濵田崇裕の歌には、柔らかく伸びる声の魅力がある。
相手とハモる時には声色を変え、言葉が難しいフレーズは口になじませていく。
響きの印象と、歌を合わせるための細かな作業を知ると、濵田の歌い方が見えやすくなる。
やさしいひと 公式音源(2021年)
柔らかな響きと、歌い出しで聴かせる声
2022年の歌唱評で、音楽ライターの北村由起は、濵田の声を伸びやかで柔らかいシルキーボイスと表現した。
なめらかな響きと音程の安定感を持ち味に挙げ、ソロパートのフェイクや、相手に応じたハモリのアレンジにも触れている。
同じ評では、「Mixed Juice」の歌い出しをソウルフルなボーカルとして取り上げていた。
柔らかさと、曲の入口を印象づける表情が、一人の歌い手の中にある。
濵田の声を捉える時は、音の高さだけでなく、曲の中でどんな響きの役割を担うかも聴きどころになる。
Mixed Juice MV・YouTube版(2022年)
ハモる相手に合わせて声色を変える
2019年、濵田はグループ内の歌の役割について、神山智洋と自分には声を変える役割があると話していた。
神山と一緒にハモると、言葉で細かく確認しなくても歌で分かり合える感覚があるという。

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「GOD DAMN」では、神山との二人の歌を聴くことができる。
2021年の紹介記事では、高音のフレーズからメロディー、ハモリまでこなす濵田の歌が、曲の魅力として挙げられていた。
自分の声色を変えるという本人の考えと、相手に応じてハモリをアレンジするという歌唱評は、同じ持ち味を別の角度から表している。
自分の声色を選ぶ時にも、相手と重なった時の音を意識する。
濵田のハモリを知る上では、この合わせ方が一つの手がかりになる。
二人の歌では、主旋律を受け持つ箇所と、相手の旋律に重なる箇所とで、声の役割が入れ替わる。
「GOD DAMN」を聴く時にも、濵田の声だけを追った後に、二人の声が合わさった響きへ耳を向けると、本人のいう声色の調整を考えやすい。
声そのものの印象と、重なった時の印象を行き来できる曲である。
一人で覚えた音を、全員の歌へ合わせ直す
ハモリの柔軟さを考える時には、一人での練習と共演者との稽古をどうつなぐかも大切になる。
2018年の『市場三郎~グアムの恋』では、濵田は音を頭に入れるため、繰り返し聴いて覚えていた。
それでも、自分では覚えたつもりの歌が、全員で合わせると全く違って感じられると語っている。
同じ会見で、共演した大和田美帆は、自分が楽屋で歌っていると、別の楽屋から濵田の声が重なってきたと明かした。
稽古場で決められた時間だけ歌うのではなく、聞こえてくる相手の歌に、さりげなく自分の声を合わせていたのである。
覚えた旋律を再現できることと、相手の声を聴きながら一緒に歌えることは、別の課題なのだと分かる。
こうした共同作業には、誰と歌うかによる違いもある。
『プロデューサーズ』で神山と共演した時は、長年一緒に活動してきた二人だから成立した歌の場面があり、自然に動きがそろうことも多かったという。
濵田の合わせる力は、相手の声や芝居を受け取って、その場の歌を作るところにも表れている。
伴奏のない舞台では、歌い出しの音から共有する
『市場三郎』は、歌だけでなく、波の音などの効果音まで演者の声で担う舞台だった。
2025年の取材で濵田が明かした台本には、完成した楽譜の代わりに、歌のある箇所を示す音符の印があったという。
本読みではそれぞれが旋律を想像して歌い、演出家や共演者と相談しながら音を合わせていった。
完成した伴奏を聴いて、その上に声を乗せる時とは、歌の準備の仕方が違う。
アカペラの歌喜劇では、声を出し始める瞬間にも集中が必要だった。
2025年の『市場三郎』について、濵田は全員が頭の中で音を合わせて歌い出す難しさを語り、稽古で手をつないで発声や歌の練習をしていると説明している。
声を重ねるためには、響きだけでなく、最初の音を一緒に出す感覚も確かめていた。
伴奏に導かれる前に、全員の声で曲を始めなくてはならない。
濵田が語る歌い出しの緊張には、発声する直前から共演者と音を共有する、この舞台ならではの難しさがある。
歌喜劇/~蘇る市場三郎 冥土の恋~ 舞台ダイジェスト(2025年)
舞台には、意図して音を外したり、素人らしく歌ったりする場面もあると濵田は説明している。
音程を正確に取れることが、そのまま全ての場面の正解になるわけではない。
役の人物がそこでどう歌うかに応じて、普段の滑らかな歌から離れることも表現に含まれていた。

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休符と発音を覚え、歌の中で気持ちを伝える
一方、『プロデューサーズ』では、楽譜に記された細部に向き合う必要があった。
濵田は2024年の取材で、それまでは耳で聴いて歌を覚えることが多く、楽譜を見慣れていなかったと話している。
稽古では、どこに休符があるかを確かめるところから取り組んでいた。
耳で旋律をつかむことに加え、声を出さない時間も確認する。
音を伸ばし続けるのか、一度切って次の言葉へ進むのかによって、フレーズの聞こえ方は変わる。
休符を確かめるという話には、伸びやかな声だけでは説明しきれない、歌を区切る作業が見える。
当時は旋律を追うことで精いっぱいになり、自宅でも曲を何度も聴いていたという。
その上で本人が望んでいたのは、音を追うことだけに集中せず、役の気持ちを観客へ届けることだった。
譜面を覚える作業は、歌う間に芝居へ心を向けられるようにするための準備でもあったのである。
言葉の出し方にも、本人の具体的な工夫がある。
『プロデューサーズ』の稽古では、口がうまく回らないフレーズを、普段から口癖のように繰り返して慣らそうとしていた。
大きな声で歌う練習とは別に、言葉をつなげて口にする感覚を確かめる作業だった。
2024年11月に掲載された公開ゲネプロの評では、第二幕後半のソロ「BETRAYED」が、アドリブも交えて歌い上げる場面として紹介された。
濵田が演じるマックスは、コメディーの中を動き回る人物である。
声の美しさを保つだけでなく、せりふや身振りと歌を一続きの芝居として届けることが求められていた。
口が回らない箇所を日頃から繰り返すことと、舞台で自由に見えることは、つながっている。
言いにくい言葉のたびに立ち止まってしまえば、役の勢いも途切れるからだ。
濵田の練習の話を踏まえると、大きく歌い上げる場面にも、言葉を滑らかにつなぐ小さな準備があることに気づく。
柔らかい響き、相手に合う声色、歌い出しの音、口になじんだ言葉。
濵田の歌い方は、それぞれを確かめながら、一人でも誰かと一緒でも歌を成立させていくところに特徴がある。
舞台ごとに歌の覚え方や課題がどう変わったかは、濵田崇裕の歌唱変遷で詳しく扱っています。

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