加賀美ハヤトは、歌を自分の名刺として活動を始めたライバーです。
けれど、好きな音楽を作り、舞台に立つようになってからも、音楽を受け取る側にいるような感覚が長く残っていたといいます。
その自分が変わったと感じたのが、2026年の初ワンマンでした。
「WITHIN」公式MV(フルバージョン)。
にじさんじでのソロ活動と、剣持刀也、不破湊、甲斐田晴とのROF-MAO。
異なる活動を重ねてきた歌い手が、声の表現を増やし、自分の舞台を受け止めるまでをたどります。
最初から、歌を自分の名刺として持っていた
2019年7月の初配信で、加賀美ハヤトはオリジナル曲「WITHIN」を披露しました。
後年、TOKYO FM『THE TRAD』で振り返ったのは、多くのライバーの中で、自分を知ってもらうために何を示すかという考えです。
そこで選んだのが歌であり、自己紹介として用意した曲が、想像以上に喜ばれたと話しています。
歌が後から活動へ加わったというより、初めから、自分がどんな表現者かを伝える役割を持っていました。
「WITHIN」は、その出発点にある曲です。
2020年にはフルバンドを伴う3Dお披露目へ進みます。
さらに2023年、メ~テレ『BomberE』のバーチャルスタジオ初回ゲストとしても、この曲を披露しました。
配信の自己紹介から始まった歌は、バンドとともに見せる舞台や、テレビの音楽番組へも広がっています。

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ROF-MAOで、グループの歌の幅も広げる
ROF-MAOでは、四人の声で曲を作る経験も重なりました。
2025年の『MOMENTUM』について、加賀美はCUTの取材で、ROF-MAOとして出すからこそ実験的に感じられる、ポップスの王道のような曲もあると説明しています。
甲斐田晴も、バラードへの挑戦など、それまでのイメージとは違う方向を目指した作品と話しました。
ただし、変わること自体を目的にしていたわけではありません。
加賀美は、ROF-MAOそのものが応援歌のような存在でありたいとも語っています。
聴く人を励ますという軸があるから、曲の方向は変えてもよい。
四人での活動には、そうした考えがありました。
一人の好きな音楽を示すソロと、四人で新しい面を見せるグループ。
加賀美の歌には、異なる曲や組み合わせの中で表現する機会が増えていました。
その経験を持ったうえで、自分一人の作品を作る時期へ進みます。
『ULTIMATE CITY』では、好きな音楽と新しい歌い方を並べた
2025年11月の初ソロミニアルバム『ULTIMATE CITY』は、全七曲の新曲で作られました。
『THE TRAD』では、一人で作品を作る意味を考え、好きなものをさらに詰めたかったと説明しています。
グループとは違う、自分の音楽を一枚として届ける試みでした。
それまでの加賀美は、ライブなども誘われたら応えるという姿勢だったといいます。
ところが、アルバムを作ってみたいとスタッフに話すと、相手も提案してよいのか迷っていたことが分かりました。
本人が希望を伝えたことで、好きな作家へ依頼し、新しい曲を揃える話が動き出したのです。
同時に、これまで馴染みの薄かった表現へも踏み出しています。
rockinon.comの取材で、加賀美が新しい引き出しを開けてもらったと振り返ったのが、クボタカイ提供の「デストロイアガール」です。
制作側からの提案を受け、自分があまり使ってこなかった歌の表現を試す経験になりました。
取材では、柔らかく踊れる曲調が、ソロとしての新しさだと話題になっています。
本人も、聴いてほしいという意味では、このアルバムで一番かもしれないと話すほど、挑戦を楽しんでいました。
「デストロイアガール」公式公開音源。
「Luminous」には、以前の舞台での反響もつながっています。
2022年の「FANTASIA」でNovelbrightの「ハミングバード」を歌ったところ、大きな反応があり、こういう自分も求められているのかと感じたといいます。
その経験を経て、Novelbrightの沖聡次郎へ依頼したのが「Luminous」でした。
「ハミングバード」公式カバー動画(2023年公開。
「FANTASIA」のライブ映像とは別の録音)
ここで加賀美が望んだのは、聴く人へ寄り添い、同じ景色を見せることでした。
歌の強さを示すだけでなく、その声で何を分かち合うか。
カバーの反響から見つけた可能性を、自分の新曲へ持ち込んでいます。
「Luminous」公式MV。
その歌を作り手はどう受け取ったのでしょうか。
「フメツフハイ」を提供した首藤義勝は、制作時のコメントで、歌声の力強さと多彩さがさらに磨かれていると評価しました。
新しい曲へ挑む中で、もともとの力と、声の表情の幅を一緒に育てていたことが伝わります。
「ALPHA ONE」で、大きな会場に立つ自分を受け止めた
好きな音楽を形にできるようになっても、憧れの歌い手との距離を感じる気持ちは残っていました。
2026年のReal Soundの対談では、a flood of circleの曲を歌っても思うようには歌えず、自分はあのようなロックスターにはなれないと感じていたことを明かしています。
活動を重ねても、音楽を受け取る側の感覚から、なかなか離れられなかったのです。
2026年1月17日、加賀美はTOYOTA ARENA TOKYOで初ワンマン「ALPHA ONE」を開催します。
本人が決定的に変わったと感じたのは、開幕曲「ARE YOU READY? FIGHT!」を歌った瞬間からでした。

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「ALPHA ONE」より「ARE YOU READY? FIGHT!」公式ライブ映像(2026年1月公演)。
同年3月の佐々木亮介とのReal Soundの対談で、加賀美は、呼びかけに対して想像を超える大きな声が返り、それに応えられたことを話しています。
翌日のテレビで公演を紹介される自分を見ても、不思議と違和感がなかった。
音楽を受け取る側にいるような負い目を持ち続ける段階から、自分も人前で届ける一人なのだと受け止める変化がありました。
歌う自分へ向けられた声を受け取り、その場へ返すことができた。
本人は、ROF-MAOでステージに立ってきた経験も生きたのかもしれないと振り返っています。
ソロで自覚した変化の手前には、四人で客席と向き合ってきた時間もありました。
同じ対談では、バーチャルの舞台で体温が伝わるように見せる難しさにも触れています。
憧れるロックバンドと同じ熱を届けるには、何も考えずには臨めない。
一方、映像を見た佐々木は、加賀美の言葉や振る舞いに、人間らしい温かさを感じたと応じました。
本人が難しいと考えていた部分も、舞台を受け取った相手には届いていたのです。
激しい歌と、温かなバラードを同じ舞台へ置く
「ALPHA ONE」では、高橋優が手掛けた新曲「間隙の座標」も初披露されました。
ANYCOLORの公式レポートは、それまでの激しい曲とは違う、温かみのある歌の時間として紹介しています。
一方、最後は出発点の「WITHIN」へ戻り、シャウトを交えて公演を締めくくりました。
「間隙の座標」公式MV。
強い歌をやめることで別の表現へ移るのではなく、激しい曲と、異なる温度を持つ歌を、一人の舞台で届ける。
初ソロアルバムで増えた表現は、ワンマンの中でも並び立っていました。
自分を知ってもらうために持っていた歌が、聴く人と呼応し、自分自身も舞台の真ん中へ立つための歌になる。
加賀美ハヤトの変遷には、表現の幅と、歌う自分への意識の両方が表れています。
力強さの中で細かなニュアンスを作ることや、曲ごとに声の表情を変えることは、加賀美ハヤトの歌い方で取り上げています。

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