ロゼ/ROSÉの歌い方|話すような声の質感と、一曲を歌う力の配分

Dazedの2025年夏号に登場したロゼ/ROSÉ(撮影:Campbell Addy) シンガー
Dazedの2025年夏号に登場したロゼ/ROSÉ(撮影:Campbell Addy)

ロゼは、ソロで見つけた歌声を、話すようで、粗さもある声として説明しています。
自分で言葉を探しながら、金属を連想させるとも表した響きでした。
声を一つの発声の名前へ当てはめる前に、本人が見つけた質感と、その声を曲の中でどう使うかに目を向けると、歌い方の輪郭が見えてきます。

「On The Ground」―2021年発表曲の公式MV

声の質感と、一曲を担う力を分けて考える

2021年のソロ活動について、ロゼがBillboardで話した課題は、約3分の曲全体へ力を配ることでした。
短い自分のパートを歌う時と、すべての行を歌う時とでは、同じ力の使い方では済まなかったのです。

歌い方を考える時には、印象的な一音の声色だけでなく、その前後を含む長さにも目を向けたいところです。
強く聞かせたい部分へ来るまでに、歌をどう運ぶか。
本人が練習で探っていたのは、一曲を通して成り立つ歌唱でした。

「On The Ground」を例にするなら、声の質感を確かめる聴き方と、一曲の流れを追う聴き方を分けられます。
どの言葉の声が印象に残るかを考え、その部分が曲全体のどこに置かれているかへ戻る。
ロゼのいう力の配分を、一つの高音だけで判断せずに捉える手がかりになります。

英語を選ぶ時にも、曲の人物像を考える

声の響きは、どの言葉で歌うかともつながっています。
『R』発表時の記者会見を伝えたNYLONによると、ロゼは「On The Ground」と「Gone」を英語で歌うと決めるまで、曲に最もふさわしい言語は何かを考えました。
ファンの反応への心配もありましたが、作品としてよく仕上がることを優先したといいます。

その会見では、録音する際に、頭の中で曲の人物像を作るとも説明しています。
自分自身の思いが出発点にあっても、歌う時には、その曲の中で言葉を発する人を思い描く。
単に正しく発音するだけでなく、どんな気持ちでその言葉を口にするかも、声を選ぶ手がかりになっていました。

この考え方を知ると、「On The Ground」の語りかける部分を、声が小さい箇所としてだけ聴かずに済みます。
そこにいる人は、何を確かめながら言葉を続けているのか。
曲の人物の気持ちを追い、歌の勢いが変わるところへ耳を向けると、一曲の力の配分も、物語とつながって見えてきます。

「APT.」は、声の勢いと、掛け声の発音を一緒に作る

「APT.」の録音では、声をどう仕上げたかが、関係者の証言に残っています。
CirkutのMusic Weekでの説明によると、ブルーノ・マーズは、ロゼの歌を録り直す際に、繰り返し歌ってみるよう促していました。
その一方で、ロゼもブルーノへ、韓国語の掛け声の発音を教えています。

「APT.」―2024年発表、ブルーノ・マーズとの公式MV

歌の指導が、一方向にだけ進んでいたわけではありません。
ロゼは歌い手として別のテイクを試しながら、曲の核になる言葉については、相手の声を導く側にもなっていました。
声の勢いと、言葉がどう聞こえるかを、共演者と擦り合わせていたのです。

VarietyのMike Wassによる取材では、ロゼ自身が、この掛け声を、意味を知らなくても一緒に叫びたくなるものとして説明しています。
オーストラリアで親しんだ掛け声とも結びつけていました。
音として参加したくなる言葉を選ぶことが、この曲の歌唱の出発点にもなっています。

掛け声を聴く時には、発音が聞き取れるかに加え、自分も声を重ねたくなるかに注目できます。
ロゼの録音で扱われていたのは、言葉の形を整えることと、歌へ参加したくなる勢いの両方でした。

また、音楽テクニカルライターの布施雄一郎は、ORICON NEWSで、この掛け声の後ろへ和音が重なり、終盤にはコーラスも加わる構成に注目しています。
同じ言葉の繰り返しでも、周囲の音が変わることで聞こえ方は変わる。
ロゼ一人の声の強さだけでなく、声が重なる場面まで追うと、曲全体の盛り上がりを捉えられます。

「number one girl」は、伝える相手を近くに置く

Dazedの2025年夏号に登場したロゼ/ROSÉ(撮影:Campbell Addy)
Dazedの2025年夏号に登場したロゼ/ROSÉ(撮影:Campbell Addy)。
画像出典:写真掲載元

「number one girl」では、別の聞き方ができます。
Apple Musicの作品解説では、本人がこの曲を、名声にまつわる経験だけでなく、有害な関係全般を表すものとして語っています。
大きな舞台に立つ人の話でありながら、身近な関係にも重ねられる曲でした。

「number one girl」―2024年発表曲の公式MV

誰に向けて歌う言葉なのかを考えると、高音の迫力や声量以外にも、歌を捉える軸が生まれます。
大勢の前へ声を届ける「APT.」の掛け声と、誰かに認めてほしいと願う「number one girl」。
二曲を行き来すると、同じ歌手の声を、異なる相手へ向けた言葉として受け取れます。

この曲も、気持ちが切実であれば一度で完成する、というものではありませんでした。
2025年のBillboardでの対談では、ロゼが制作に行き詰まり、ブルーノ・マーズに相談したことを話しています。
電話で曲を聴いたブルーノは、ピアノを弾き、歌ってアイデアを伝え、翌日にはスタジオで一緒に取り組みました。

ロゼには、この曲を諦めたくないという思いがありました。
一方、ブルーノからは、自分を信じてほしいと促されたといいます。
自分の感情を守ることと、歌として伝わる形を他者と探すことが、同じ制作の中にあったのです。

「APT.」では、相手も声を重ねたくなる言葉を探す。
「number one girl」では、自分が手放したくない気持ちを、聴き手に届く曲へ整える。
二曲の違いは、勢いよく歌うか、静かに歌うかだけでは捉えきれません。

声のざらつきが、感情を感じさせる

ロゼの歌を聴く時は、音の高さや長さに加え、声の表面の質感にも耳を向けたいところです。
前述の布施は、音程やリズムの確かさを踏まえたうえで、エッジボイスや、ノイズを含む声に人間らしい感情が表れていると評しています。
本人が語った粗さのある声を、聴き手の側から捉えた見方にもなります。

ここでいうざらつきは、ことばが聞き取れなくなるという意味ではありません。
同じ言葉でも、なめらかに続く声と、細かな引っかかりを感じる声とでは、受け取る切実さが変わります。
その違いに注意を向けると、声量を大きくした場所以外にも、感情の動きを探せます。

「number one girl」を聴く際も、最後の大きな盛り上がりだけを待つのではなく、そこへ向かう言葉の響きに注目できます。
近くで話すような声が、曲の中でどんな気持ちを運んでいるか。
一音の質感と、一曲を通した力の配分を結びつけると、ロゼが伝える親密さも見えてきます。

ロゼの歌い方を考える入り口は、声の質感、一曲の長さ、そして言葉を届ける相手です。
その選び方がソロでどう広がっていったかは、ロゼ/ROSÉの歌唱変遷でたどっています。

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