末澤誠也さんの高音は、生まれつき何でも軽々と出せた人の歌ではありません。
むしろAぇ! groupの代表曲「PRIDE」は、最初に渡された時、本人が「このキーは楽には出ない」と感じた曲でした。
そこから約半年間、歌のレッスンを続けて本番へ間に合わせます。
現在は、作り手が「ここは末澤さんが歌うだろう」と想像してメロディーを置くほど、あの高音がグループの設計に組み込まれました。
末澤さんの歌のおもしろさは、声の高さそのものより、出なかった音を逃げずに引き受けた過程にあります。
「PRIDE」は得意な声を見せる曲ではなく、逃げ道のない曲だった
Aぇ! groupは、それまで一人だけを主役に置く歌い方をほとんどしていませんでした。
全員が歌い、演奏し、笑いも取るグループだからこそ、末澤さん一人に大半の主旋律を預ける「PRIDE」は大きな賭けでした。
しかも最高部は、最初から気持ちよく鳴ったわけではありません。
本人は曲を受け取った時、楽に出せる高さではなかったことを明かしています。
そこで夏の終わり頃から年末まで約半年、ボイストレーニングを重ねました。
この事実を知ると、「PRIDE」の高音は天性の証明ではなくなります。
グループの看板曲を一人で背負う怖さと、出ないままでは終われない責任が、その声の背景に見えてきます。
きれいに正解へ着地することより、ぎりぎりまで前へ出る熱量が曲の説得力になっているのです。
高音の正体を「地声かミックスか」だけで決めると魅力を見失う
末澤さんの高音については、地声が強い、ミックスボイスである、裏声寄りの成分も使うなど、さまざまな説明があります。
ただし、どれか一つに決めれば歌の秘密が分かるわけではありません。
同じ高い音でも、長く伸ばす時、短く叫ぶ時、次のメンバーへフレーズを渡す時では必要な声が違います。
「PRIDE」のように全身の勢いを前へ出す歌と、デビュー曲「《A》BEGINNING」で一瞬だけ緊張を跳ね上げる歌でも、高音の役割は同じではありません。
分かりやすく言えば、末澤さんの高音は一種類の強いボールではなく、曲の温度を変えるスイッチです。
声区の名前を当てることより、どの瞬間に声を太くし、どこで鋭く抜き、どこで次の声へ譲るかを見る方が、歌い方の輪郭をつかめます。

叫んでいるように聞こえても、曲の全部を叫んではいない
末澤さんは声量の大きさでも知られています。
ステージ上の発言や笑い声までよく通るため、そのまま歌も力で押しているように見えやすい人です。
しかし、強い高音が成立するのは、曲の最初から最後まで最大音量ではないからです。
低い位置では言葉を近くに置き、仲間と重なる部分では輪郭をそろえ、頂点だけ一気に開放する。
前の場面に余白があるため、最後の一声が大きく感じられます。
「《A》BEGINNING」でも、末澤さんの声はずっと主役で居座るのではなく、曲の景色を切り替える場面で前へ飛び出します。
高音を音程の頂上ではなく、演奏全体の点火装置として使っているのです。
この点は、柔らかな話し声から多彩な声色へ切り替える大橋和也さんの歌い方と比べると違いが見えます。
大橋さんが一曲の中で色を塗り分けるタイプなら、末澤さんは決定的な瞬間に太い線を引くタイプです。
作り手が「末澤誠也が歌う場所」を先に想像するようになった
「PRIDE」以前は、末澤さんが曲へ自分を合わせる側でした。
近年はその関係が逆転しています。
制作側がメロディーを作る段階で、どの部分を末澤さんが歌うかまで思い浮かべるようになりました。
これは単に高い音を担当するという意味ではありません。
曲の途中で空気を変える強さ、バンドの音に埋もれない輪郭、観客が一緒に声を上げたくなる熱を、最初から楽曲の部品として期待されているということです。
得意だから割り当てられたのではなく、割り当てられた難題を何度も形にした結果、次の曲がその声を前提に作られる。
この順番こそ、末澤さんの歌唱力をもっともよく表しています。

派手なシャウトの奥にあるのは、最年長としての責任感
末澤さんの歌は、本人だけを目立たせるための絶叫ではありません。
一人に歌が集中する「PRIDE」を引き受けたことで、他のメンバーは演奏、コーラス、パフォーマンスにそれぞれの強みを出せるようになりました。
主役ボーカルになることは、仲間より前へ出ることと同時に、曲が崩れた時の責任を自分が受けることでもあります。
仕事が少なかった時期を知り、グループの演出や衣装にも関わってきた最年長だからこそ、その役を華やかさだけで受け取らなかったのでしょう。
歌声の変化を年代順に追うと、この責任がいつ生まれたかがよりはっきりします。
末澤誠也さんの歌唱変遷では、活動を辞めかけた時期から現在までを別の角度で整理しています。
真似するなら喉の苦しさではなく、強弱の設計を見る
「PRIDE」を歌う末澤さんは、全身を使って限界へ向かうように見えます。
本人もこの曲は力を大きく使う歌だと話しており、表面だけをまねて最初から大声を出すのはおすすめできません。
参考にしやすいのは、苦しそうな顔や首の力ではなく、高音が来る前の引き算です。
どこまで声を抑え、どの言葉で前へ出て、頂点の後にどう戻るか。
その差があるから、最後の高音が「ただ高い音」ではなく物語の結論になります。
これは、高音の張り上げを直す考え方にもつながります。
痛みや強いかすれが出る押し上げは、末澤さんの熱量とは別物です。
まとめ
末澤誠也さんの高音は、最初から余裕で持っていた必殺技ではありません。
一人の主旋律に賭ける「PRIDE」を任され、出しにくかった最高部を約半年かけて本番の声へ変えたことから始まりました。
その後、高音は曲の頂上を飾るだけでなく、Aぇ! groupの演奏を点火する役割を持つようになります。
現在は、作り手が末澤さんの歌う場所を想定して曲を書くほど、声そのものがグループの設計図に入りました。
「地声かミックスか」という分類だけでは、この変化は見えません。
出なかった音を引き受け、仲間の音が生きる場所で鳴らし続けたこと。
それが、末澤誠也さんの高音が強く聞こえる一番の理由です。
こちらの記事もおすすめ






コメント