2026年の『Serenade』で、ドギョムは、エネルギーや力を前に出す歌唱から、感情を飾らずに伝える録音へ意識を切り替えたと話している。
明るく力強い声で知られる歌手が、今回はどう声を抑え、曲になじませようとしたのか。
その考えをたどると、2021年に語った、上手に歌うだけでは満足できなかった経験に行き着く。
声の持ち味を残しながら、何を聴き手へ届けるかを選んできた歩みだ。
ドギョムとスングァンの「Blue」(2026年)の公式ミュージックビデオ「Cinema Ver.」。
2019年『エクスカリバー』、役として歌う経験
ドギョムは2019年、『エクスカリバー』でアーサー役を演じた。
歌手として舞台を経験していても、ミュージカルへの出演は初めてだった。
開幕前、作曲家フランク・ワイルドホーンは、ドギョムの声を評価しながら、それまで使っていなかった方法で歌う練習をしていると説明している。
同じアーサー役でも、出演者はそれぞれ違う個性を持つ。
ワイルドホーンは、俳優が自分の持ち味を加える余地を残し、協力して音楽を生きたものにしようとしていた。

画像出典:京郷新聞(EMK提供)
翌2020年、ドギョムは、役に入り込んだ共演者と気持ちを通わせる喜びを振り返っている。
歌と演技を同時に行う経験は、その後のSEVENTEENのステージでも、より深く集中する助けになったという。
一人の役を演じて得た経験が、グループへ戻ったときの歌にもつながっていた。
ドギョム「난 나의 것」――2019年『エクスカリバー』試聴会の公式歌唱映像(EMK公開)。
2021年、高音を増やすことより大切にしたかったもの
2021年、『Your Choice』の取材でドギョムは、周囲から歌を褒められても自分では満足できず、歌を続けるべきか悩んだ時期を振り返った。
そこから、上手さを追うことより、小さな響きでも聴き手の力になれる歌を大切にしたいと話している。
『Your Choice』は2021年6月発表の8枚目のミニアルバムで、「Ready to love」がタイトル曲となった。
高音をたくさん出すことより、聴き手に歌を届けることへ目を向ける姿勢が、当時の言葉には表れている。
その考えを理解する手がかりになるのが、2020年の取材で語っていた「웃음꽃(Smile Flower)」の思い出だ。
2016年のミニアルバム『Going Seventeen』のショーケースでこの曲を歌ったとき、少しスランプにあったという。
曲に合わせて自分たちの名を呼ぶファンの声を聞き、応援してくれる人がいることに胸がいっぱいになったそうだ。
SEVENTEEN「웃음꽃(Smile Flower)」――2016年12月5日、記者向けショーケース。
聯合ニュース公式映像。
客席に歌を届ける歌手が、客席の声から力をもらうこともある。
本人が挙げたこの場面を知ると、歌唱への満足と、歌う喜びが必ずしも同じではないという言葉にも、具体的な背景が見えてくる。
2021年の目標は、上手く歌うための努力をやめる話ではなく、その歌が誰かの力になることを大切にする話だった。
SEVENTEEN「Ready to love」(2021年)の公式ミュージックビデオ。

画像出典:画像掲載元
2024年、大きなステージでは力強さが武器になる
歌の目標が変わっても、力強い声が不要になったわけではない。
2024年のロラパルーザ・ベルリン公演を準備したA&Rチームは、ドギョムの声をパワフルで爽快な声と捉え、その個性を編曲にも生かしていた。
「HOT」では、力強さを強調するため、ドギョムのパートをイントロへ持ってきたという。
多人数グループの歌声の違いを、曲の始まりから伝える選択だ。
同じ公演のサウンドチームも、それぞれの声を鮮明に伝え、ステージのエネルギーを保つバランスを重視していた。
ここでは、本人の声の持ち味が、大きな会場へ音楽を届けるために生かされている。
後のバラードで感情を抑制して表す歌い方も、こうした力強い歌唱と並べて捉えると、選択の違いが分かりやすい。
「HOT」(2024年、ロラパルーザ・ベルリン公演)の公式ライブ映像。
2026年、「Blue」では声を曲の感情になじませる
スングァンとのユニットが発表した『Serenade』では、歌詞の物語と感情を出発点に、曲ごとの声を考えた。
ドギョムは、新しい技を見せることより、感情を正直に表すことを優先し、声色や息、コントロールに注意を向けたと説明している。
長く一緒に歌ってきた二人でも、制作は互いの考えを確かめる作業だった。
ドギョムによると、曲選びからソロ曲の制作まで話し合う中で、音楽的に似ている点と違う点を改めて知り、その両方がアルバムの厚みになった。
特定のデュオを手本にするより、二人の色をはっきり見せることを大切にしたという。
デモを聴く段階では、まずそれぞれ好きな曲を選んで、二人で持ち寄ったという。
すると、ドギョムがスングァンの好みだと思った曲が、実際に相手の選んだ曲と重なった。
長年一緒に活動してきたことで、音楽の好みまで分かるようになっていたのだ。
スングァンも、グループ活動では自分たち二人だけに集中するのは難しいが、今回は互いの考えを深く話せたと説明している。
よく知る相手と歌うからこそ、改めて曲を選び、感情を言葉にして確かめる。
二人の声を中心に据えるために、歌う前のやり取りにも時間をかけていた。
音楽評論家ソ・ソンドクも、「Blue」について、誇示する歌より、抑えた感情の深さに注目している。
大きく歌える二人が、その力をいつ、どれほど表へ出すか。
ドギョムが2021年に語っていた、聴き手へ届ける響きへの関心が、ここでは録音時の声色や息の調整として具体的になっている。
同じアルバムの「Rockstar」には、明るい力が残っている
『Serenade』のドギョムのソロ曲「Rockstar」を、明るく前向きな歌として捉える批評もある。
「Blue」の深い悲しみと、ソロ曲の前向きさを対比させることで、それぞれの表情が際立つという見方だ。
ドギョム自身も、この曲では、日常を特別にしてくれる人への感謝や応援を、エネルギーのある歌でまっすぐ伝えようとしたと話している。
同じ『Serenade』でも、声を曲の感情になじませるために選ぶ答えは一つではない。
同じ作品の中に、この二つの歌があることが大切だ。
力を出す歌から静かな歌へ、一つの方向に声を変えた、とだけまとめると、ドギョムが残している明るさを取り落としてしまう。
「Rockstar (DK Solo)」(2026年、『Serenade』収録)の正規配信音源。
舞台で慣れない歌い方に取り組み、客席の応援に励まされ、長く共に歌った相手と曲の感情を確かめる。
上手く歌えたかどうかに悩んでいた時期を経て、曲の中で何を伝えるか、そのためにどんな声を選ぶかへ。
ドギョムの歌唱変遷は、力強い声を持つ歌手が、声色や息を曲に合わせて使う意識を深めていく過程として見えてくる。
曲ごとの声の組み合わせや、ハーモニーの作り方は、ドギョムの歌い方で詳しく扱っている。

こちらの記事もおすすめ

ドギョム本人と共演者の説明から、曲ごとの声の使い方を読み解きます。


低めの声やRoomのシンギングラップを、本人の言葉とともにたどります。



コメント