リョウクの歌には、細やかな感情を運ぶ澄んだ声と、思いがあふれる瞬間の大きさがあります。
SUPER JUNIORの中で育てたその声は、ソロになってから、童話の世界、別れの痛み、日常への励ましへと居場所を広げてきました。
変わったのは、声の印象だけでなく、誰のどんな気持ちを歌うかという選択でした。
きれいに歌う声に、人物の内面が加わる
2005年にSUPER JUNIORとしてデビューしたリョウクは、イェソン、キュヒョンとのボーカルユニット、SUPER JUNIOR-K.R.Y.でも歌ってきました。
2015年の日本ツアー初日には、自分の歌う「凝結」で静かな世界を作り、その後は三人で「My Love, My Kiss, My Heart」を披露しています。
一人の歌と、異なる声が集まる歌の両方が、ソロアルバム以前から活動の柱でした。
もう一つの大切な場所が、ミュージカルです。
2011年の『オオカミの誘惑』から舞台に立ち、2014年の『女神様が見ている』では、戦争によって心に傷を負ったスンホを演じました。
それまでの青春ものやショーの要素が強い作品とは違い、内面を表す演技が求められました。
歌いながら、共演者と人物の感情を共有する。
出演しない日にも劇場へ足を運んだのは、その流れをつかむためでした。
声が美しく届くことに加え、その人物がその場面で歌う必然性を考える経験が重なっていきます。
初ソロでは、持っていた透明感を正面に置く
初ソロを前に出演した『覆面歌王』で、リョウクは名前を隠して歌いました。
ファン以外にも歌を届ける場でしたが、本人は、普段から耳の肥えたファンの前で鍛えられていたので、楽に歌えたと振り返っています。
活動11年目のメインボーカルが、ソロでは新人として、自分の声を知ってもらおうとする出発でした。
表題曲「The Little Prince」で描くのも、単純に無邪気な世界ではありません。
恋で苦しむ男性が『星の王子さま』の王子と対話する設定を、繊細な声で歌っています。
童話を通すからこそ伝わる寂しさが、初ソロの声の居場所になりました。
2016年1月、初のソロミニアルバム『The Little Prince』を発表します。
制作では、録音を聴いたイ・スマンからマイクの問題を指摘され、録り直したという出来事もありました。
歌い直しの背景にあったのは、声を変える指導ではなく、その声をどう収めるかという録音の問題です。
この作品は、大胆な方向転換より、澄んだ声という美点を正面に据えた出発でした。
その純粋な印象が、童話的な世界に重なります。
同年1月の『人気歌謡』での「The Little Prince」は、伴奏のない歌声から始まります。
後にオーケストラの響きが加わる構成によって、最初の声の繊細さと、歌が大きく広がる場面が、一つの流れになりました。
小さく始めて最後に思いを開く形は、後のソロを考えるうえでも大切です。

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軍楽隊で学び直し、選ぶ音楽が広がった
初ソロで、声の持ち味をはっきりと示した後に、歌う環境そのものが変わりました。
すでに長いキャリアを持っていたリョウクが、別の音楽経験を持つ人から学ぶ側に戻ったのです。
2016年の入隊後、軍楽隊では声楽を学んだ先輩から発声や呼吸を教わりました。
トロットを含む幅広い歌に接し、除隊後にはジャンルへのこだわりが柔軟になったと振り返っています。
その経験を経た『Drunk on love』では、得意なバラードに加え、R&Bなどにも挑戦したいと考えました。
自分の声で親しみやすく伝える方法を探したといいます。
アルバムが発売されたのは2019年1月です。
「I'm not over you」は、別れた後の思いを手紙のように重ね、ピアノから激しい感情とオーケストラへ進む曲でした。
童話的な世界から、大人の別れの苦しさへと進んだ作品です。
一方、R&Bポップ「One and Only」では柔らかな声を生かしました。
一枚の中で、劇的な歌と、親しく近づくような歌を聴かせています。
舞台でも、2019年の『狂炎ソナタ』では、複雑な心理を持つ作曲家Jに挑戦しました。
本人が惹かれたのは、その人物の狂気をどこまで表現できるかという難しさでした。
以前の純粋な人物から離れた役を引き受け、歌手としての持ち味とは違う感情にも向き合っていた時期です。
三人の声を考え、ソロでは傷ついた感情へ踏み込む
2020年、K.R.Y.は韓国で初のミニアルバム『When We Were Us』を発表します。
リョウクは、全体のボーカルの方向や三人のハーモニーについて一緒に考えたと話しています。
ソロと並行し、三人の歌も組み立てていました。
2022年のソロ『A Wild Rose』では、恋の痛みをさらに細かく描きます。
表題曲「Hiding Words」は、中低音から高音までの繊細な表現を求める曲で、本人は傷ついた愛へのやり場のない思いを表したと説明しました。
また「Bluebird」では、これまでのアルバムにない、整いすぎない荒さのある雰囲気にも挑んでいます。
「Hiding Words」の伴奏は、温かなピアノやギターから始まり、後半に豊かなオーケストラとコーラスが加わる作りです。
初ソロにもあった、声から大きな世界へ進む構成を使いながら、描く感情はより切実になりました。
歌の大きさを、物語の中で何が起きているかと結びつけて考えられる曲です。

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同年11月の日本公演『秋宴』では、「茜色に染まる空の下」と「恋に落ちて」を繊細なボーカルで披露しました。
さらにソロ曲やダンスも織り込み、一つの公演で複数の表情を見せています。
切ない歌を深める一方で、ステージ全体を一色の悲しみにするわけではありませんでした。
休んでいいと伝える声が、ポップロックへ
2023年の「It's okay」は、忙しく過ぎる日々の中で、何もしない時間を肯定する歌です。
クラリネットとピアノから始まり、ストリングスへ広がる構成で、歌の相手が抱える疲れに寄り添います。
失恋の痛みを描いた作品の後に、日常を生きる人へ向いた励ましが置かれました。
ソロ10周年の2026年には、ポップロックの「Runaway」を発表しました。
本人は歌詞や歌い方を研究し、完成度を上げるために録り直しを重ねたといいます。
夏らしい爽やかさも、単に明るい曲を選んで得られたものではなく、声の出し方を検討した結果でした。
8月の日本公演『紺碧』では、「僕のほし」と「青と夏」で幕を開け、「Runaway」では客席とのコールアンドレスポンスも行いました。
バンドと歌い、観客の声を受け取る場面が、新しい曲の持つ開放感につながっています。
内面の物語をじっくり届ける歌と、会場全体で楽しむ歌を、一人の歌手が行き来していました。
公演の途中には、花で飾ったブランコに揺られて歌い、穏やかな空気を作る場面もありました。
初ソロの王子のような繊細さを思わせる見せ方と、バンドで夏を楽しむ姿が、一つのステージに共存していたのです。
初ソロで前に出した透明感は、その後の表現を狭めるものにはなりませんでした。
別れの激しさにも、傷ついた思いにも、夏の明るさにも、その声で向き合ってきたのがリョウクです。
その歩みは、澄んだ声を捨てて別人になる変化ではなく、声の中へ入れられる感情と、声を届ける相手を増やす変化と見ることができます。
個々の曲での裏声や発音、声の強弱については、リョウクの歌い方で掘り下げています。
時期を追った後に曲の細部へ戻ると、同じ持ち味をどう使い分けているかにも目が向きます。







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