キム・チェウォンの歌唱変遷|澄んだ声の持ち主が、低音と力強さを自分の表現にするまで

キム・チェウォン(2022年インタビュー掲載) キム・チェウォン
キム・チェウォン(2022年インタビュー掲載)

キム・チェウォンの変化は、IZ*ONEからLE SSERAFIMへというグループの交代だけでは説明できません。
本人が抱いていた「自分にはどんな歌い方が似合うのか」という考えも、その間に変わりました。
低い声への戸惑い、強い言葉を歌う楽しさ、肩の力を抜いた表現、そして一人で担う主題歌。
それぞれの挑戦をたどると、声の魅力を残しながら、使える表現を増やしてきた歩みが見えてきます。

IZ*ONE時代――仲間の曲を歌うことが、作る側への入口になった

2018年、チェウォンは自分を童話のカメに例え、ゆっくりでも最後まで頑張る性格だと話していました。
頼もしい相手として挙げたのは、同じIZ*ONEのクォン・ウンビです。
デビュー間もない時期のこのやり取りには、周囲のメンバーと関わりながら、自分の場所を見つけていた姿が表れています。

ウンビとの関係は、歌の制作にもつながりました。
チェウォンは2021年、ウンビが手がけた「SPACESHIP」のガイド録音を経験し、作詞・作曲に興味を持ったと話しています。
ガイドは、完成前の歌を伝えるための見本となる歌唱です。
自分の担当を歌い終えるだけでなく、まだ形になりきっていない曲に声を与える経験をしていたのです。

IZ*ONEの最後のアルバムでは、「Slow Journey」の作詞・作曲にも参加しています。
ウンビは、チェウォンが曲への意見も伝えてくれる存在だったと話しました。
歌う側として受け取るだけでなく、曲をどう作るかにも関わるようになったことが、この時期の広がりです。

2022年――「FEARLESS」で、似合うと思っていた声の外へ

大きな転機は、LE SSERAFIMのデビュー作『FEARLESS』でした。
チェウォンは、それまで澄んだ爽やかな歌い方が自分に合うと考えていた一方、もっと力のある声を求め、R&Bなどにも練習を広げたと説明しています。
タイトル曲で待っていたのは、ほとんど歌った経験のない低い音域でした。
スタッフの反応も支えになり、その声を自分の魅力として受け入れていったといいます。

低いパートを任される経験が、自分の声への見方を広げるきっかけになったのです。

同年の『ANTIFRAGILE』では、挑戦の中に楽しさも生まれています。
本人は新作の活動に際し、歌詞に合わせた強調や高音のアドリブに取り組み、初めの活動より楽しみたい気持ちが増したと語りました。
低い声を覚えたあとも、高音を封じたわけではありません。
曲の言葉と勢いに合う声を、そのつど選べるようになる過程だったのです。

「First Love」と「Fire in the belly」――柔らかさと力強さが並び立つ

2022年12月には、宇多田ヒカルの「First Love」を公式カバーしました。
本人が明かした選曲の理由は、練習生のころ、日本語の勉強中に出会って練習した記憶がよみがえったことでした。
ドラマをきっかけに再び愛される曲に触れ、もう一度歌いたくなったといいます。
新しいグループでの挑戦と並行して、以前から親しんだ歌にも、自分の声で向き合っていました。

「First Love」— 2022年公開のソロカバー

2023年の『UNFORGIVEN』では、未知のジャンルを前にした気持ちがさらに変わります。
本人は、どうこなすかを不安に思うより、自分のスタイルでどう歌えるかを期待するようになったと説明しました。
力強い歌を見せたいという思いと結びついていたのが、「Fire in the belly」です。
初めてに近い曲調の録音を、ステージへの楽しみに変えていたことが伝わります。

キム・チェウォン(2023年インタビュー掲載)
キム・チェウォン(2023年インタビュー掲載)。
画像出典:画像掲載元

「First Love」のように慣れ親しんだ歌へ戻る動きと、新しい曲調へ進む動き。
この二つが同時にあるところが、チェウォンの歩みのおもしろさです。
一度強い歌を手にしたら、以後はすべてその方向へ進むという経歴ではありません。
歌いたい曲の幅に合わせて、自分の輪郭を広げていきます。

2024年――力を見せることから、余裕を表すことへ

『EASY』では、努力している姿を前面に出さず、自然な余裕を感じさせることが課題になりました。
本人は、曲名に反して歌もパフォーマンスも難しく、余裕があるように見せることに苦労したと振り返っています。
普段からR&Bを聴き、歌うことも好きだった彼女には、音楽的に親しみのある挑戦でもありました。

本人は、「Perfect Night」を経て音楽の方向が移っていったことに喜びを感じていたと説明しています。
強さを示す表現を身につけたあとで、今度はそれをどの程度表に出すかが問われる。
この流れを踏まえると、『EASY』の余裕も、単に楽に歌えるようになったという意味では捉えきれません。

一方、同年の『CRAZY』に収めた「Pierrot」については、もともと好きなヒップホップのスタイルに取り組めた喜びを語っています。
穏やかな方向だけに落ち着いた年でもありません。
歌のなめらかさを求める作品と、リズムへの勢いを求める作品を行き来できることが、活動の幅になっていました。

キム・チェウォン(右)とメンバー(2024年インタビュー掲載)
キム・チェウォン(右)とメンバー(2024年インタビュー掲載)。
画像出典:画像掲載元

また、2024年には、ホ・ユンジンと「Raise y_our glass」を歌ったファンミーティングを振り返っています。
準備の段階から雰囲気がよく、ファンの前ではいっそう胸がいっぱいになったという経験です。
グループの中で順番に歌うことに加え、特定の相手と一曲を共有する機会も、歌の届け方を広げていきました。

2025年――ソロ主題歌が、グループの舞台にも帰ってくる

2025年には、Netflixシリーズ『匿名の恋人たち』の主題歌「告白」を担当します。
パク・ヘギョンが1999年に発表した曲を、ダルパランの編曲と日本語詞で歌う企画です。
初のソロ主題歌に臨んだ本人は、以前から知っていた曲を歌う喜びと、聴く人へ恋のときめきや勇気を届けたい気持ちを語りました。
複数人で分ける曲とは異なり、一人の声で物語に寄り添う役割を担ったのです。

「告白」— 日本語版の公式音源(2025年)

その歌は、グループのライブにも戻ってきます。
東京ドーム公演では、チェウォンは感謝を伝えるために「告白」の一節を伴奏なしで披露しました。
同じ公演の「Fire in the belly」では、力強い高音やアドリブも披露しています。
大きな会場を盛り上げる歌と、短い歌唱に気持ちを託す場面が、一人の歌い手の中で結びついていました。

2026年――一人で歌う曲、二人で交わす曲

2026年の『リムジンサービス』再出演では、グループ曲「CELEBRATION」をソロで歌い、さまざまな歌手の曲にも取り組みました。
イ・ムジンも、デビュー時より増した余裕に言及しています。
別の歌手の評価として見るべき言葉ですが、初期と後年を同じ番組でつなぐ、興味深い視点です。

同年の『WOULD YOU RECORD』では、カズハと「Trust Exercise」を披露しました。
チェウォンは、カズハと一緒に歌ってみたかったと話し、初のデュエットに臨んでいます。
五人の曲を一人で引き受ける経験と、相手を選んで二人で歌う経験。
歌う人数や相手を変えることで、声の置かれる場所もさらに広がりました。

カズハとの『WOULD YOU RECORD』(2026年)— トークと複数曲を収録した番組映像

こうしてたどると、チェウォンの変遷は、澄んだ声が力強い声へ置き換わった物語ではないとわかります。
似合うと思っていた声の範囲を広げ、その後も曲や相手に合わせて選び直してきた歩みです。
低音、高音、柔らかさをどう使い分けるのかは、キム・チェウォンの歌い方で詳しく取り上げています。

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