玉置成実の歌い方|厚みのある声と、張る・引く・柔らげる発声の使い分け

2026年の取材での玉置成実(松島史弥[BOIL]撮影/La Voix掲載) シンガー
2026年の取材での玉置成実(松島史弥[BOIL]撮影/La Voix掲載)

玉置成実は、「Reborn」で曲の場面に合わせて歌い方を変えたと話しています。
強く打ち出す声に加え、引いた表現や、別の曲では柔らかい声も選ぶ歌手です。
本人の説明を手がかりにすると、その歌い方の面白さは、声の厚みを土台にしながら、曲が求める響きへ切り替えていくところにあります。

「Reborn」公式MV(2024年発売のシングル曲)。

厚みを土台に、Aメロとサビで声の出方を変える

玉置成実は、舞台でさまざまな役を演じるうちに発声の幅が広がり、自分の声にも厚みが出てきたと説明しています。
ただ、厚い声を持つことと、すべてのフレーズを強く歌うことは別の選択です。

「Reborn」の録音については、力強さを保ちつつ強弱や深さを出し、Aメロ、Bメロ、サビで歌い方を変えたと話しています。
Aメロで意識した、声を張りすぎず引く表現も、その使い分けの一部です。
曲の中で前に出るところと、少し抑えて聴かせるところを作ることが、ひとつの声に違う表情を与えます。

本人は、この曲に力強さと哀愁の両方を感じたと話しています。
引いた表現を作ることも、その二つを声で表すための工夫だったと考えられます。

「暁の車」で、マイクに近い声からロックへ切り替える

こうした強弱の選択を具体的に知るには、2014年のカバー盤『NT GUNDAM COVER』で歌った「暁の車」も手がかりになります。
本人は、1番では声を張らず、マイクへ近づいて柔らかく歌い、2番を後半へ向かう助走と考えたと説明しました。
3番のサビからはロックを歌う気持ちへ切り替え、一曲の中で別々の二曲を録ったように感じたそうです。

小さく始めて少しずつ大きくするだけでなく、後半には歌う気持ちそのものを変える区切りがあります。
マイクとの距離を含めて近い響きを作る前半と、曲の展開を受けて強く出る後半。
「暁の車」は、玉置が一つの歌い方にとどまらず、編曲に合わせて声の役割を変える例になっています。

同じアルバムの「MEN OF DESTINY」では、原曲を歌うMIQのハスキーな声への憧れを持ちつつ、自分が出せる範囲の太い声を選んだと話しています。
憧れの声と自分の声の違いを受け止め、その曲に合う強さを自分の中から探していたのです。
柔らかさを選ぶ場合も、厚みを押し出す場合も、まず曲が必要とする響きを考える姿勢が共通しています。

「Affection」では、柔らかい声を出すために発声も変える

「Reborn」と同じシングルに収録された「Affection」では、本人が発声の違いをさらに明確に語っています。
明るい曲に合わせて、かわいらしい声色を選び、歌に優しさや柔らかさを出そうとしたそうです。
そのために、「Reborn」とは声の出し方も変えたと説明しています。

この曲は、自身が捉えたラクス・クラインの姿をもとに、玉置成実が作詞した作品です。
キャラクターの公式な歌唱設定としてではなく、本人が思い描いた優しさを、自分の声にどう表すかという選択でした。
強い声を持つ人が柔らかく歌うときにも、その人なりの表現の意図があります。

「Affection」公式PV(2025年のツアーのステージ映像を編集したビデオクリップ)。

「Affection」は2025年のツアーでも取り上げられ、そのステージをまとめた公式PVも作られました。
彼女がこの曲で目指した、柔らかく包むような声の方向性を知っておくと、「Reborn」との選択の違いを考えやすくなります。

2024年の「Reborn」の取材に掲載された玉置成実(リスアニ!掲載)
2024年の「Reborn」の取材に掲載された玉置成実(リスアニ!掲載)。
画像出典:画像掲載元

言葉を聞き取りやすくし、アクセントを選ぶ

声色と並んで大切なのが、歌詞をどのように届けるかです。
2024年のラジオ番組では、ミュージカルで歌をセリフとして扱うことを学び、自分の歌でも言葉を一つずつ聞き取りやすくしたり、アクセントの場所を変えたりするようになったと説明しています。
舞台では、歌の前の芝居から、感情が高まるところへどう進むかも考えているそうです。

声を太くするか、柔らかくするかという選択は、言葉の意味ともつながっています。
同じ音程のフレーズでも、どの言葉に重みを置くかで、伝わる気持ちは変わります。
玉置の歌を聴くときには、強い声が出た場所と、そこで歌われる言葉を一緒に追うと、声の使い分けの意図をつかみやすくなります。

「Believe」の一発撮りに向け、録音に合う発声を準備した

長く歌っている曲でも、いつもと同じ歌い方をそのまま当てはめるわけではありません。
2024年の「THE FIRST TAKE」で歌った「Believe」に向けては、ライブとは違う録音の状況で、声をどう響かせるかにも取り組んだと本人は説明しています。

「Believe」THE FIRST TAKE(2024年・特別なバンドアレンジによる一発撮り)。

歌とダンスを一緒に届けるライブと、マイクの前で一度の歌唱を収める企画では、歌を届ける条件が違います。
「Believe」は特別なバンドアレンジでもあり、原曲と同じ曲だからといって、本人の準備まで同じになるわけではありません。
玉置成実の発声には、その場で求められる歌に合わせて調整するという面もあります。

その後も、踊りながら歌を保つための発声を学んでいると、2024年のCocotameの取材で話しています。
一発撮りでの準備が、ライブで体を動かしながら歌う課題にもつながっていました。
録音のための調整とステージのための調整を、本人はそれぞれの条件に合わせて続けていたのです。

録音で聴こえる厚みには、音作りも関わる

声の特徴を考えるときは、本人の発声と録音時の音作りの両方を見ておきたいところです。
2014年の「Do Ya Wanna Dance」について、玉置成実は、声にかけたエフェクトが厚みを増していると説明していました。

「Do Ya Wanna Dance」公式配信音源(2014年の「Vivid Telepathy」収録曲)。

録音された声の厚さを、そのまま特定の喉の使い方だと決めつけることはできません。
この曲では、深く迫るような歌の表情と、制作上の処理が組み合わされています。
「Reborn」や「Affection」で語られた声の選び方と同様に、何を表現するための響きかを考えると、歌い方と音作りの関係も捉えやすくなります。

今の声に合う方法を、繰り返し確かめる

2026年には、歌詞の受け取り方も歌う感情に関わると説明しています。
懸命に歌っていたデビュー当時とは違い、経験を重ねたことで、曲の中の哀愁にも気づくようになったそうです。
昔から歌っている曲も、言葉を捉え直すことで、新しく表現を選ぶ余地が生まれます。

同じ取材では、月に一度のボイストレーニングに通い、録音したレッスンを自宅でも聴き返して練習していると話しています。
本人によれば、レッスンではその時点の声に合う発声を探します。
教わったことを自宅で確かめ、次の調整へつなぐという往復も、声の選択を支えているのでしょう。

張る声、引いた声、柔らかい声を使い分ける現在の歌には、声に向き合い直す作業が続いています。
その選択が増えてきた背景は、玉置成実の歌唱変遷でたどれます。

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