PaleduskのKAITOの歌を、激しいシャウトの一言で捉えると、「HUGs」や「PALEHELL」で広がった表現が見えにくくなります。
旋律を歌う声と荒い声を、どのような曲で、何のために使うのか。
声の違いだけでなく、録音で歌を作る過程にも、その答えがあります。
「HUGs」は、歌う声と叫ぶ声の関係が聴きどころ
Triviumのマット・ヒーフィーが「HUGs」で注目したのは、冒頭の歌うパターンの下に、重いスクリームが重なる作りでした。
さらに、KAITOが高く歌うところから、非常に高く激しい声へ移る点も挙げています。
一種類のシャウトで押し切るのではなく、歌う声の高さと荒さの組み合わせが、表現の幅を作っているのです。
声を聴き分けるときは、高いか低いかに加えて、旋律を追う声なのか、荒い質感が前に出る声なのかを分けてみると、曲の作りが見えます。
また、声が切り替わることと、複数の声が重なって聞こえることも別です。
「HUGs」の冒頭では、声が重なることで、歌の旋律を保ちながら激しい質感も加える作りになっています。
KAITO自身が惹かれるのは、強さを持ちながら、感情や柔らかさも感じさせる声です。
Foo FightersやNickelbackを聴くことを話しながら、叫ぶ表現を中心にしていた自分にも、メロディーを歌う部分が増えてきたと説明しています。
その関心を踏まえると、強い声の中に何を残そうとしているのかが、聴くときの手掛かりになります。
激しさを保ちながら、言葉の感情や旋律をどう感じさせるか。
「HUGs」は、その両方を一曲の中で確かめられる代表曲です。
「RUMBLE」では、誰の声かを分けて聴く
「RUMBLE feat. Masato from coldrain」では、KAITOのデスボイスと、ゲストのMasatoのクリーンな声が対照を作ります。
MasatoはKAITOが以前から憧れていた歌い手でもあり、この曲は異なる声を持つ二人が出会う作品です。
旋律的な部分もすべてKAITOの声として捉えると、二人で作る曲の表情を見失ってしまいます。
ここでの聴きどころは、一人の声の器用さだけではありません。
荒い声の力感と、旋律を明確に描く声が、別々の歌い手によって置かれていることです。
KAITOの役割が分かると、共演者の声に何を任せ、自分の声で何を押し出しているのかへ、耳を向けられます。
一方、「PALEHELL」は、バンド初の全編歌モノとして位置付けられた曲です。
こちらを併せて聴けば、ゲストとの声の対比とは別に、KAITO自身が旋律を担う表現を考えられます。
「PALEHELL」で歌うのは、他人からどう見えるかと、自分が大切にしていることとの隔たりです。
曲全体を歌う声には、自分の好きなものを手放さずにいる思いが託されています。

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録音では、作曲者の歌をそのままなぞらない
作曲するギタリストのDAIDAIは、KAITOの録音中にも実際に歌って、欲しいニュアンスを伝えます。
ただし、その歌い方をそっくり真似してほしいわけではありません。
KAITOが感情を自分のものとして受け取り、自分なりの表現へ変えることを大切にしています。
同じ音程の並びでも、何を伝えようとして歌うかで、声の表情は変わります。
ここでは作曲者の実演が、完成形を複製するための見本というより、感情の強さや方向を伝える役割を持っています。
KAITOはそこから、自分の声でその曲を成立させる方法を探しているのです。
DAIDAIの曲作りは、まずアコースティックギターでコードと旋律を考えるところから始まります。
複数の案を作り、一曲へ組み合わせていく方法です。
細かく変化する音楽の中にも歌の発想が先にあり、KAITOはそのつながりを声で担います。
曲の展開が複雑だから、歌もただ目まぐるしく変えればよい、ということにはなりません。
各場面の旋律や気持ちを受け取り、違う表情を一人の歌としてつなぐ必要があります。
録音時に言葉だけでなく実際の歌でやり取りすることは、そうした細かな違いを共有する方法にもなっています。
リズムや曲の展開に合わせ、感情の置き方を変える
「Dark Eyes」でラップに取り組んだ際、KAITOはラップとトラックが合わさる面白さを語っていました。
声を旋律へ乗せるだけでなく、言葉をリズムの一部として扱うことも、彼の表現に含まれています。
「HUGs」は、DAIDAIが人生をイメージし、サビ以外を繰り返さない構成にした曲です。
同じ型に何度も戻る作りではないため、場面ごとに進んでいく感情を歌が受け持ちます。
KAITOは「HUGs」を歌うと、制作時の苦しかった気持ちが戻ってくると話しています。
それでも、諦めずに曲を作った自分への思いがあり、ライブで大切にしている曲です。
歌う行為が、過去の感情を今の自分で捉え直す時間にもなっています。
高音や荒い声がある箇所だけを抜き出すと、そうした曲全体の流れが抜けてしまいます。
どの感情を前の場面から受け取り、次へ渡しているのか。
声の勢いと同時に、歌が進む方向を追うことが、KAITOの表現を理解する助けになります。
歌が届く場所を、バンド全体で作る
ギターのTSUBASAは、KAITOの歌とDAIDAIのリードを届けるために、ステージ上で自分のアンプを鳴らす方法を見直しました。
小さい会場の最前列で、自分のギターの音ばかりが聞こえることを避け、客席側のスピーカーから音を出す形へ変えています。
歌の存在感は、歌手が声を強くすることだけで決まるわけではありません。
この例は、KAITOが別の発声を身に付けたという話ではなく、歌が聞こえる環境を整える話です。
声の力と、声が届くための音の配置は、分けて考える必要があります。
激しいバンドの中で歌を中心に置くために、演奏側も選択を重ねているのです。
KAITOが目指しているのは、技巧の巧みさだけでなく、その人だと分かる声です。
憧れるシンガーについて話すときにも、誰とも置き換えられない声の存在感へ関心を向けています。
「HUGs」での声の重なり、「RUMBLE」での共演者との対比、DAIDAIと歌を作る録音のやり取り。
これらを通して見えてくるのは、強い声を持つだけでなく、曲の中でその声の役割を選び続けるシンガーです。
歌う表現をどう広げてきたかは、KAITO(Paledusk)の歌唱変遷で時期を追って紹介しています。

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