻撃的な表現を求められています。
声の強さを出すことにも、高いパートの多いサビにも苦労したと語りました。
ただし、同じアルバム『ON'O』には「Beautiful」もあります。
こちらでは口角を上げ、聴き手も笑顔になるように歌いました。
強い声へ進む時期にも、親しみを感じさせる歌は残っていたのです。
「Video Chat」で、声を飾らない方向へ
2021年の「Video Chat」では、EIKU自身が声質の変化をはっきり説明しています。
それまでの社会へのメッセージを持つ曲では、少しガラついた格好よさを意識していた。
一方、離れた相手とも笑顔でつながろうとするこの曲では、少年のような声を思い描き、飾りすぎない歌い方を選びました。
ここで変わったのは、歌の相手への近づき方です。
強く訴えかける曲と、同じ時間を楽しく過ごそうと誘う曲では、必要な声の表情が違う。
持っている強さをどこまで出すかも、表現の一部になっていきました。
同年末の「We Just Don't Care」では、先が見えない時期に感じた不安を、自分たちの経験も重ねながら歌っています。
HAYATOは、とりわけEIKUの歌い出しと中音域を気に入っていると話しました。
高い声で押す場面とは違う場所にも、仲間が頼りにする魅力がありました。
歌割りにも、自分たちの言葉にも関わる
2022年の「STARLIGHT ~未来ノトビラ~」では、EIKUから相談を持ちかけ、ボーカル三人で歌割りを話し合いました。
自分の担当部分だけを仕上げるのでなく、REIからどうつなぐかも考えて歌い直しています。
REIが強い思いを出し、EIKUが安心させるように受け取る、という関係も生まれました。
2023年の「Reflection」では、TETTAとともに作詞にも参加します。
歌で見せる曲が欲しいという話から、プロデューサーのJUNEと音を鳴らし、音に合わせて歌うリズムを考えるうちに、曲が形になっていきました。
EIKUは、自分たちが考えていることをそのまま届けたくて、日本語を大切にしたと話しています。
最初の歌詞は本音が強く出すぎたため、JUNEの助言で言葉を和らげる修正も重ねました。
歌いたい気持ちをそのまま押し出すだけでなく、相手へ届く形を探す。
声を選ぶ仕事に、歌う言葉を作る仕事も加わってきたのです。
弾き語りを残しながら、音の動きも変えていく
同年5月の『LIVE Meets Vol.3』では、ギターを持ち、ソロでステージに立ちました。
「Destiny」と「Video Chat」は、初めて自身のグループの曲を弾き語りで披露した例です。
ダンスボーカルの活動を広げる一方で、ギター一本で歌う形も続いていました。
経験豊富だから、いつも余裕があるわけでもありません。
この日EIKUは、ギターを持って歌うと緊張がほどけにくいこと、ライブを重ねる中でも、その日に声が出るか不安になることを明かしています。
それでも、自分の歌を誰かの勇気につなげたいと話し、歌を届けました。

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同年夏の「EVOL」では、歌い回しそのものに新しい課題が生まれます。
それまでは音を最初から勢いよく当てることが多かったのに対し、この曲では下からすくい上げ、波打つように歌う部分が増えたといいます。
南米での経験を生かした曲作りは、曲の雰囲気だけでなく、音へ近づく動きにも及びました。
強い声を保ちながらも、すべての音を同じ勢いで始める必要はない。
音を当てるまでの動きに変化をつけることが、新しいリズムの感じ方につながっています。
ラップでも、自分の声で役割を作る
2024年のファンクラブツアーでは、メンバーの担当を入れ替えるメドレーも披露しました。
「Departure」でHAYATOの巻き舌を取り入れ、「Set a Fire」ではラップを担当。
普段と違う場所を歌う企画が、互いの表現を知る機会にもなっています。
2025年には「BOOM BASH」以降、ラップを担う場面が増えました。
「BLAST」では、二番を歌うHAYATOと重ならないよう、自分のハスキーさを生かす方法を探っています。
音域も中音域で自分に合い、メロディを歌うとき以上にさまざまな声を取り入れやすかったと振り返りました。
さらに『AMAZONIA』の「Gooey」では、少し鼻にかけた、愛嬌と癖のある声も選んでいます。
温かく包む声だけでなく、曲の面白さを作る質感としても、自分の声を使うようになりました。
2026年9月の初アリーナツアー最終公演でも、REI、NAOYAとの「SCARS」でラップを重ねています。
ボーカルとして築いた持ち味を保ちながら、曲の中で担う役割は広がり続けています。
思うように出ない声から別の質感を探し、仲間の声を知り、音の入り方や担当するパートも変えていく。
EIKUの歩みには、一つの得意な歌い方を守るだけでは生まれなかった選択が積み重なっています。
温かさと強さを曲ごとにどう使うかは、EIKUの歌い方で具体例を掘り下げています。







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