イ・ホンギ(FTISLAND)の歌い方|太い声の力を、曲に合わせてどう変えるのか

2018年12月24日の横浜ソロ公演で歌うイ・ホンギ イ・ホンギ(FTISLAND)
2018年12月24日の横浜ソロ公演で歌うイ・ホンギ

イ・ホンギは、ソロ曲「モノローグ」で、バンドの時とは声の力加減を変えました。
曲に合わせて声の強さを調整する、その判断を具体的にたどります。

曲によって変わるのは、声の大きさだけではありません。
伴奏への入り方、高い旋律の表し方、言葉を置く速度、観客へ歌を渡すタイミング。
ホンギは持ち味のある声を、どの場面でも同じ形で使うのではなく、曲が求める役割に合わせて働かせています。

太さや暗さを、感情の伝わる声へつなげる

ホンギ自身は、ONE OK ROCKのTakaとの違いを考えた際、自分の声には比較的太さや暗さがあると説明しています。
そして、その違いを踏まえて、感情を表すことに力を入れようと考えました。
これは音域を測った比較ではなく、本人が見つけた声の生かし方です。
高い音を競うよりも、その人の声で歌われることで気持ちがどう伝わるかを重視したのです。

その方向は、バラードを歌う時の本人の言葉ともつながります。
2018年のソロ公演では、一つ一つの言葉に気持ちを込めると伝えてから、ドラマの歌やカバー曲を披露しました。
得意な声を大きく響かせることと、歌詞を一語ずつ相手へ届けることは、別の仕事です。
ホンギの強い声を考える時には、その声が何を伝えるために使われているかまで見る必要があります。

「モノローグ」では、伴奏が力加減を変えた

「モノローグ」は、当初バンドのために考えられた曲でした。
ソロ曲にする際、シンセサイザーを中心に据えて音の構成を変えています。
ホンギが編曲でこだわったのは、アナログを思わせるシンセの音でした。
自分の歌を包む音色から、ソロの世界を作っていたのです。

歌い方は、力を少し込めながらも、比較的フラットにしたと本人は説明しています。
生のドラムと打ち込みでは、感情の入り方も違うというホンギ。
周りで鳴る音を受けて、声の力加減を調整していたのです。
「抑える」といっても、悲しい歌から力を抜き切るという意味ではありません。

バンドの公演にも、そのような切り替えがあります。
2015年5月の代々木公演では、「PRAY」の力を込めた歌唱に対し、「Raining」や「CRYING IN THE RAIN」はピアノを伴奏に優しく歌ったと公演評に記されています。
同じ日の同じ声でも、曲の配置と伴奏が変われば、前へ出すものが変わる。
激しい曲の存在が、その後の柔らかな歌を際立たせる構成でもありました。

穏やかな曲の高音と、裏声を使う選択

曲調が穏やかだから、歌うのも楽だとは限りません。
Takaとの共同制作から生まれた「Primavera」について、ホンギは穏やかな印象の一方、高い音があり、歌うには難しい曲だと話しています。
派手に勢いを出す曲とは異なる雰囲気の中で、難しい旋律を担う必要があるのです。

旋律の難しさを抱えながら、穏やかで広がりのある表情を保つ。
本人の説明からは、高い音に届かせるだけでは終わらない課題が見えてきます。

別の選択が見えるのは「Unthinkable」です。
ホンギはこの曲で、それまであまり使わなかったファルセットに挑んだと話しています。
ファルセットは、一般に裏声と呼ばれる声の出し方です。
本人の強い声の印象だけで聴こうとすると見落としやすい、響きを切り替える選択がここにあります。

「高音が得意」という一言から踏み込むと、曲ごとに考えられた声の選択が見えてきます。

2018年「Cheers」の取材に登場したイ・ホンギ
2018年「Cheers」の取材に登場したイ・ホンギ。
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電子音や軽い伴奏も、ホンギの声を生かす

声を生かす場所は、重いバンドサウンドに限られません。
「Hold the moon」でFTISLANDがフューチャーベースに取り組んだ時、ジェジンはホンギの声に合う方向だと評価しました。
普段と異なる音楽を取り入れることが、その人らしい声を薄めるとは限らない。
メンバーの反応は、新しい伴奏の中にも声の居場所があることを示しています。

ソロの「Found me」も、伴奏との関係から選ばれた曲です。
ホンギは、気楽に聴ける音楽に自分のボーカルを乗せたかったと説明しています。
激しさを伴う声という印象を持つ人ほど、こうした選曲を合わせて見ると、歌の役割を捉えやすくなります。
音楽全体を強く押し出す場面もあれば、聴き手がくつろげる曲の一部として声を置く場面もあるのです。

言葉の速さが変わると、歌い方の課題も変わる

ホンギの歌を、長く伸ばす高音だけで捉えると、言葉を運ぶ作業が見えなくなります。
「NEVERLAND」の英語版を録音した時、本人が難しさとして挙げたのは、発音と言葉のテンポでした。
英語を話せる人に教わりながら取り組んだといいます。
同じ曲でも言語を変えると、旋律に収める言葉の速さが別の課題になるのです。

ラッパーとの共演からも、言葉の運び方を考えていました。
『Cheers』では「COOKIES」などでラップを取り入れ、ホンギは、歌の旋律には収められる言葉の量に限りがある一方、ラップでは多くのことを伝えられる点がうらやましかったと話しています。
メロディを担う自分の声と、密度の高い言葉を担う相手の声。
異なる役割を一曲の中で組み合わせる試みでした。

日本語の自作曲では、翻訳を担当する作詞家と日本で直接会って作業する方法を取っていました。
別の言語の歌詞を渡されて歌うだけでなく、言葉を形にする段階から対話する。
声に乗せる内容へ自分で関わることが、日本語で感情を伝える歌の背景にもあります。

2022年の日本武道館公演では、重いリズムを持つ「Shadows」でも、言葉を丁寧に届けるような歌唱が記録されています。
激しい伴奏なら言葉も一様に荒く扱う、という関係ではありません。
音の勢いを保ちながら、聴き手に届かせたい文を運ぶ。
声の強さと、言葉の扱いをそれぞれ調整する場面として見ることができます。

2026年9月27日の東京公演で歌うイ・ホンギ
2026年9月27日の東京公演で歌うイ・ホンギ。
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自分が歌い切ることと、観客へ声を渡すこと

2026年の東京公演では、「LOVE LOVE LOVE」を落ち着いた編成で届け、ホンギは観客にも、ツアーが終わる寂しさを込めて歌うよう促しました。
「Lemonade」では、演奏に入る前に自らアカペラで歌って、客席へ歌い方を伝えています。
自分の声だけで曲を完成させるのでなく、観客の声にも具体的な役割を渡していたのです。

強く前へ出る「PRAY」、伴奏に合わせて抑える「モノローグ」、裏声を選ぶ「Unthinkable」。
その違いをつなぐのは、太い声をどこまで出せるかではなく、この曲ではどのように使うかという判断です。
ホンギの歌い方は、よく知られた声の力強さを入口にすると、その力を調整する細かな選択まで見えてきます。

そうした選択が年月とともに広がっていく過程は、イ・ホンギ(FTISLAND)の歌唱変遷でたどっています。

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