ドギョムの声には、パワフルで爽快な印象がある。
一緒にステージを作るA&Rチームも、その特徴を編曲に生かしている。
一方、スングァンと歌う「Blue」では、二人の声を初めからぴったり重ねることを目指さなかったという。
声色や息のそろい方まで、曲の感情に合わせて選ぶ。
ドギョムの歌い方は、こうした一曲ごとの選択を追うと具体的になる。
ドギョムとスングァンの「Blue」(2026年)の公式ミュージックビデオ「Cinema Ver.」。
強く伸ばす声と、言葉に合わせた緩急
音楽ライターのパク・ヒアは、韓国の歌番組『覆面歌王』でのドギョムについて、安定した発声や高い音域に加え、柔軟なリズム感を評価している。
取り上げているのは、イ・スンチョルの「인연」と、キム・ヒョンチョルの「달의 몰락」を歌った場面だ。
後者では、とくに歌詞の雰囲気に応じた声の緩急に注目していた。
ここから分かるのは、ドギョムの評価が、伸びのある高音だけに集まっているわけではないことだ。
リズムのある曲で、言葉ごとにどの程度の勢いを与えるか。
一音を強く響かせる力と、前後のフレーズに差をつける力は、分けて聴きたい要素である。
同じ批評は、グループの曲で与えられる短いパートでも、ドギョムが声と演技的な表現を生かす点に触れている。
長いソロで歌い切るときと、次の歌手へすぐ渡すときでは、自分の声を印象づけられる時間が違う。
その短い中でも表情を作ることが、多人数グループの歌唱では大切になる。
「Blue」は、ずれを感じさせる声から近づいていく
共に歌うスングァンは、「Blue」の最初ではハーモニーを厳密に重ねすぎず、声色や息に少しずれを感じさせたと説明している。
曲が進むにつれて、ハーモニーの密度や音の温かさによって、距離が近づく気持ちを表したという。
二人が同じ速さで恋愛を経験するとは限らない、という曲の主題を、声の関係でも表そうとしたのだ。
歌をそろえる技術があっても、最初から全部をそろえるとは限らない。
音程の高さに加え、二つの声がどれくらい一緒に感じられるかも、この曲では表現の一部になる。
「Prelude of Love」は、想像したときめきを言葉にする
『Serenade』では、「Blue」とともに「Prelude of Love」も比べてみたい。
ドギョムは『Vogue Singapore』の取材で、後者の歌詞と旋律が、恋の始まりの胸の高鳴りを表しているところが好きだと話している。
同じ二人の声でも、切ない曲と、恋が始まる曲では、届けたい感情の向きが違う。
この曲の歌詞は、ツアー中にスングァンと少しずつ書き、何度も直したという。
本人の説明では、実体験だけでなく、ときめく気持ちを想像しながら作っている。
歌の感情は、そのまま歌手の私生活を写したもの、と考える必要はない。
言葉にしたい気持ちを思い描き、その気持ちに声を合わせていく作業として捉えられる。
「Blue」で息や声色の重なり方を選ぶことと、歌う前に歌詞の感情を二人で考えること。
これらをつなげてみると、デュエットの表情が、録音で声を重ねる瞬間だけで作られているわけではないことが分かる。

画像出典:画像掲載元
昔のR&Bに取り組んだ曲では、声のトーンを合わせた
2021年の『Your Choice』に収録された「Same dream, same mind, same night」では、ドギョムは、昔のR&Bらしさを出すため、ボーカルチーム全員で声色や歌い方をそろえたと話している。
スングァンと歌うアドリブも、録音を重ねながら旋律を修正したという。
「Blue」で最初にずれを残す選択と比べると、声の重なり方そのものが、曲によって変わることが分かる。
「Same dream, same mind, same night」(2021年、『Your Choice』収録)の正規配信音源。
「Ready to love」では、前に歌う声との対比を考える
同じ『Your Choice』の「Ready to love」では、イントロでJOSHUAに続いて歌う自分のパートに、少し対照的な感じを求められたと話している。
ドギョムはその違いを思い描いて録音したという。
ここでは、前の声と違いを出すことが、自分のパートの課題になっている。
声を近づける曲もあれば、違いを生かす曲もある。
SEVENTEEN「Ready to love」(2021年)の公式ミュージックビデオ。
歌と演技を同時に行い、曲へ集中する
ミュージカル『エクスカリバー』でアーサーを演じた経験について、ドギョムは2020年の『ELLE Korea』で、役に入り込んだ共演者と気持ちを通わせる喜びを語っている。
歌と演技を同時に行ったことが、その後のSEVENTEENのステージでも、より深く集中する助けになったという。
舞台の経験をグループ活動へ持ち帰っていることが、本人の言葉から分かる。
歌詞をどんな立場で言うのか、相手の言葉や動きをどう受け取るのか。
演技を伴う歌では、そうした場面の中に声を置くことになる。
前の歌手と対比を作る「Ready to love」や、二人の距離を表す「Blue」も、声だけを独立させず、周囲との関係で考えると意味を捉えやすい。
同じ『ELLE Korea』の取材で、本人は自分の音色を平凡なほうだと感じており、自分ならではのボーカルスタイルを磨くことが重要だとも話していた。
周囲から声を評価されていても、本人は表現の幅をさらに広げようとしている。
その探求を、単に高い音を増やすことに限らず見ることができる。
「HOT」では、声の力強さを曲の始まりに生かす
2024年のロラパルーザ・ベルリン公演では、A&Rチームがドギョムの声のパワフルさを強調するため、「HOT」のイントロへ彼のパートを持ってきた。
爽快な歌声を曲の始まりに置き、公演の編曲に生かした例だ。
声をそろえるか、対比を作るかに加え、どの場面でその声を目立たせるかも、聴き手の印象を変える。
録音では隣の歌声と関係を作り、ライブでは声の個性を曲の配置にも生かす。
ドギョムの力強さは、こうした一曲の作り方の中で使われている。
「HOT」(2024年、ロラパルーザ・ベルリン公演)の公式ライブ映像。
自分の納得する声と、客席の笑顔
2025年の『allure Korea』では、予定のない日の過ごし方の一つに、ボーカルのレッスンを挙げている。
デビューから10年の節目にも、歌を学ぶ時間は日常の中にある。
大舞台に立つ日々の中で、学ぶ時間も持ち続けていることが本人の話から分かる。
歌い手として喜びを感じる場面を尋ねられると、ステージから見えるファンの笑顔と、自分が満足できる状態で表現や音を出せたときを挙げていた。
自分の望む声が出ることと、その歌を聴き手が喜ぶこと。
二つが重なるときに感じる充実が、ドギョムの歌を支えている。
「Blue」の距離の変化、R&B曲で合わせる声色、「Ready to love」で意識した前の声との違い。
発声の特徴を知るには、高音だけを切り取るより、声色や息を、相手や曲にどう合わせるかまで追うと理解が深まる。
歌への目標と録音時の意識がどう変わったかは、ドギョムの歌唱変遷で時期に沿ってたどっている。

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